メンバー:A久L、S津、Y田、S藤D

●1日目(快晴)
7:10 品沢高原発-12:20 ナマズの岩壁着-15:00 マッコウクジラの岩壁着-17:00 マッコウクジラ上C1

●2日目(快晴)
6:00 行動開始-8:00 下部岩壁登攀開始-9:50 トラバース開始-13:00 稜線-14:00 上部岩壁上-16:00 下部岩壁下-17:00 C2

●3日目(曇り時々雨)
7:00 行動開始-9:30 品沢高原

中央のピークに伸びる尾根がP3尾根

左のピークに伸びる尾根がP3尾根

●1日目
品沢高原に車をとめ、林道を歩き出す。
積雪量は平年よりも随分少ないが、直前2日間の降雪が50cmあり、しょっぱなから膝ラッセルだ。
いつもだと尾根末端まで30分くらいなのに1時間も掛かってしまう。
尾根に取り付くとすぐに急登の斜面。藪の露出が多くうっとうしいがラッセルは深いという厄介な雪の状態。
軽い雪に体が沈んで進まないので先頭は空荷になり、短くラッセルをまわす。

PⅠにあがりこんだところでアイゼンワカンにする。
ここから先はゆるい雪稜と草付泥壁の急登が交互に出てくる感じ。
稜線に掛かっていた雲もとれ、快晴の空の下、戸隠西岳の荒々しい岩壁が望まれるようになる。

ナマズの岩壁

ナマズの岩壁

ナマズの岩壁には正午過ぎに到着。思った以上にラッセルに時間が掛かっている。
ここでワカンを脱ぎ最初のロープを出す。リードは米ちゃん。
右側の雪が付いたラインにロープを伸ばすがスノーバーは岩を突くので横埋め。
最後はブッシュを避け、右から回り込むように抜けた。

大ハングのある岩壁は左側の斜面から。ロープを出しD介がリード。
登りだしは雪の浅い草付泥壁だが、上部はスカスカのヤブ雪壁に苦戦する。

マッコウクジラの人工登攀

マッコウクジラの人工登攀

これを過ぎるといよいよマッコウクジラの岩壁。初日の難所だ。
アブミ、フィフィを準備し米ちゃんがTRY。
今年はキノコ雪の発達が小さく、抜け口は簡単に見えるが、逆に足元の雪が低い分、スタートのハングが高く離陸が難しい。
頭上のハーケンにアブミを掛けるが次の支点が無い。
アブミに乗った不安定な姿勢のまま、ピナクルにタイオフして次のアブミを掛けるが、そこから手が届く範囲の潅木やピナクルは脆弱な物ばかり。
いろいろ試してるうちに上げっぱなしの腕が消耗し、A久に交代。
腕がフレッシュなうちに体を持ち上げ、何とかスタンスに乗った。
その後は木登りだけど、さっきので腕はパンプ気味。ヒイヒイ言いながら抜けた。
ザックを荷揚げし、全員が登ってくる頃には17時を回る。ここに2時間も使ってしまった。

選手交代 Y田が示したラインでA久が突破

選手交代 Y田が示したラインでA久が突破

C1に予定していたPⅣまで、もう1ピッチ残してしまうが時間切れでこれ以上の前進は出来ない。
テントを張るにも目の前は両側切れ落ちたリッジ。
苦労して登ったマッコウクジラ下には、まだマシなスペースがあり、C1を下げる事も考えたが、後退は明日の行動を不利にしてしまう。

雪で丸くなった尾根はどこまで地面でどこから雪庇なのか判別しづらい。
念のためロープを出してS津さんにリッジ上を偵察してもらい、なんとか4-5人テンが張れそうな場所に目星を付ける。
スコップで整地してできたスペースは辛うじてテントの幅しかなく、トイレは前方トレース上に作りロープをFIXして、それ以外の場所は立ち入り禁止。
テントに入ったのは暗くなった18:30になった。11時間半行動。

朝日を背に雪稜を行く

朝日を背に雪稜を行く

●2日目

4時起床。外に出ると満天の星空に西岳のシルエットが浮かぶ。
P3尾根は近年では完登記録を見ない。本当に自分に登れるんだろうか?
そんな不安な気持ちを忘れさせるかのように西岳に流れ星が走る。
完登出来ますように。

P1尾根

P1尾根

テントはじめ不要装備はここにデポ。
1ピッチでPⅣを越え、コルを登り返すと目の前に核心の岩壁が迫る。
昨年引き返した場所だ。天候敗退だったけど、その時は壁に弱点を見つけることは出来なかった。

