【書評】増補改訂 関西起点沢登りルート100(吉岡章)

書評

こんばんは、たもしまです。
今月発売されたばかりの「増補改訂 関西起点沢登りルート100」(山と溪谷社)を手に入れました。
沢の本をコレクションしている者として、書評を書きます。
※本書評は、会としての見解ではなく、個人の感想です。

【総評】
絶版となりプレミアがついていた「関西起点沢登りルート100」(2011年)の再販としての価値は高いが、旧版と比べて入れ替えられた沢は100本中9本のみであり、残りの91本も従来の遡行記録・遡行図のままの沢が多く、マニアの期待に応える内容とまでは言えない。昨年の「新版東京起点沢登りルート100」に新規の記録が多かったのと比べると、残念ながら見劣りする内容である。

【追加された沢】
台高 大熊谷 東俣谷
   神之谷川 大栃谷
南紀 天瀬谷
奥高野 川原樋川 大江谷
奥美濃 川浦谷 海ノ溝洞
    粕川 西谷
石鎚 名野川本流
   安居川 弘沢
剣山 坂州木頭川 菊千代谷 

奥美濃は、山域レベルで追加された。海ノ溝洞は、最近人気のあるゴルジュ突破系である。

【削除された沢】
大峰 栗平川 水無谷
若狭 耳川 うつろ谷
台高 蓮川 野江股谷
   北股川 柏原谷
京都北山 由良川 カラオ谷
     由良川 中のツボ谷
     由良川 ゲロク谷右俣
扇ノ山 八東川 来見野川
大山 甲川

京都北山と若狭は、山域レベルで削除された。野江股谷と甲川は、近年の崩壊により遡行価値が下がった沢である。

【その他の沢】
継続掲載の91本中17本程度は2011年以降に著者らによって遡行されており、新しい情報が取り入れられていると思われるが、残りの74本程度はほぼ旧版そのままの内容となっている。
一方、グレードは見直しが行われており、滝洞谷、口ノ深谷、宇賀川蛇谷、堂倉谷本谷の遡行グレードが上がっている。
なお、掲載されている沢の一覧は、私が作成している以下のデータベースで確認可能とした。
『書籍掲載沢一覧』https://drive.google.com/file/d/1a6YDeNtRicIZpugCDPg8sX7A8gUPskbm/view?usp=sharing

【その他】
・山域概要の説明も、旧版と新版で大きな違いはない。
・旧版で記載のあった、入渓度と推薦度の3段階評価は削除された。多少は参考にしていたのである方がよかったのだが。
・本体価格が100円上がった。近年の諸物価の高騰を考えれば、仕方ないことだと思う。

【所感】
昨年の東京起点100では新規掲載の沢が多かったため、それなりに期待していたが、残念ながら裏切られた。とはいえ、旧版を持っていない方には、関西周辺の代表的な沢登りルートを一覧できる一冊として重宝するだろう。
内容は旧版でも新版でもあまり変わらないため、旧版を持っているなら、わざわざ新版を買わなくてもいいように思う。しかし、白山書房が撤退した現在、沢登りのルート図集を出版しているのは山と溪谷社だけであるから、また10年後にもっと良い本が出ることを期待し、応援の意味を込めて一冊買っても良いのではないか。

【雑感】
最近出版された沢登りのルート図集4冊(銘渓62、丹沢200、東京起点100、関西起点100)のうち、銘溪62選の豊野氏、東京起点の宗像氏、関西起点の吉岡氏はいずれも既に70歳を超え、第一線の沢屋とは言えないだろう。
また10年後に再改訂版が出るのであれば、著者が代替わりし、内容も刷新されていることを期待したい。
欲を言えば、九州や東北の沢登りルートの本も新しく出ないだろうか…

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