大谷不動 左岩壁左ルート、右側壁ルート 2017/2/25-26

講習・訓練

メンバー:L S原、T崎、K

行動:
2/25(土)東京前夜泊~峰の原スキー場6:45~8:15奥の院~大谷不動 左岩壁~右側壁~18:30奥の院
2/26(日)奥の院7:15~大谷不動 右側壁~奥の院15:00~17:00峰の原スキー場~帰京

今回の受講者2人は、先日八ヶ岳の大同心大滝(50m, V+)を自分たちで登り、OSしている。既に初級レベルを卒業した二人の実力を試してもらうのに、今回は最高の舞台を用意した。

大谷不動は四阿山の根子岳西面 宇原川の断崖にかかる氷瀑群で、少し北に位置する米子不動と並んで、本州最難VIクラスの課題が並んでいる。100 m級が揃う米子不動よりも滝のサイズは小さいが、ピッチグレードではひけをとらず、垂直の要素が強い難関揃いだ。

2/25(土) 快晴
早朝の峰の原スキー場から大谷不動 奥の院に向かう。前週の降雪の余韻はほとんどなく、しっかりトレースのついた林間を行くと、間もなく左岩壁の氷瀑が白い筋となって見えてくる。その姿が大きくなるにつれて気分も高まってくるのが、このアプローチだ。

奥の院の手前に一番乗りでテントを張り、装備を着けてさっそく出発。まずは左岩壁の左ルートF1(50m, VI)を目指す。この滝は3本並ぶ左岩壁の中で最大、かつ最高難度だが、氷結が甘いことが多く、これまで登れたことがない。沢筋から見ると、細い氷柱の集合体でシャンデリア状。今回もダメかと思いつつ取り付きに着くと、どうやら右側がしっかり氷結している。ただし途中約30 mの垂直部を休みなしに登り続けなければならず、睡眠不足の朝には重すぎる課題だ。しばらく迷ったが、ここで登らなかったら一生登れないかも知れないと思うと、心は決まった。

氷瀑右側には凹角気味のラインがほぼ垂直に伸びている。ただ、全体が垂直ということは、いくつもの小ハングを乗り越えていくことを意味する。そのうちスクリューが足りるか不安になってきた。しかも途中でスクリューを打ち直す際に、1本落としてしまった。最後に予備を残すためには、節約しなければ。ど垂直のラインをランナウトしまくり、テンションの誘惑を必死に抑えながらじりじりと登り続ける、心を削られるような時が過ぎていく。



そして難関は最後にやってきた。通常、氷瀑の勾配は最高でも垂直の筈だが、この凹角ラインの最上部はやや前傾しているではないか。どうやら氷結の過程で自然にできたようだが、それまでステミングで体重を支えてきた足場を失い、身体が何もない空間に押し出される。ハングの上の凍った雪面に左アックスを打ち込んで身体を引き上げ、右を打ち込もうとしたその瞬間、左アックスの雪面が切れた。その瞬間すべてがスローモーションになり、身体が引き剥がされ落ちていくのを、なすすべもなく見ている。ここで大フォールから救ってくれたのは、アックスをハーネスにつないでいる自作のリーシュだった。



今回は長年の課題だった50 m, VI級の氷瀑を、スクリュー7本で、意図的なテンションをかけずにに登り切った。アクシデントでOSは逃したが、これが今の実力だろう。久しぶりに納得のいくクライミングができた。
F1上の雪のルンゼ約50 m先には、F2(40 m, V-?)が見えている。目を転じると、陽光に包まれた林間に、テントを張った奥の院が見える。フォローで登る二人をビレイする間、静かな時間とともに登攀の余韻に浸った。

さて受講者の二人だが、こちらも垂壁上部に苦労し、消耗しきって終了点にたどり着いた。ちょうど陽が当たり始めたF2を、早くもパンプから回復したK君にリードしてもらい、全員完登。長い1本が終わった。

その後、沢筋の氷瀑群を眺めながら本流二ノ滝の手前まで行くと、それぞれしっかり氷結しているようだ。これだけの本数を少ないパーティで登り放題。何という贅沢な時間だ。本流右手の右側壁ルート(50m, V+)は、岩壁からの染み出しが凍ったもので、土壌成分の影響から緑~茶色に染まった珍しい氷瀑だ。今度はT崎君がリードで取り付くも、時間切れで中途終了。暗くなったテン場に戻り、プロ調理師のK君の鍋に舌鼓を打った。

2/26(日)晴れ
朝早くから昨日の右側壁ルートへ。T崎君が昨日の続きでRP。こちらも最後が垂直で、しかも水が滴っているが、この長いルートをテンションもかけずに登り切るとは上達したものだ。続いてK君がOSトライ。講習は今回初めてなので、現場で垂壁上でのムーブを教えたが、すぐにそれを活かしてスムーズに登っていく。さすがに昨日の疲れが残っているのか、最後の垂壁で小さくフォールしたが、こちらも無事に完登。お疲れさまでした。



●参加者コメント
峰の原スキー場からのアプローチ途中、尾根を越えたの先の岩壁には遠方からでもはっきりと分かる白い氷爆が目に留まる。こらからアレを登りに行くのかと思うと胸が高鳴りました。
アイス自体は回を重ねるごとに身体や道具の使い方に慣れてきている感覚はありますが、やはりバーチカルな部分になると、とたんに足の決め方が雑になりアイゼンの歯に立ち込めていないなとを痛感しました。
次回以降の課題も分かったので、S原講師の的確なアドバイスを確実に習得し安定した登りを身につけたいと思います。
また、S原講師にはバイルの研ぎ方やアイゼンの微調整、氷の性質・その見極め、アバラコフ構築などアイスに関わるものから、クライミング全般における支点構築の考え方、耐荷重に応じたスリング径への配慮・用途に応じたスリング材質の選択など大変ためになる事を教わりました。
やはり、「知っているからいいや」という思考では吸収できるものも出来なくなってしまうと思うので、今後もクライミングの経験・知識が増えていっても驕る事なく新しい考え方・より良い方法にオープンであり自分自身を成長させたいなと思いました(郡)

前シーズン、天候により流れていた大谷不動にいよいよ来ました。
初日始めから左岸壁左6級をリードするS原さんのライン取り、スクリューセットを参考にさせて頂く。
グレード難易度が上がって、より困難なラインか弱点をいくかでも変化するライン取り、レストのポイント、スクリューセットについて、自分の判断、技量がまだまだ不足している。(理想とするライン、実際は弱点をいっても精一杯。ダブルロープの流れ、フォールした場合を考慮したクリップ。スクリューを核心前に使いすぎ等)
右側壁5+級リード時、水滴が降ってきてバイザーが凍りつく状況で、ピッチを切らずに50m以上を通してロープも重くなっていると、ついレストも多めに取ってしまうが、スピードを重視しないとならない。
今回、講習初参加の郡さんがS原さんを質問責め!にする横で、自分の復習と見直しをさせて頂き、有り難かったです(T崎)

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