越後 金城山 高棚川つばくろ岩(2025/10/4)

アルパイン(夏)

2025年10月4日

N島R恵、A沼M史(会外)

0625発~つばくろ岩基部1330~イワキ頭1600~金城山1730~観音山(雲洞)登山口2030

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〇報告

林道終点のちょい手前に駐車(車回収の便のため)。

古い林道跡を歩きだすが藪がひどく、沢に降りたり林道跡にのったりを繰り返す。
いつしか林道跡は消え、本格的な遡行になる。巨岩のボルダリングが続き、結構めんどくさい。690m地点に到達する前に、すでに結構疲れる。

690m地点に達すると、行く手の山並みに藪岩が見えている。あのなかの、どれかが、つばくろ岩のはずだ。。。

そもそも、今回はつばくろ岩がメインで、沢はアプローチである。なのに、このアプローチでの結構な登りごたえなのは予想外で、時間が押すことに気がせいてくる。が、一つ一つを確実にこなしていくより仕方がない。
750mを過ぎると、途端にゴルジュになり、越後らしい急峻なスラブに挟まれためんどくさい滝が出てくる。いくつか登ったところで、どうにも登れないのが出てきたため、右岸のルンゼから、高巻きに入る。

これが、塩沢山岳会の激古い記録にある「小峠」を使う乗越か。と言いながら、ここでミスをしてしまった。

現実には、これがまさしく「小峠」への登りで、このルンゼを忠実に登れば、小尾根を乗越し、この先連続する(とはその時は知らなかった)困難な滝を高巻いて、沢に戻れたのである。ところが沢屋の本能で、ルンゼの途中でひょいと右に伸びたバンドを見つけてしまい、これを行けば、問題の滝を小さく巻ける。と考えて、そのバンドを伝ってしまったのだ。案の定、巻こうと思っていた滝自体はきれいに巻けて、ちょうど、落ち口に懸垂なしでおりられた、ので、わーい、とちょっとうれしくなっていたのだが、そこからさらに二俣を左に進んだところで、絶望的な滝にぶち当たってしまったのである。

A沼さんが左の棚からトライするが、棚自体が外傾しており、非常に困難で、カムを残置して降りてきた。そこから、1ピッチロープを出して右岸の急な泥壁を登り、小尾根に乗る。そしておそらく、「小峠」に達し、そこから沢に向けて下降。懸垂1ピッチで、沢に戻る。

これで、絶望的なヤツは処理できたのだが、そこからもまあまあ面倒な滝が続く。特に最後の滝は、水流をずぶぬれになって格闘すれば登れるだろうが、そこまでする気もなく、ザイルを出して右手のチョックストーンから登ったのだが、クラックが下に向かって大きく開いている。カムを決め、シュリンゲあぶみに乗り込み、泥にバイルを叩きこむ。なんとか突破。クライミングとしては、これが最難のピッチだった。

それをこえてようやく、奥の二俣についた。

そして、つばくろ岩と対面した。

うん。これ、どこ登んの。

立っている。立っている上に、我々は谷の底にいるので、上部の様子が、全く判らん。

まず、右俣でないことは確かだ。となると左俣だろ。もうちょっと左俣を詰めたら、なんとか、登れそうな様相になるんじゃないか。山登魂の記録だと、ロープも出さなくて行けるらしい。そういう、素敵なスラブが、左俣の奥にある、。。。はずだ。。。

ということで、左俣の奥に進み、もう水も枯れるようなところまで、いやらしい滝をいくつか乗り越え、そして、たしかに、スラブっぽいものにぶち当たった。

だけど、これ、難しくない?これ、ノーザイル?マジ?

ということで、ザイルを出し、A沼さんがトライする。結構苦労して、30mほどあがったところで、「梨恵さん!あっちだ!!谷の向こうに、歩けそうな素敵なスラブがある!一度降りるから、あっちに行こう!」

え、そーなの?あっち?ということで、懸垂を繰り返してある程度降りる。そこからよく見ると、なるほど、ニラの斜面の向こうにかすかに岩っぽいものが見える。

よし、行くべ。

ニラ斜面を楽しく登る。30mほどあげたところで、おおおおお~~。スラブではないか。スラブ。

やったった。これが、これが、間違いなく、つばくろ岩の「S字スラブ」だ!!

ザイルを出して、N島が50mいっぱい登ると、その先はまた藪っぽい。各自フリーで登る。藪とスラブを繰り返し、最後は、藪岩のリッジを忠実に辿り、いわきの頭から南西に伸びる稜線に乗った。

さて、そこからいわきの頭まで、垂直の激藪が続く、特に最後の方はシャクナゲは出るわ、岩は出るわ、二人してぎゃあぎゃあ言いながら、ようやく、いわきの頭についた。

360度の展望である。後ろに巻機山、右手に、八海山からつらなる山塊、そして、正面に魚沼の町と、色づいた水田が黄金色に輝く。重い雲の切れ目から差し込む陽の光が、まさに天使の階段のようで、そこに、二重の虹がかかっていた。

想い続けて15年、私のつばくろ岩が、終わった。

まだ沢をはじめてすぐの頃、ひょんなことで発見した山登魂の、S字スラブの記録。当時はまだ残っていた、あらかわ山の会HPの情報。そこから古い岳人を探し出し、さらに、4年ほど前か、後藤真一さんから、塩沢山岳会の古い記録を頂戴した。その間、多くのご縁に恵まれ、牛の歩みではあるが、経験を積ませていただき、いまようやく、つばくろ岩を登れた。

…などと感慨にふけっている場合ではなかったのだ。時間は既に16時。日が暮れる17時半までに金城山の山頂に、そして登山道に到達し、下山にかからねばらぬ、そこまでも藪を漕がねばならぬ。

ということで、登山道目指して、再び藪漕ぎ。とはいえ、もう稜線だ、藪ではあるが、垂直ではない。

ちょうど、17時30分、日没ぎりぎりに山頂につく。風雨が激しい。合羽を着こみ、ヘッデンで降りる。滑ってたまらん。高度を下げると雨はやみ、降るような虫の音に包まれる。魚沼の灯りを眺めながら、20時30分、槻岡寺の登山口着。

タクシーをお願いして、車にもどった。

・登り終わった今、気が付いたのだが、おそらく、記録が乏しかったからこそ、私はここまで、この、みたこともないマイナーな岩に、強烈に惹かれたのだろう。その、「未知」という部分に。
これがガイドブックに載っていたら、これほどのめり込まなかったろう。登らせて頂いたつばくろ岩と、A沼さんに、心から感謝する。

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