山の好きな働く仲間のみなさん。私たちの生まれ育った日本は、世界にもたぐいまれな美しい国土と、四季折り折りにうつり変わる素晴らしい自然にめぐまれています。こうした美しい国に住みながら、私たちはこの素晴らしい自然を心から堪能しているといえるのでしょうか。

碧く澄んだ空と輝く太陽はスモッグにかくされ、清い流れは工場の排水に汚され、緑の山野は乱伐と観光化とで荒らされ傷つけられているのが現状です。職場では上役に気をつかい、能率上げろと尻を叩かれ、休日といっても目的もなく、家の中でゴロゴロとテレビでも見ながら一日を無為にすごしてしまう若者が増えてはいないでしょうか。

私たち「ぶなの会」は山野を奔放に駆けめぐる中で身体と心を鍛え、それぞれが信頼しあえる仲間であり、引き続きそのような仲間を多く迎えていきたいと考えています。

登山は、厳粛に大自然の中で、何ごとにも屈しない強い意志と豊かな人間性を育み、適確な判断と鋭い決断の力を、そして集団の中で効果的な指導力を養うことができます。登山は、仲間と力をあわせ、励ましあって困難をのりこえ、共に喜びあう中で、仲間への深い思いやりと心からの信頼のきずなを築くことができます。これらは、私たちがこの国を明るく住みよい国にしていこうとする時、とても大切なものではないでしょうか。

私たち「ぶなの会」は、まわりの多くの仲間に山のすばらしさを伝え、安全に山へ連れて行くことのできるリーダーを多数育ててゆくことをとりわけ大切に考えています。数多くの人が、山へ行きたいと思いながらも、優れたリーダーや仲間に恵まれないため、技術的に伸び悩んだり、雪山や岩登りへのステップの機会を阻まれています。

私たちは全会員がすぐれたリーダーとなり、多くの働く仲間や心から自然を求めている人たちに、楽しく安全な登山を広めます。また、山の熟達者として、その知識と経験を仲間のために役立てたいと考えます。会はハイキングから冬山まで、あらゆる登山を対象とした研究会や登山学校を開催します。

私たち「ぶなの会」は、美しいかけがえのない国土を守るために、観光と開発の名のもとに自然を破壊することに反対します。登山の安全と充実のために、登山施設、教育機関、ヘリコプターなどを活用する救助体制の確立を国と自治体に求めるため、多くの仲間と力を合わせて運動を進めます。

仲間たち、山へ行こう!登山は大自然を相手にした壮大なドラマです。登山は、日々の生活に疲れた私たちの身体と心に力と展望を与えてくれます。

仲間たち山へ行こう!「俺たちゃ街には住めないからに」ではなく、身体を鍛え、精神を鍛え、仲間たちと力をたずさえて信頼の絆を深める中で、明日からの生活に、職場に、この国の未来にかげりのない明るい展望を切り開いてゆくために!

1968年3月ぶなの会

.

TOP