飯豊 大石川東俣川千代吉沢 2011/8/11-15

沢登り

■メンバー
LA久T也、N島S子、S山W、H部C尋

■行程概要
8/11 大石ダム-入りブナイデ沢手前C1
8/12 C1-下部ゴルジュ-広河原C2
8/13 C2-上部ゴルジュ-南ノ大沢手前C3
8/14 C3-源頭-頼母木山-頼母木小屋泊
8/15 頼母木小屋-足ノ松尾根-奥胎内ヒュッテ

■8/11(曇り一時雨)
中条駅-7:00 大石ダム左岸林道ゲート -9:00 第2つり橋-11:00 入りブナイデ沢出合付近(C1)

前夜新幹線で新潟駅に向かう。S山は新幹線内でバイルを忘れたことに気付く。
新潟駅を降りると駅前にドンキホーテがあった。ラッキー。ここでバイル代わりにカナヅチを GET。680 円なり。
これでなんとかハーケンは打てるだろう(実際、ちゃんと打てました)。

翌朝始発で中条駅に向かう。駅からは予約しておいたタクシーで大石ダム左岸の林道ゲートへ。
タクシーを降りるとアブの歓迎をうけるが例年より少な目か?
林道を小一時間歩いて第1つり橋へ。橋の上で休憩。橋の上はアブが少ない。
さらに登山道を 30分ほど歩いて第2吊り橋へ。ここで装備を身に着けいざ入渓。天気は曇り。
水量は平水 or やや多め?特に問題なく進む。泳ぐ箇所やロープを出した箇所はなかったような・・(記憶あいまい)。
入りブナイデ沢出合ちょっと手前の段丘に幕場適地発見。さてどうするか。
この後は雨予報だしゴルジュだし、でもまだ11時で早すぎるし・・などと迷っていると雨が降り出した。
初めポツポツだったがしだいに本降りに。
これで理由はできた。行動停止決定。さっそく釣りに行くが、釣果はA久さんの1匹だけ。
雨は降ったり止んだりだが夕方には止み、たき火も出来た。夜中に少し降ったが、翌朝には止んでいた。
(S山W記)

■8/12 (曇り時々晴れ)
6:00 出発-大沢出合-17:00 広河原(C2)

昨日は断続的に強い降りだった割に、朝になると何故か幕場に着いた時よりも減水していた。私には好都合である。
右岸の入りブナイデ沢を過ぎるとゴルジュらしくなってきて、大沢手前の屈曲部の滝は越えられそうもなく、少し戻って左岸からブッシュ帯のトラバースで大高巻きをして大沢出合へ降りる。

本流には 2m滝、その上に続く淵が厳しそうだがW君が様子を見に行ってみる。
その甲斐なく結局左岸から巻き懸垂で降りる。
その先から両岸狭まり流水溝の廊下が続いている。この辺りが「矢櫃の廊下」と呼ばれている所らしい。
行ってみると深い所でも意外に足が着き泳ぐことなく通過できた。でも、降雨中だったらイヤに感じるだろう。
3段30m滝は左岸草付からブッシュ帯に入り巻き下り、屈曲部の2m滝はW君が右岸側壁に30mロープを伸ばしブッシュ帯まで登り、ヤブトラバース後懸垂20m。
またも狭い廊下状が続いているが落差1m程の小滝と淵の連続で泳ぎを交え越えて行く。
一か所H部君がロープを引いて泳いで行くがすぐに足が着き、見た目よりもあっさり超えてしまったので物足りなさそうに見えた。

この先でヨシノ沢を過ぎると少し開け、2m滝2つをA久さんが右岸へ30m伸ばし懸垂20m。
次の5m滝は一見して越えられないので、手前右岸の枝沢を少し登り適当な所から右のブッシュ帯へトラバースし、滝上に達した所より下を伺えば前方にCS6m滝が見えた。
登れそうに思えたがこのままヤブトラバースで纏めて巻こうということになった。ブッシュ雑じりの草付だが歩きやすい。
降りた所は「下の河原」でしばし平和と思ったのも束の間、左岸の連瀑を有したルンゼを過ぎると雪渓が現れた。
分厚い雪渓の入口は崩壊した雪塊が累積しており潜りたくはない。少し戻って草付から巻き上がる。

変な名前の三角ハゲ沢を過ぎ、3m滝を左からトラバース、次の倒木の掛かる3m滝は倒木利用+お助け紐で越える。
その先、奥の曲がり角には堂々とした20m滝が見える。
ルートをあれこれ探し、W君が見つけた右壁リッジからブッシュ帯へ繋ぐルートへ25m伸ばす。
降りたら大釡4m滝、左岸から纏めて巻くと本日の目的地広河原へ着いた。

今日は下流域の核心部を通過する日だったが、水温も低過ぎず、水量も平水より少なめだったからかもしれないが泳ぎはワンポイント的で、巻きに関しても、まだ標高が低いのでブッシュ帯も近く、悪く感じた所はほとんどなく、段丘もあり歩きやすかった。メリハリに欠ける感も無きにしも非ず。ここまでは総じて素直な沢であった。
ただ私自身にとっては、水から這い上がるのにお助け紐を出してもらったり、水流に負けそうなところはサポートしてもらったりと相変わらず王子様方のお世話になっていました。
(N島S子記)

■8/13(晴れ)
6:00 出発-上部ゴルジュ-13:00 南ノ大沢-先の偵察-14:30 南ノ大沢手前の河原に戻って幕(C3)

テン場から少し上がった長者原沢の出合に釣り師のタープがある。聞くと西俣峰の方から尾根を下って入ったとの事。
昨日釣れなかったのにも納得だ。少し進むと上部ゴルジュ帯に入るが、昨日までとは違い雪渓が連続するため、なかなか水線通し沿いには進めない。
側壁をアブミで離陸して登攀+荷揚げ・高巻き・雪渓くぐりと気の抜けない遡行が連続する。
草付の登攀ではこれまでウワサにしか聞かなかった草を束ねたランナーを経験!おまじないにもならん・・・ビビりました。
ただし、このあたりトポや記録では水線突破の記録が多いので、いろいろな判断ができたのは良かったかも。
また、高巻きも極端な高さまで追いやられることもなく、樹木もかなり強かったので安心。

南の大沢手前の雪渓を高巻き、懸垂で内部に降り立って下を足早に通過すると快適な河原。
ゆっくり休憩しようとザックを降ろしていると、「ズン」と不穏な音とともに雪渓が崩壊・・・。
見ると、雪渓のど真ん中に大きなクラックがあり、そこから崩壊したようだ。
あと 15分遅かったらと考えるとニヤけるしかない。
S子さんの発言:「雪渓崩壊はロシアンルーレットより確率が高い」には同意です。
(この雪渓は、夜に二度轟音を立てて完全崩壊しました。)

地形図でも、記録でも南の大沢より先に良いテン場はないため、河原をテン場に決めてとりあえずルート偵察へ向かう。
しばらく向かうと、なんとも冷たい風とモヤが出てくる。
大きな雪渓があることを予想してはいたが、高台から全体を見渡して絶句。
南の大沢出合から標高 1100m の屈曲点まで、雪渓が断続的につながっている。雪渓くぐりは論外、高巻きもかなりの苦闘を強いられるのは間違いない。
協議の結果、頼母木山から派生している尾根を乗り越して、雪渓地帯をパスすることを決定した。
テン場は乾いた河原で薪も豊富な一等地。この日も快適に寝ることができた。
(H部C尋記)

■8/14
6:00 出発-11:00 頼母木山頂上-11:40 頼母木小屋(泊)

朝起きて、昨日潜った雪渓を見に行くと、完全に崩壊していた。夜、焚き火を囲んでいる時に谷に響いた音が、あの雪渓の最後だったのだろう。
いつもどおりに支度をし、6 時には快適だったテン場を後にする。
南ノ大沢を過ぎ、崩れた雪渓を乗っ越すと、沢は右へ大きく蛇行し、北ノ大沢まで断続的に雪渓を擁するゴルジュとなる。
北ノ大沢手前で沢は 180 度方向を変えるので、我々は昨日の偵察で決めた通り、枝沢から尾根をひとつ乗っ越して危険地帯を巻いた。

気持の中ではあのゴルジュを突破してこそという沢通し志向があったが、断続的に連なりいつ落ちてもおかしくない雪渓群、両岸の切り立ち延々続くランナーの取れない悪い草付壁のトラバースなど、キワドイ場面が続く事は容易に想像できる。それになにより昨日の雪渓崩壊の音が脳裏にこだまして、とてもあのゴルジュを突破しようとは言えなかった。

南ノ大沢~北ノ大沢間は昨日偵察時に決めた通り、尾根越えのルートでと危険地帯を巻く。
藪尾根を下降しはじめ、徐々に沢が見えてくるとそこにもしつこく雪渓が。。。
やっぱり簡単には許してくれない飯豊の沢。
まばらな潅木と草付斜面をトラバースし安全な尾根から下降して 3 段滝の上部へ見事着水。
すると水量はグっと減り、鉾立峰、3g差岳など、たおやかな稜線が目に届くようになり、一気に源流の雰囲気となる。
あとは楽勝と思いきや、その後も沢は小規模ながらゴルジュを形成し、意外にも10mを越す直瀑等も出てきて最後まで侮れない。

