奥利根 越後沢右俣~利根川本谷 2013/8/10-13

沢登り

メンバー:H光L、M中、S口、K田

8/10 (K田記)
7:10乗船=7:30BW-8:05小穂口沢出合-9:30シッケイガマワシ-11:00越後沢出合-11:40越後沢右俣出合-13:50中間尾根-16:00大滝下降点C1

道の駅「水紀行館」に前夜泊して、5:30am出発!タクシーで矢木沢ダムへ。
矢木沢ダムから「やぐら」の渡し船で4パーティ(計13名)が、三回に分けて乗船する段取りとなっている。
我々AパーティーとB2パーティーのM田さんは二便目。
ダムでは一便目のM浦パーティを見送り、船が帰ってくるのを待つ。

その間、水資源機構の監視人さんから様々な助言を頂きました。
「クマ」は奥利根湖を泳ぐ事もあり、近づくと船をつかんできて大変な目にあうらしい。
「マムシ」は好戦的で、とぐろを巻いて飛び掛って来るので、日当たりの良い場所は注意。
「雪渓」は予想通り。今年は残雪期以降の雨が少なく、相当量の雪渓が残っているらしい。。。
などなど。お話を伺っているうちに、渡し船が戻ってきた。

矢木沢ダムは7月末には貯水量が35%程度まで落ち込んでいたが、運良く貯水のタイミングと重なり入渓時には65%程度まで回復していた。その為、割沢と赤倉沢の中間付近までは行くことができた。
ここでM田さんとはお別れです。女性を一人でこんなところで置き去る事にいささか後ろ髪をひかれた。

湖脇の道を進み、小穂口沢出合に至る。ここからしばらくは河原を進み、途中から右岸の踏み跡を少し進んで、再び沢底に戻る。

やがて沢は白い冷気に包まれ、シッケイガマワシで最初のスノーブリッジが登場。
「出たなっ!」(ここに雪渓があるという事は、この先にも沢山ある事を意味するらしい。)
右岸の露岩を要所で10mロープを出して確保しながら慎重に巻く。

P8100018右下に村中さん
その後は何度かスクラムで渡渉しながら進み、11:00にC1予定地の越後沢に到着。
本日はここでマッタリと過ごす予定でしたが、そこはやる気満々のAチーム。
不要な荷物をデポして、越後沢を行けるところまで進むことにする。

二俣までは快適なゴルジュが続くが、右俣に入った瞬間にスノーブリッジが登場。ヘッドランプを出して、一人ずつ下を潜る。すぐに二つ目、三つ目が登場するが、三つ目は進めども先が見えず、途中で穴の開いていた左岸側の小沢に逃げ、左岸の藪から巻くこととする。しばし藪を漕いで、雪渓終了点で懸垂下降。
しかし、息つく間もなくすぐに次の雪渓が現れ、下を潜って通過するも、先にまたしても先の見えない長大な雪渓が現れる。
右岸からの藪漕ぎを試みようとするも、尾根越えルートで面倒そうだったので、一旦上部の越後沢中間尾根へと上がる。

この尾根はルートとしても使われることもあるが、かなり藪が濃くて結構苦労する。
尾根上の見通しが良いところから右俣を観察すると、大滝が見えた。(登れそうだ。)
しかし、その直下まで雪渓が続いている。潜るのも巻くのも厳しそうだ。
上を歩こうにも断続的に途切れていて、その都度雪渓に登り降りできるかは怪しい。
結局、ほとんど雪渓に覆われている沢筋を進む意義も感じられず、お目当ての右俣大滝までは中間尾根を進むこととし、大滝への下降点になりそうな沢筋の上でC1とする。

ここから
左を見れば、中俣の「マボロシの大滝」
右を見れば、右俣の「八百間の大滝」
C1を挟んで、二つの大滝が仲良く並んでいた。

「かっこいい!明日はアレを登るのだ。」
クライマー心をくすぐる最高のロケーション。

尾根は、暖かくて風もなく快適だった。
奥利根の深い自然に包まれながら、なんとも幸せな気持ちで奥利根の最初の夜を過ごした。

8/11 (S口記)
5:00幕場-5:30八百間の大滝取付-7:50三角雪田-8:50幕場-11:30越後沢出合-12:30ヒトマタギ-14:45滝ヶ倉沢出合先の大砂地C2

