N島S子です。

10/7-9 黒部別山 大へつり右ルンゼ~チムニー状ルンゼ下降の報告いたします。
この地味なルートを楽しいのかと問われれば、多くの人は楽しいとは思わないかもしれない。
しかし、総合力を問われるルートであることに違いはないと思います。

【山域・ルート概念】
黒部別山は内蔵助谷から剣沢までの黒部川左岸に位置する。いわば剱岳の前衛的な山である。
西面は比較的穏やかな地形だが、東面は黒部川に向かって数多くのルンゼが深く切れ込み、
派生する尾根は急峻で多くのギャップを含み積雪期は第一級のルートとなっている。
大へつり右ルンゼは別山谷手前500m(黒部川上流から見て)に位置する。水平距離750m、取り付きからの標高差700m。
下降のチムニー状ルンゼと合わせて、水平距離僅か1.5㎞ほど、平地歩行なら30分も掛からないわけだが
そこにまる二日間を要した。
沢登り、アルパインクライミングとも少し違う、ルンゼ登攀と表現した方がしっくりくるだろう。
また、このルート中ビバーク適地はない。座りビバーク覚悟のルートである。
大へつり右ルンゼ…全20ピッチ
チムニー状ルンゼ下降…全11ピッチ

【報告】
10/7
アプローチ日、日電歩道の白竜峡でBP

10/8
C1 5:20~取付き5:50~奥の二俣11:55~2段目スラブ落口15:25~右岸尾根19:45(C2)
往路を30分ほど戻り大へつり右ルンゼ取り付き。
出合の渓相はパッとしないガレルンゼ。
7mを越え、岩溝状の中CS5mをショルダーでAさんにロープを伸ばしてもらい、ずぶ濡れになりながら突破。
下ノ二俣を過ぎ、出だし立っているスラブを越えるとまた岩溝状になり、一癖ある棚を超えて行く。
いやらしいCS8mをYちゃんリードで超えると奥ノ二俣。
右俣のスラブに入り、途中からロープを出す。一段目は70mのスラブ。
二段目のスラブから左に角度を変え、前方の空間に広がりを見せ最奥の急傾斜のスラブへと続いている。
このスラブの落口から右岸の尾根も低くなってくる。


左岸尾根は立った側壁となりルンゼに覆いかぶさるようにあり、右岸尾根は低いがギャップのある痩せ尾根。
遥か眼下に黒部川。
両岸は狭まったがまだまだスラブは続く。


被った段差を越え浮石多いルンゼ状スラブにロープを伸ばすが、良いビバーク地などなく、途中でヘッデン行動になり、Yちゃんの頭上を落石が飛んで行ったりと危ない場面もあったがルンゼが右岸尾根に吸収され、密藪にてようやくロープを解く。
右岸尾根上にて座りビバーク。住めば都とはよく言った。

10/9
C2 5:45~1800m岩峰上6:15~沢床9:30~下の廊下登山道13:30
空が白み対岸には凄味ある風貌の大タテガビン第一尾根を間近に望む。
密藪と格闘30分ほどでようやく大へつり尾根に乗る。眼下には別山谷の大空間が広がり左俣、大スラブ、R3、R4が一望できる。


絶景である。この角度から別山谷を眺める人なんてそういないだろう。
下降ルートのチムニー状ルンゼのある 大へつり尾根の別山谷側は垂直にぶっ立っていて、わずかな尾根形から懸垂下降を開始。
沢床に降りるまで5ピッチ。予想以上に時間が掛かり3時間ほど要す。
沢形がはっきりしてからはスラブ状のルンゼの下降となり、出てくる滝は懸垂下降。ブッシュ支点もしたが、ハーケンを残置してきたものもある。
途中、ロープ回収時にカモシカの死骸と壁との間にロープが挟まりスタックして登り返したりと、まぁ、色々あった。
下部に行くにつれチムニー状に狭まり、前方の黒部川も近づいてくる。全11ピッチでやっと日電歩道に降り立つ。
疲れた身体に鞭打って黒部ダムまでの2時間の歩きはいつものことながら辛く感じる。
トローリーバスに揺られトンネルを抜け出た途端に、夢から覚めたようにこの二日間の出来事が記憶の彼方へ吸い込まれていくように感じた。