ここから先はH部君に先頭を交代し、ルーファイをお願いする事にした。
フリーではあるが小滝の登攀や巻きのルート取りなどは、なかなかセンスがあり、将来が楽しみ。
最後 2つの雪渓を過ぎると沢は本当の源頭となり、お花畑の中に消えた。
そして 11時に穏やかな空のもと頼母木山頂上へ抜け、我々の大石川遡行が無事に終わった。
感動もさることながら、一番は頼母木小屋へ移動し、ビールで乾杯。この至福の一杯がたまらない!
濡れた装備を干しながら 12 時過ぎの無線交信でS山P,K池Pと連絡が取れ、その日の下山見込みを確認。
M浦Pとは夜20 時まで粘ったが連絡とれず。
(A久T也記)

■8/15(晴れ)
4:20 出発-4:20 大石山-6:50 林道終点-7:30 奥胎内ヒュッテ(GOAL!!)

今日は下山するだけ。暑い時間に歩きたくないので暗いうちから出発する。
沢慣れて、ザックも軽くなったメンバーで快調に飛ばすとあっという間に奥胎内ヒュッテ着。
S山P のM田さん、N田さんとも無事合流して互いの様子を報告し合う。
時間のあるA久さん、S子さん、H部の 3人は夕方に降りてくるM浦Pを待ってのんびり。
無事合流できたあとは中条駅近くの居酒屋で盛大な打ち上げを行った。
(H部C尋記)

●コメント N島S子
ぶなの会に出戻っての初合宿。振り返ればいつも希望のルートへ行かせてもらっていました。
岩井俣川ガッコ沢、飯豊川本流、竹ノ沢金堀沢、そして今回の大石川。心より皆様に感謝いたします。
そしてCLのA久さん、本当にご苦労様でした。
大石川は思っていたよりも素直な沢だった。そう思えるのも水量が少なめだったことやメンバーのお助けがあればこそ。
あと何年(何回)こういう沢に行けるのだろう。自分の登りたいスタイルで臨む山、まだ心残りがあるからもうしばらくは続けていたい。毎日そう思いながら遡行していた。
H部君とは親子ほど年が違うからか、そういうことを考えずにはいられなかったのでしょうか…?

●コメント S山W
飯豊の沢は、3年前の飯豊本流、去年の七滝沢、今年の千代吉沢で3回目ですが、やはり飯豊の沢は大きいですね。
沢の前半部は、水量少な目だったのが幸いしてか水流突破で難しい箇所もなく、高巻きでは一段上がると段丘がある場合が多く比較的簡単でした。
なんだ 5 級なんで大げさじゃん。簡単な沢じゃーん、なんて思ってました。
しかし、さすがは飯豊の沢だけあって後半部は切れ込み鋭い V 字谷になり雪渓も登場してそれなりに頭を使いました。
増水すれば困難度大幅 UP 間違いなしだし、やはりこれは5級でしょう。
合宿メンバーの皆様、おつかれ様でした。
沢の季節は10月まで続きますよ~。あと2か月、暇が許す限りバリバリ沢に着ましょう。

●コメント H部C尋
・憧れだった飯豊、しかも 5 級の沢へ行けたのはメンバー、天候、モチベーションが揃ったからだと思う。
「山は逃げないがチャンスは逃げる」これからも、行きたいところへ行けるだけの準備をしていきたい。
・沢の経験がまだ浅く、まだまだ誰かをサポートするような実力は無いことを実感した。
来年はもっと力をつけ、いい合宿を作れるようにしたい。
・おなじ合宿を目指した仲間が再び出会う「集中」はやっぱり熱い。ぜひまたやりたい。
・最後にはなりますが、未熟者と一緒に行ってくださった皆さん、合宿全体のとりしきりをしてくださったA久さん、ありがとうございました!

●コメント A久T也
飯豊の沢は 3 度目になります。入会した年にM山Lと入渓した大又沢。
大雨で沢は一気に濁流となり藪尾根からエスケープ。全く沢登りをさせてもらえず。
2度目は飯豊川。N島S子L、W君と3名で遡行は成功。
しかしこの時は水量少なく好条件だったにも関わらず、本流水勢の威圧感、真っ暗な雪渓下からハーケン打って恐怖の脱出。水無しビバークと翌日炎天下の 8時間飲まず食わずの草付トラバース等、全く余裕はなく、自分の力不足を痛感しました。(メンバーの誰もがもっとも厳しい沢山行だったと思います)

そういう訳で私にとって、飯豊の沢はまだまだ登れた感から遠く、大きな憧れであり目標でした。
今回は天候もメンバーにも恵まれたところが大きいですが、Lとして入渓し余裕を持って完登できて目標達成です。
ゴルジュ帯の厳しさと源頭の大きくて優しい二つの表情を併せ持つ飯豊の沢が、ますます好きになりました。

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労山(日本勤労者山岳連盟)加盟 ぶなの会の公式HPです。

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