巨大戦艦の船首の様な迫力

巨大戦艦の船首の様な迫力

ここを登る為に写真でオブザベーションを繰り返し、ジムに通った1年。
万全の準備で臨んでいるつもりだけど、多くのクライマーを跳ね返してきたこの岩壁を目の前にすると、その迫力に圧倒される。
申し分のない天候だけに敗退の言い訳はなく、潰されそうな気持ちを気合で押さえつける。
パーティの中でフリーは一番ダメなんだけど、ここだけは自分で登ると決めていた。

まず基部にイボイノシシを打ち込むが半分しか刺さらず、気休めのランナーをとる。
岩壁最下部は薄く雪がついていて雪下の見えないスタンスにアイゼンを置き、爪先に神経を集中して立ち込む。
フェースの上方にリングボルト発見。あそこまでは我慢だ。ランナウトに耐えクリップ。
次にボロい岩質に躊躇し「はずれるなよ」と祈りながら、しずかにアブミに乗り込む。
次の手は意外とガバで安心するが、先のピンが遠い。
エイドからフリーに移らないと届かないのだけど、次のホールドはベルグラをまとい、クライマーを拒んでいる。
左手一本で上体を支え、右手のピッケルでベルグラを叩く。やっとこさクリーニングが終わり、アブミに戻ってフィフィレスト。

気を取り直してフリーに移る。両手でホールドを掴み体を空中に乗り出せばよい。
頭ではムーブは見えてるけど、細かいスタンスに立ち込むその一歩の思い切りが出来ず心が折れそうになる。
「ガンバ!」。仲間の声に意を決して立ち込む。やった。
左手をいっぱいいっぱいに伸ばしピンにカラビナをかけたいがゲートが言う事を聞かない。
あせる心を落ち着かせアブミをセットし、やっと安定した体勢をとる。
傾斜の寝たリッジに馬乗りになり潅木を掴んだ。もう大丈夫だ。
雪のついたテラスにアックスを叩き込んで乗りあがり、リングボルトにロープをFIX。終わった。
「ビレイ解除!」歓喜のコールを送る。

中間テラスでメンバーを迎える

中間テラスでメンバーを迎える

ザックを荷揚げし、ラストのD介が登ってくる間に、次のピッチを米ちゃんが伸ばす。
上部岩壁は登らず、左へ回り込むように続く浅いバンドをトラバース。
手に取るホールドは剥がれここも悪い。ブッシュに突入して一息つくと雪壁を斜上。
気温が高く所々笹が出ていて気持ちが悪い。
50mいっぱいでは届かず、残り2mを長シュリンゲでつなげてピッチをきる。
「もうお腹いっぱいです。」と言うD介に最終ピッチのリードを託す。
グズグズになった雪壁からリッジ向けてロープを伸ばし、傾斜が緩んだところで核心部終了。

核心部を越えて最後の雪壁を詰める

核心部を越えて最後の雪壁を詰める

見上げる稜線まで尾根通しに行くには雪壁にもう1ピッチいりそうだ。
もう12時だしスピードを考え、尾根を右に回りこみ広いルンゼ状の雪壁にルートを求める。
新雪直後は雪崩に警戒するべき斜面だけど、今日は幸い雪が安定しロープも必要はない。

見事トップアウト!

見事トップアウト!

最後、小さく張り出した雪庇を越え、13時にトップアウト。
やった。登ったぞ。稜線の反対側はこれまでとは対照的に傾斜のゆるい平和な斜面。
後立山北部がキレイに見えるが、その上にはレンズ雲が広がっている。
登頂の感動に浸りつつも、まだ下降が残っていて、安全圏までは気を抜けない。
先ほどの雪壁をバックステップを交えて慎重に下り、上部岩壁から下部岩壁下まで空中懸垂。
1ピッチで切るために懸垂支点をギリギリまで下げ、細いリッジめがけて一気に下る。

PⅣを越えるまでが一番の危険地帯。もう1ピッチ懸垂でC1に到達。
こんな危険なテン場は御免とばかりにデポ品を回収し、更に2ピッチ懸垂で大ハングの岩場下に達し、安定したコルにC2を設営。18時にテントに入った。12時間行動。

●3日目
一晩中強風だったが、既に危険地帯を抜けている安心感でのんびりと支度をする。
2月中旬というのに時折小雨が落ちる高温。
グズグズに腐った雪に足を取られながら2時間半で品沢高原へ帰着。

おめでとう!P3尾根完登

おめでとう!P3尾根完登