錫杖周回ルート(前衛→鳥帽子→錫杖) 2016/10/14−16

アルパイン(夏)

メンバー:N村L、T内

今年6月に見張り塔ルートに行った際、途中で右上に見える岩峰が目に留まり、「あ、あそこに行ってみたい」という思いが頭から離れずにいた。そこは烏帽子岩。。。
調べてみると、登山大系や日本の岩場(旧版)にはルート紹介もされている。
そうなってくると、ただ単にその烏帽子岩だけを登る事を目的にするのではなく、前衛壁0烏帽子岩0錫杖本峰の一連の岩峰をクライミングしながら馬蹄形に周回するラインを引けると山をクライミングしながら周遊できるスタイルが描けて愉しいのではないかと思い、計画をしてみました。

計画に当たっては、気温、エスケープ、登攀ルート、下降ルート、日射時間、日程などのバランスを考えて9月下旬を想定していましたが、連日の週末の雨で思いは届かず。
ビバークを考えると今週末がギリギリか、アウトか。。。

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元々は、安全策で1泊2日で途中ビバークを検討しましたが、現地に行くと、身体が慣れていないこともあり夜が想像以上に寒い。。。
前日に入ったのが遅いこともあり、初日は偵察とコンディション確認に留める事にする。。。

日射がある時間はポカポカと暖かいが、影に入った瞬間からやはり晩秋を感じさせ背中がゾクゾクする。
当初予定していた左方カンテ・ジェードルルートは上手く見つけられず、懸垂して調べるも目の前にあるのは中間支点のないオフィズスサイズが20m位続くラインのみ。

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陽の落ちた錫杖は2000m以下とはいえやはり寒いこと、先ほど見たジェードルらしきルートに対して持っている装備がプアすぎることを鑑み、前衛壁は左方カンテにして、1Dayでトライする方針に決定。

左方カンテは特記事項なし。後続のガイドパーティーを退け、なかなかのハイペースで登ることができた。
烏帽子岩までは前衛壁の頂上にある踏み跡を追っていけば、迷うことなく到着。
支点はきれい目でたくさんある。ただし1p目は、ホールドは無数にありますが、どれも不安定でぐらつくので、猫手・猫足かつ上から抑えるだけの丁寧な動作を強いられる。アルパインっぽい。。。

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懸垂ポイントについては、今回は西肩での懸垂を行いましたが、下の稜線沿いに向かって5mほど降りた所(気を付けて!)に松の木の支点があるのでそれを支点に2pで下降。そこから見張り塔まではトラバースで移動する。

14:00までに見張り塔上部の取りつきに到着できなければ、エスケープしようと思っていましたが、それよりも早く到着することができそうだったので、「これはいける!」と移動中、確信にかわった瞬間!

見張り塔上部取りつき到着後、不要な水はすべて捨てて、食糧はお腹の中にいれて、軽量化をはかる。

このルート自体は日本の岩場(下)では5p表記になっているが、実際は3p目30m(II、スラブ)、4p目60m(II、草付き)、5p目60m(III草つき)、6p目15m(5.7クラック)という感じのほうが適切な気がします。

錫杖岳頂上に着いたときは、夕暮れの穂高を見ながら、炭酸ソーダで乾杯!
至福のひとときを迎えることができた!!

この周回ルート自体は、個々の登攀単体で見た場合の困難さはそれほどないかもしれませんが、自分およびパーティーとしてのアルパインの総合力を試すことができる、本当にいいルートだと感じました。
オススメです!!

次は錫杖のより縦のラインを目指していきたいです。

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【感想/竹内】
コージさんから初めてこの計画を聞いたのは、夏合宿で錫杖に行ったとき。「…コージさんも物好きだなぁ」というのが最初の感想でした。
でも、夏合宿で連日錫杖の各ルートを登り、テン場から錫杖を眺めているうちに、「この見えているところ一帯を、衣・食・住を背負って周回する、って、いま自分にできる『アルパイン』なのでは」
と思うようになっていました。

コージさんとは、今年の新人教育も含めて、週に2回は顔を合わせていると思いますが、案外と一緒にロープを結んだことはありませんでした。今回、思う存分に登りまくったこと、とても気持ちが良かったです。

錫杖には、ハーケン・ナッツ・カムを決めながら登るということを教えてもらいました。他の新人たちも、それぞれ夏合宿では多くを教えてもらったと思います。下山時には、カメラを手にした縦走のおじさん一行とも挨拶を交わしました。クライマーも山登ラーも受け入れてくれる錫杖。そこを一周できたことは、今年の錫杖のシメにふさわしいと、我ながらご満悦です♪

■タイムスタンプ
前衛壁
・05:45 岩舎出発
・06:10 左方カンテスタート (9p)
・08:25 左方カンテ終了点着

烏帽子岩
・09:10 烏帽子岩基部着
・09:40 烏帽子岩東肩スタート (5p)
・11:30 烏帽子岩山頂着
・12:20 烏帽子岩西肩懸垂開始 (2p)
・12:40 烏帽子岩西肩懸垂終了

錫杖本峰
・13:10 見張り塔上部基部(大洞穴)着
・13:30 見張り塔上部スタート (6p) ※トポは5p記載だが足りない
・16:20 錫杖岳山頂着
・16:50 錫杖南峰着
・18:35 岩舎着

■使用装備
・左方カンテ:S/D兼用ロープ、カム(Camelot#0.3-#3 1Set)
・烏帽子岩:ダブルロープ(S/D兼用、D)
・見張り塔(上部):ダブルロープ(S/D兼用、D)、カム(Camelot#0.3-#3 1Set)

■携行品
・ツェルト、メタ、シェラカップ、エマージェンシーシート、ダウン(上)、食糧、水(2l)、地図、コンパス、笛、捨て縄、ロールペーパー、ヘッドランプ、予備電池

■想定ビバークポイント
・前衛フェース頂上、烏帽子岩西肩からトラバースしたテラス、見張り塔上部取りつきの大洞穴

■エスケープルート
・前衛フェース:北沢側への懸垂、その他:見張り塔取りつき直下の沢(1,2箇所ロープ使用したほうが良い所あり)

※登攀はどれもシングルで可。懸垂時のロープは60mの方がスムーズだと思います。
※カムは2Setあると安心だと思います。ナッツで代用も可。
※どのルートもハンマー/ハーケンは使ってません。

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