中ア 滑川奥三ノ沢左俣 2014/3/15-16

アイスクライミング

◆メンバー
YT川(L)、S見、M田

3/15晴れ

千丈敷カールから極楽平までラッセルがあるかもしれないと思いワカンを用意してもらったが、杞憂に終わる。雪面に出るとカリカリに硬い。ワカンは神社の脇にデポする。代わりにアイゼンを装着。サクサクと快適に斜面を登ること1時間弱で極楽平に着いた。快晴の素晴らしい天気で、これから向かう三ノ岳への稜線が目の前に飛び込んでくる。極楽平に登る登山者は我々だけで、この青空を独占する贅沢。

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三ノ沢岳に行く途中にある最低コルをめざす。このコルから四ノ沢を下って、奥三ノ沢に入渓する計画である。2006年3月にモトさんたちがトレースしたルートである。アップダウンもなく、歩きやすい稜線で極楽平から1時間で最低コルに着くことができた。

コルから四ノ沢を見降ろすと急な斜面が続いている。しばらくは前を向いて下れたが、やがて雪崩によって硬くなった斜面となり、バックステップで下降する。雪が硬いので、気が抜けない。
モト氏の記録ではF2が出ていたようだが、完全に雪の下になっていた。F160mはさすがに出ていたが、氷瀑の真中は水が勢いよく流れていた。右岸の灌木を支点にして50mを下る。しかし、まだ20mほど足りず、氷瀑の中段で切る。このとき 、ザイル回収 でMちゃんがヒヤリとなり、びっくりした。細い8mmザイルは滑るのだ!そこから3mほど左上の細い灌木に支点を取って、無事懸垂終了。

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滑川本谷は雪で埋まっておらず、水が流れていた。デブリ以外の所はめちゃくちゃ潜り、三ノ沢まで1時間ほど掛かってしまう。S見さんは奥三ノ沢に無雪期にきたことがあるらしく、間違いそうになる私をナビしてくれる。

奥三のF1はすぐにあった。45mとあるがデブリで埋まっていることもあって、30mくらいのラインを登る。氷が以外と硬い。F1のすぐ上にF2が見える。これは50mくらいある。50mいっぱい出して終了。左落ち口上の細い灌木でビレをする。
3人がF2の上に揃ったのは5時前。F2の上はデブリのオンパレードだ。デブリのある沢筋にテントを張るのは気分悪いので、テン場を左岸の支尾根の雪面を慣らして幕場とする。樹林の間から、見事な夕日を眺めることができた。

今回は小柄な女性が2人と言うことで、2人テントで間に合わせた。それ程窮屈でもなく横になれた。ところで、私が計画するときの食糧はみんな各自にしてしまう。冬の1泊2日の山行なら、お湯が湧かせれば良いとしている。装備もアルパインクライミングでは極力コンパクトにしたいので、テントシートは持っていかない。

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ところで、テントの中でラッぺリングでのザイルの結び方について話題になる。今まではテクニカルなことに疎く、みんながやっているフィギアエイトノット(八の字)で良いと思っていたのだが、最近オーバーハンドノット(止め結び)の方が欧米では常識と聞き、今回の懸垂からオーバーハンドノットで懸垂することにした。シングルではまだ心配なのでもう一回結び目を作るやり方(ダブルオーバーハンド)をした。ペツル社ではラッぺリングでのザイルの結束はオーバーハンドノットを紹介している。また、BDは8の字とオーバーハンドとどちらが強度があるかと言う実験をした結果、オーバーハンドの方が強いと言う結果になったらしい。会はどう言っているのかな?

