メンバー:M藤L、H田

4月初めに出合いから狙いのルートを目指すも、ズタズタの雪渓に阻まれ敗退。
GWに再び滝谷を目指すも、事前の好天予報に反して稜線は40センチ近くの降雪。沢筋を下降出来る状況になく、ドーム中央稜に転進。稜線からガチガチに氷化した雪壁を決死のクライムダウンで向かったドームの岸壁は「エビの尻尾」どころか「タラバガニの足」と表現したくなる猛烈な氷雪が張り付く。烈風の中で30分も悩んだ末の敗退決定。我々は「覚悟」を決められなかった。
ドームの借りはドームで返すしかない。そう考え、ドーム最難関であろうニューウェーブでも登って釣り銭くらい返してやろうと話はまとまった。
このルート、大混雑のドーム中央稜からは指呼の間であるにも拘わらず、登攀記録が少ない。難しいか悪いかどちらかだろう。他者の記録ではトポグレード(10a)より大分難しいらしく、オンサイトイレブンはほしいとコメントあった。
これでは釣り銭どころか泥沼の借金生活になりかねない。。以降、怠惰な生活を改め、ジム通いと禁酒&ダイエットに励みフリー完登をめざす。

8/10
アップとしてクラック尾根を登る。このルート、ロケーション良く縦走路からまる見えで派手に目立つには良いが、脆いだけで個人的にはクライミング的に魅力を感じなかった。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

8/11
北穂のテン場からドームへ向かう。
飛騨側から吹き上げる風が強く寒い。
風下に回り込み、気温が上がるのを待つ。緊張感が張りつめる。暫し待つも風の収まる気配はなく、ドーム北壁へ向かう。北西カンテを回り込むと西壁だ。聳え立つ西壁Aフェースがプレッシーをかけてくる。トポにあるBフェースへの懸垂支点は見当たらない。やむなく北壁よりガレたルンゼをC沢左俣方向へ降る。懸垂1回を交え、タイミングを見計らいBフェースへトラバースし取り付きへ。取付バンドは狭く居心地が悪い。足下にはCフェース、ダイヤモンドフェース越しにC沢が深く切れ込み高度感が凄い。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

黙々とアップを繰り返す隣で、H田さんは無言でうつ向く。顔色悪くどす黒い。
見上げればBフェース。
右クラックに雲表、左クラックに東海山岳会ルート。雲表ルートの下部は群発地震以降に崩落しており、青白い岩肌が生々しい。
目指すニューウェーブはフェース中央を直上し、上部ハングを越える豪快なラインだ。壁に向かって吠える。
M藤の「覚悟」が決まった。
緊張感のオーラに包まれたH田さんの顔は紫色のチアノーゼ。ここはドームではなくマカルー西壁なのか。。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

1ピッチ(5.10a) M藤
核心ピッチ。フェイス上部のハングまで30m。その先は見えない。
スタートから、いきなりバランシーで侮れない。これが続くのか?と思うと手汗びっしょり。結構離れたカチを繋いでいくことになり、ムーブの組み立てを強いられる。
右手から緩やかに弧を描くようにハング下へ。ハング手前が手厳しく、手詰まるかもしれないと思いながらのムーブは冷や汗ものだ。
下からは手掛かり豊富に見えたハングはホールド乏しくムーブを探るもリップへスタで繋げない。
壁が立っているため30m伸ばしたダブルロープがやたらに重い。
下からはガバに見える右側のリップへ「ガバじゃなきゃ墜ちるぞ」と覚悟のデット。一瞬浅くて焦ったが、すかさず差し直してガバへ。
ハング上も期待したほど傾斜がおちない。バンド下でピッチを切り、フォローを迎え入れる。
H田さんの顔からチアノーゼは消え去り瞳に力が戻っている。
H田の「覚悟」も決まった。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

2ピッチ(Ⅱ) H田
15mでAフェース基部まで。

3ピッチ(5.9) H田
歯科医大ルートを右上し、フェース中央から脆い凹角を直上する。
下部はカムがきめられるため、ボルトは随分と上にあり見落しがちだ。上部へ行くに従い脆くスタンス乏しく難しい。
渾身のリードに、滝谷中に響き渡る大声で「ガンバ!」を連呼する。
最後は凹角から離れハング下の確保支点へトラバース。何とかしてフリーで抜けようという気迫溢れたナイスクライミングにビレイヤーも手応え十分だ。
この高度感ありすぎのトラバースはホールドがプラインドになり難しい。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

4ピッチ(5.10a) M藤
出だしのクラックにアンダーでカムを決めスタート。左向きのフレークを辿り、小ハングを右に乗り越してスラブへ。
そのまま右向きのクラックというか凹角へ。岩も安定しており「このルートは素晴らしい」と呟きながら登る。

5ピッチ(Ⅲ) H田
トポではここで終了だが、左のルンゼ をドームの頭まで伸ばして終了。
西に傾いた太陽が陰惨な滝谷を柔らかく包む。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

(M藤コメント)
ドーム西壁の中央をついたこのラインは素晴らしいの一言。滝谷の頂点のドームのど真ん中の登りたいところを巧みに繋げたライン。
ありがちな、ワンポイトⅣ級+A1をフリー化したルートと本質的に異なる。ものが違う。
やはりというか、当たり前のようにグレードより辛い。初登から27年もの間、滝谷の風雪に叩かれた気合いの入ったアンカーはサビサビで浮いているように見えるものもある。そんなものは承知のうえで「覚悟」を決める。男前のルートだ。

(H田コメント)
【クラック尾根】
何度も滝谷にアタックしてきましたが実は今回のクラック尾根が滝谷において初の完登!
ただ、アプローチのB沢下降がガレガレ、クラック尾根に取り付くもガレガレ。特に旧メガネのコルは崩壊寸前。
唯一、核心のジャンケンクラックは岩が固く快適。
まぁこのガレガレも含めいつもの滝谷って感じで、楽しめました。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA

【ニューウェーブ】
去年の夏、今年の冬、滝谷出合から遥か遠くに高々とドーム西壁が白く輝いていた。
そして今年の夏、リベンジ&倍返しっだって事でルートをニューウェーブと決めジム練強化・灼熱の湯河幕でフリー特訓、体重を絞り万全の準備で臨んだ。
滝谷はいつものように圧倒的な威圧感で我々を迎い入れ気持ちが完全ネガティブ。
ただ当日は気象条件、体調など全ての条件が揃っている。言い訳がきかない。そして取付く。
自分にとってフォローだとしても、かなりチャレンジングなグレード。確実の今のムーブに集中する。
大キレットから槍までの絶景をバックにダイナミックなムーブで最高に気持ちがいい!
無事にドームの頭にトップアウト。すべてのプレッシャーから開放され爽快。
遥か下には滝谷出合。あそこから仰ぎ見ていた白く輝いていたドーム西壁のしかもど真ん中のフリーラインを登ったのだという最高の達成感。
忘れられない最高のクライミングとなりました。
 
 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA