剱岳 東大谷/中尾根(文蔵尾根)~右尾根下降 2015/5/1-3

アルパイン(雪山)

HTです。
GWは剱岳。伝説の文蔵尾根。良いルートでした。
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【期 日】 2015年5月1日(金)~3日(日)

【メンバー】OM彦(L)、M中、KM美、HT広(記録)

【行動経過(天候・タイム)】
・5/1(快晴)
1040馬場島-1140スナクボ岩屋-1300毛勝谷出合-1410東大谷出合-1515中俣1735mC1
・5/2(快晴)
0400C1-0525中尾根2160m-0900チョンラピーク基部-1550シシ頭-1645剱岳山頂-1705南壁AⅢ稜の肩2940mC2
・5/3(快晴)
0800C2-0915前剱-1120剱御前北方2660m(東大谷右尾根)-1330東大谷出合-1500馬場島

【ルート概要】
ルート概要

東大谷中尾根写真概要 (1)

今回は中俣沢に少し入ったルンゼを使って2150尾根上に出た


・行程図

剱岳東大谷ルート概要

劔に向かって中尾根。御前の手前から下降するのが右尾根



【記録】

4/30(木)
当方の仕事のおかげで通常の金曜日と同じ夜中に東京を出る。21:30に相模大野駅でO田さんを拾って22:30坂戸駅でM中さん、K池さんと合流。寝酒を買い込んで関越から上信越道を下り、妙高SAで前泊。入山前夜の微かな興奮に山話と酒が進む。

5/1(水)晴れ
東大谷出合か、中俣を遡行して取り付き付近で張る作戦としたのでのんびりSAを出発。立山ICを降りてコンビニで買出しと朝食を済ませ、夏のような陽光の中を馬場島へ。伊折を過ぎ、剣岳青年の家の廃屋が無いから取り壊されたのだなどと話をしているとその先のゲートが締まっている。車が数台待機している。哀れここから馬場島まで1時間半歩くのかと絶望していると内側から管理者が現れてゲートを開けてくれた。馬場島では大発生したブヨに襲われながら準備を整える。警備隊へ計画書を提出。

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立山川沿いの林道はほどなく左岸に渡り雪をかぶる。要所でデブリに足を取られながら、灼熱の谷を粛々と遡行。

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融雪の速さが異常との情報を得ていたので、渡渉に備えてアクステを用意していたが結局スノーブリッジをつなげることができた。スナクボ岩屋付近はゴルジュの様相だが、池ノ谷ゴルジュに比べると広く威圧感はない。ほどなく沢が開けると毛勝谷を合わせ、日本離れした広い東大谷出合となる。

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毛勝谷出合 奥に見えるのは東大谷右尾根と基部にひろがる東大谷の出合


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東大谷に分け入り、左俣との二俣に落ち込む尾根が文蔵尾根(東大谷中尾根)。

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東大谷へ

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二俣(中俣左俣) 尾根突は中尾根(文蔵尾根)


尾根末端に岩から浸み出した良い水場があるが、さらに中俣側を詰めると中俣と右俣の二俣が遠くに現れる。その手前の小広い平坦地で幕。

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中俣1735mC1

空荷で谷を詰めて翌日の取り付き確認した後、尾根末端の水を汲み、初日だけ豪華なすき焼きで疲れを癒す。

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5/2(金)晴れ
2時過ぎに起床し、4時前出発。傾斜の強くなった東大谷中俣を詰め、右俣出合からやや上流に落ちるルンゼが文蔵尾根上までつながっていそうなのでこれを詰める。

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雪壁の急登から、稜線に出るとブッシュ。圧倒的に雪が少ない。

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そこから稜上は重荷の藪こぎ急登に喘ぐ。ところどころ雪田が現れるがすぐに藪に吸い込まれ激しく消耗し、やっとの思いでチョンラピーク手前の雪田にたどり着く。

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富高ルンゼとザッテル


ここが富高ルンゼ最上部。雪面通しに尾根が右に折れ、チョンラピークの岩壁に吸い込まれる。

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核心の基部。ザッテルより。背景は三本槍尾根。

核心のチョンラピークは残置ピトンのある正面のラインは思いのほか傾斜が強く、右側の草付きからバンドに這い上がる。ワンポイント垂壁の乗越しが悪く、カム2番と草付きにバイルを打ち込みアイゼンを岩に掛けて騙す。