もう一つ、私の仲間内で検討されていることがある。アイゼンはモノが良いかデュアルが良いか?最新のアイスクライミングではモノポイントで登るのが良いと言われ、そうしてきた。しかし、最近上手い人でデュアルで登る人や海外のクライマーで、デュアルで登る人が結構いる。私も検証すべく、最近デュアルで登っている。表面が溶けかけた氷では絶対デュアルが良い。ただ、硬い氷では、どちらが良いか分からない。前爪2本を効かせて線で立ちこめば、安定間はデュアルかもしれない。ただ、つま先で登っている感じがない。それと、氷を壊すのはデュアルの方が大きい気がする。

千丈敷ロープウェイ9:50
極楽平10:30
四ノ沢下降コル11:30
F1 下14:00
奥三ノ沢F1 取り付き15:00
F2 上16:50
幕場17:20

3/16晴れ後暴風、ガス

天気予報によると今日は風が強まって稜線では20m以上の強風が吹くらしい。午後からガスも出ると言う。と言うことで、昼までには極楽平に着いていたい。のんびり行動する訳にはいかないようだ。

テン場からすぐに二俣に到着。雌滝は右俣に見える小さい氷瀑らしい。左俣に入りずいぶん登って、谷が右にカーブするあたりに20mほどの滑滝がある。雄滝か?ノーザイルでも行けそうだが、M田さんがザックを持ってリードの練習をしたいと言うので、M田さんがリードする。この滝のあとはひたすら登る。
硬いアイス化した雪面で、ふくらはぎが悲鳴をあげる。すでに稜線では雪煙が舞っている。のんびり三ノ沢岳に登っていられないので、2550mあたりで左のルンゼに入って、早く稜線へ出ることにした。2750mあたりの稜線の肩に出る。まだ、青空が出ているが、宝剣の山頂の方はすでにガスが掛かっている。この時まだ9時半だった。

稜線伝いに、昨日来た稜線を戻る。極楽平の方に向かう手前で少し休憩を取ることにする。この時は極楽平の道標も見えていたので、あと少しで下山できると思っていた。トラバースを始める頃よりガスが濃くなり、ホワイトアウトになる。極楽平への方向は分かっているつもりだった。しかし、トラバースしても道標が見つからない。磁石を出して東に進んでいるつもりだったが、S見さんから北に向かっていると言われる。これはアカンと思い、S見さんの意見に従ってザイルを出すことにする。ザイルを出して東に向かう。
50m程東に向かうと、有り難いことに登山道に張ったロープが見えてきた。風はさらに勢いを増し、我々を襲う。登山道に沿ってヨロヨロしながら下っ て行くと 、見覚えのある極楽平の道標に辿りついた。思ったより斜面を登っていたことが分かった。これで、なんとなく下山できると確信した。

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風下の千丈敷側に入れば、穏やかになるかと思ったが、雪煙が舞い、体を持って行かれそうな突風が吹く。目も開けていられない。地吹雪を避ける場所がない。一刻も早く下りたいが、ここからの下りは急斜面で硬い雪面。ホワイトアウト状態でノーザイルでの下降は怖い。泣きたい様な最悪のコンディションだが、ここはザイルを出して下ることにする。2人が初心者でなくて良かった。私の指示どおりに動いてくれる。50m下ると、見えなくなるくらいガスが濃い。4ピッチ下ったあたりで斜面の傾斜も落ちてきた。かすかに、ロープウェイの建物がかすんで見えたときは助かったと思った。まだ12時55分のロープウェイに乗れそうだ。10分前に3人が揃った。

慌ててアイゼンを脱いで列に並んだら、定員オーバーで20分あとの臨時便に回された。安堵で気が抜ける。20分の余裕が出来て、ハーネスを脱いだり、アイゼンを仕舞ったり、酷い格好を直すことができた。それにしても、この天気の急変はヤバかった。M田さんは顔に軽度の凍傷を負ったらしい。もう少し天候がもつかと思ったが、またたく間に、宝剣一体がガスと強風の吹く状態になってしまった。強風はすさまじく、下りのロープウェイが小の葉ように揺れ、一時ストップするという事態になった。乗客がこの時悲鳴をあげた。M田さんが恐ろしさのあまり、手すりにしがみついていたので、失礼ながらクスクス笑ってしまった。

地吹雪でのホワイトアウトは陥りたくないが、貴重な経験になった。今回の山行の核心は氷瀑登攀なんかではなく、急変した天候からの脱出だったと言える。

幕営地5:00
雄滝下6:00
稜線9:30
三ノ沢岳稜線終点10:50
極楽平11:50
ロープウェイ12:45

(YT川)

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