一ノ倉沢二の沢右壁~ドーム 2016/10/22-23

アルパイン(夏)

メンバー:Y川L、S藤

1週間前、天気に恵まれ、本谷から3ルンゼを登った。今週末は天気が悪く、チャンスはないと思っていたところ、予報が好転してこの山行が実現した。この二の沢右壁は私の学生の頃は、それなりに登られていたように思う。一の倉沢の出合から本谷を経て二の沢本谷を登り、右俣から右壁を登って滝沢リッジに出てドームまで行く。さらに、この壁を登ってドーム稜を経て国境稜線に抜けるラインはなかなか美しいラインだと思っていた。しかし、長い困難なルートと言うこともあって、そのままになっていた。
数年前からフリークライミングを練習して、クライミングに少し自信がついたこともあり、この登り残したこのルートに行きたくなっていた。メンバーを探していたところへ 、S藤さんが現われた。
今谷川を訪れるクライマーは減ってしまった。草付きが多く、濡れていてすっきりした岩が少ない。落石もあり、快適とは言い難いからだと思う。それでも、何度行っても一の倉沢の出合から眺める展望には圧倒され、魅力を感じる山である。


10/22 晴れ
駐車場    4:00
一ノ倉沢出合 5:00
本谷沿い遡行
二の沢出合  6:30~6:50

ここまでは、先週来ていることもあってあっけなく来る。我々と一緒に来た青年と別れ二の沢に入る。三俣下大滝の下でザイルを出す。三俣下大滝は右側のカンテ状の岩を登り、そのまま草付きを目指して脆いフェースを登って巻くルートで行くことが多い。しかし、S藤さんは大滝の右側の側壁に魅せられ、取り付いてしまった。三俣下大滝の直登の記録はあまり聞いたことがないから、登攀できれば素晴しい。しかし、この先が長いので、ここで時間を使いたくなかった。そんな私の心配をよそにS藤さんは、滝の落ち口の上に這い上がった。この滝をフリーで越えた。ハーケンは抜いてしまったが、この大滝がフリーで登れることが、今後広まると良い。

三俣下大滝のすぐ上で右俣が合流している。右俣は昔来ているので少し様子が分かっていた。100mほどルンゼを登った。ところが、それから先私は思い違いをしていた。 私の二の沢右壁の位置関係は登山体系のP30によっていた。右俣に入って、正面に右壁があるものと思っていた。その感じで登って行ったら、滝沢リッジのオムスビ岩にあがるルンゼに行ってしまうので、これはおかしいとなり、仕切り直した。右壁は滝沢リッジと並行して行く感じで、斜め左に伸びている岩溝状のスラブを登って行く。
帯状ハングまで4ピッチ程ルンゼ状のスラブを登る。Ⅲ~Ⅳとなっているが、難しい。濡れているし、岩は剥離する。ルーファイは難しい上に、残置がないので支点は自分たちで作らないといけない。1ピッチ登るのに1時間がかかる始末だ。
帯状ハングはA1またはⅥ級となっている。取り付きからハングの上にボルトが見える。S藤さんが空身で取り付き、みごとフリーで越えていった。ボルトが連打されルートがハッキリしているので皮肉にも最も気楽に登れたピッチだった。

帯状ハングの上のスラブ(たぶん右壁の核心)は、トポには極力左の草付き寄りのラインを登ることと書いてあった。でも左の草付きがどこなのかハッキリ分からない。残置はないし、ルートが読めない。傾斜も強く行き詰まったら、身体極まる。それで、まっすぐに上に伸びているスラブ(3ピッチ)にとりあえずルートを取った。2ピッチ目くらいから左に行くのかもしれない?しかし、結局直上する感じになってしまった。
スラブは滝沢リッジに突き上げ消えている。スラブのどんづまりは、古い残置があったから、登っているのだとは思うが濡れた崖登りとなり、恐いところだった。滝沢リッジの上に出て、ヤレヤレだった。もう夕闇が迫っていた。こんなに時間がかかっ て苦労するとは思っていなかった。リッジに出て3ピッチほど登ってドーム下に着いた。 着くと同時にあたりは夕闇に包まれた。

三俣下    7:30
三俣大滝登攀 
三俣上    9:00
二の沢右壁取り付き 9:30右壁
滝沢リッジ  16:50
ドーム下   17:30

10/23 小雨
朝6時過ぎに目を覚ます。外はガスって視界がない。昨日のGPVの予報では昼くらいから雨になる予報だった。
横須賀ルートに取り付く。1ピッチ目は凹角内のクラック沿いに行くルート(Ⅴ-)だ。岩は黒く、濡れて滑りやすいうえに、黒いヘドロのようなものが乗って気持ち悪い。手は冷たくなって感覚がなくなり、フリ-で行ける感じがしない。何年も前の白く変色した残置スリングを掴んでしまった。1時間程このピッチでかかり、まったく、無様なクライミングだった。このころから雨が降り始めた。2ピッチ目でドームの上に出た。ドーム稜を3ピッチで越えところで、アンザイレンを解いた。途中の岩は雨でツルツル滑り、恐ろしかった。靴を履き替えて草付きを200mほど登ると、国境稜線に飛び出した。
冷たい雨が降り、視界がない天気のなかでも、この時期谷川岳に登りに来る登山者は結構いた。その登山者に紛れ込んで、天神尾根を下った。

ドーム横須賀ルート取り付き  7:40
国境稜線          11:00
プラザ           13:00

*ハーケンは薄刃を中心に多めに用意すること
*カムは1番までほしい。ドームで2番を使う。
*アブミ不要
*帯状ハングを越えると、滝沢リッジにエスケープできる。

<S藤コメント>
一ノ倉沢には特別な想いがある。これまで、ここでは多くの事を教わってきた。
いつかは行きたいと思っていたビックルート二ノ沢右壁の計画が挙がった時は喜びに心が震えた。
それと同時に不安も感じた。
結果として、その想像を遥かに上回る悪さと難しさだった。

二ノ沢本流に入り初めに立ちはだかる三俣下大滝はセオリー通り左岸のリッジより取り付き、草付きに入る手前で滝の方へと目をやると水流右の傾斜の強いスラブ壁を登りたくなってしまった。この位置から水流側に降りた所に残置ハーケンを一本確認出来た。
私のわがままで右壁直登ルートに取り付く。
残置ハーケンにクリップし、一気に傾斜の増すスラブを登る。ホールドに乏しくバランシー。ナイフブレード#1を半分程沈め、さらに直上。
落ち口手前は岩が脆く、使えるホールドを根気良く探しながらのデリケートな登攀となる。
甘効きのナイフブレード#1を打ち込み、覚悟を決めて一気に登ると傾斜が落ち、滝の上に達する事が出来た。
その後も悪いピッチは延々と続き、滝沢リッジに抜けるまでテラス等は一切無かった。
二ノ沢右壁を抜け、ドームを越え、国境稜線に立った時、初めて緊張感から解放された。
大きな達成感と共に、小雨降るガスに覆われた登山道を下山した。
こんなルートで、壁に飲まれる事無く完登出来たのは、経験豊富なパートナーY川さんの存在があってこそだった。 感謝!

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