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逆光だがHT奮闘中

バンド上も、見た目より体勢もホールドも悪く、結局50mいっぱいザイルを伸ばすまで気は抜けない。ピーク直下でコール。
ピークを乗り越えると雪田が現れ、さらにⅡ級程度の岩稜をノーザイル進むと尾根は早月尾根の側壁に吸い込まれる。荒れたボロ壁が立ちふさがっている。

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ザレて非常に悪い。M中→O田へリード交代

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慎重にルートファインディングしながら岩の弱点を見出し、2ピッチザイルを伸ばすと切り立ったリッジが聳える。

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せっかくアクステがあるのだからと履き替えてリードするが、うまくラインを見出せば容易で楽々とリッジはクリアできる。最上部は雪田混じりを獅子頭に向かってノーザイルで進み、最後のピークは左側をトラバースすると早月尾根に飛び出す。天気をチェックし、明日も崩れない事を確認して剣岳ピークへ。

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雪が少なく、祠は半分出ていた。AⅢ稜落ち口のプラトーは平らな上に風も避けられる剣本峰直下の極上のテンバで、ここに幕を張り、で完登の余韻に浸る。

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AⅢ稜(2940m)の肩でビバーク



5/3(土)晴れ
早月尾根分岐で別山尾根を確認すると雪が少なく容易にこなせそうなので、まずはカニの横ばいを下る。平蔵の頭から前剣までほとんど夏道。前剣では東尾根を確認するが中途半端な雪が残る劣悪な様相で翌4日の悪天予想もあり割愛。前剣から先は夏道から離れ雪面を行く。一服剣を越えてクロユリのコルから剣御前の稜線へ這い上がる。

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まったりと立山川に向けて尾根を伸ばす東大谷右尾根

ひとつ目のピークから伸びるのが東大谷右尾根で、下降口を偵察していると下から2人組パーティーがやってきた。雪崩れそうなルンゼがありザイルを出した方が良い、一か所ギャップがあり悪いとアドバイスを受ける。傾斜はかなり急でバックステップも多用するが、トレースを利用できたおかげで結局ノーザイルで東大谷出合まで一気に下れた。

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急傾斜の上部ルンゼ

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ナイフリッジ風

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東大谷に向けて爽快な下降

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東大谷出合

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スナクボ岩屋手前のゴルジュ

今年のコンディションであれば圧倒的に早月尾根よりも早い。ただし、雪稜だから雪の付き方によって難易度は変わるだろう。
東大谷からはアプローチと同じラインをガシガシと下る。ふきのとうとコゴミを収穫して馬場島に帰還。アルプスの湯で3日間の汗を流し、魚津市役所駐車場にテント泊しつつ魚津の鮮魚で祝杯を上げた。
(記録 HT広)

【感想】
◆メジャールートと違いルート取りに確信が持てない。最後まで気が抜けないルートを、それでもなんとかトップアウトするという緊張感を4人で共有して登った。2泊目はみな疲れぎみだったものの、無事予定のルートを下山できた。数十年間このルートに思いを寄せてきたというM中さん。また長年のザイルパートナー同士であるHTさん・OMさんの息の合ったやりとりを間近で見ることができた。とても充実した山行だった。(KM美)

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大日を背にして

◆はじめて足を踏み入れた東大谷。噂には聞いていたがそこは別天地が広がっていた。のどを潜り抜けて広がる光景には声もでない。気になる方はぜひこの目で確かめたください。行って損はない場所、それが東大谷。それにしても毎晩毎晩、長尻のお酒にはしごかれました。(OM彦)

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サルノコシカケ

◆小学生の頃、当時ヤマケイの「夏山JOY」にも掲載のない登山として1.奥穂南稜、2.湯俣からの北鎌尾根、3.剱岳北方稜線、4.剱岳東大谷(雪崩の巣で絶対入ってはいけないなどの記述…)の4つを芳野満彦やら上田哲農の本を読んで知ることになる。小学6年生の時に早月尾根に行った際に小窓尾根やら右の崖を覗きながら、これが北方稜線、東大谷というやつか…こんなすごい崖を登る人がいるのか!怖い!と小学生なりに股間が萎縮した。
今回の東大谷は私にとっての4大登山の最後のひとつだ。でも、なぜ登りたいのだろう。わからない。ほかにもいろいろあるのに。登攀とも違うような気がする。当時感じた気持ちを確かめようとする思い出巡りのようなものか。それだけではないな。子供時代の山登りから、ぶなの会につながり、練習をして、そして巡りあった、気のおけない仲間を誘って念願の東大谷に入り、今の登山をすることが私にとって、とても大切なことなんだろう。充実しました。メンバーのみならず会員の皆さんにも感謝します。(M中)

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東大谷右尾根から見上げる剱岳


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