沢筋でないおかげか、中間尾根状でのビバークは思いのほか寒くなく快適に寝られた。暗いうちに起き出して、朝食を手早く済ませ荷物をまとめる。右俣大滝を登はん後に再びここに戻って来るので、不用な荷物はここにデポ。
前日のうちに目星を付けておいた沢筋を下降して行くと、眼下に右俣大滝(八百間の大滝)が見えてきた。大滝から下流側はこれまた大きな雪渓に埋まっている。H光さんの見立てでは、3段ある大滝のうち下段部分は雪渓の下に隠れているようだ。中間尾根から下りて来た我々の目の前に見える滝は中段らしい。
中段の登はんではロープを出して、M中さんがリードで登って行く。下りて来た沢筋を少し登り返し、適当なところからブッシュ帯に入り、そこでビレイ。
出だしはブッシュ帯と大滝左側に広がる岩場の間を登って行き、途中から大滝に向けて右にトラバースしていく。今回の大滝登はんでは、このトラバースが一番怖いところかも。50mロープをめいっぱい伸ばした辺りで、M中さんが落口手前のブッシュ帯にたどり着いたので、そこでピッチを切る。2人目、3人目はロープにアッセンダーを付けて続き、最後の4人目はビレイされて登る。

2013-08-11 06.43.14
ブッシュをあと少し抜けると中段を越えられる。すると、上段150mが迫力を持って眼前に現れる。
昨日、中間尾根から遠目に眺めた時は、ずいぶんと立っているように見えたけれど、こうして近くで見てみると傾斜が寝ている。落ち口下の1ピッチを除き、各自登って行く。水流の右側の乾いた岩場をどんどん登って行く。落ち口付近だけはこの先どうなっているか分からないので念のためロープを出してS口がリードする。右手のブッシュにランナーを取りながら岩を登って行ける。難しくない。

こうして大滝の登攀を終える。その先の小滝を2つほど抜けると、再び雪渓が現れる。雪渓の上を歩いて行き、適当なところから中間尾根に向けてあがっていくのだが、その前に、せっかくなのでもう少し雪渓上を歩いて上部の雪田を見に行くことにした。ずっと続く雪渓の先、荒々しい山肌の光景を眺めながらしばし休憩。
中間尾根をヤブを漕いで進み、荷物をデポしたビバーク地に戻る。前日歩いた中間尾根を戻り、中俣と右俣の出合に降り立つ。
本谷の越後沢出合に戻ったのは11時半。前日同様まだまだ時間があるので、本谷を行けるところまで進むことにした。

本谷を進んで行くとすぐに剣ヶ倉土合というゴルジュ帯に入る。その剣ヶ倉土合の序盤で、ヒトマタギが現れる。ゴルジュが狭くなっているところで、文字通り両足を広げて両岸に立つことができる。各自記念撮影する。
水量はおそらく少なめなのだろう。泳ぐようなことはなく、腰上くらいの水量の中をへつって歩く場面があった程度だ。

2013-08-11 11.11.36
剣ヶ倉土合を抜けたあとは雪渓も無く、どんどん歩いて行く。滝ヶ倉沢出合からもう少し歩くと、翌日の核心となるオイックイの少し手前で、左岸に広く平坦な大砂地が現れる。この日の行動はここまで。
大砂地のすぐ先には、再び大きな雪渓の不吉な姿が覗いており、翌日の遡行の厳しさを予感させる。
大砂地は本当に広いので、気にせず荷物をぶちまけて広げられる。タープを張って、焚き火を熾す。枯れ木は辺りにたくさんあるので、がんがん炎にくべる。S口は釣り道具を持ってきていたので、一応糸を垂れてみたけれどまったく当りは無し。魚影が無かったのでダメ元だったのだが。
今夜の食事担当は関口。焚火缶で生米から炊いて、寿司の素を混ぜるだけの簡単メニュー。M中さんが肉厚のベーコンを持ってきてくれていて、焚き火で焼いたのを皆に振る舞ってくれる。おいしい。前夜と異なり、沢筋なのでやっぱり寒かった。雪渓がすぐ近くにあるからその冷気もあるのだろう。

8/12 (M中記)
6:00幕場-9:50定吉沢出合-11:00西俣沢出合-12:40丹後沢出合-13:20大利根滝-15:20西小沢出合手前C3

4:00起床、6:00 C2出発。この日は核心の「オイックイ」の通過を予定する。地形図に記載されているものより150mばかり下流、1056標高点手前のビバークサイトのすぐ上流からすでに大きな肉厚のスノーブリッジ(SB)が架っており、真っ暗な開口部から冷気を吐き出すさまは、その先ゴルジュをともなって蛇行するオイックイの名前と相まって、なにやら伝説の大蛇と向き合っているような、全力の冒険感覚である。H光リーダーの丁寧な雪渓確認のあと、指示に従い、私達はひとりひとりその真っ暗闇のなかに走りこんだ。

すぐに二つ目のスノーブリッジが登場。先は何も見えない。ロープを出して右岸から雪渓に乗る。大きい。右岸から小沢が入った「くの字状」になっており、地形図1056標高点上流、雪渓の記載された「くの字状」箇所と思われる。小沢を引き込む右岸は南から東を向いており、日が差し込むことからランドクルフトが発達している。出口付近で、スノーボラードでの懸垂下降をおこなうが、沢床に立つ前に、奥のほうに次のスノーブリッジがあるのが見えたので、途中のテラスでピッチを切り、再度ロープを出して右岸藪へ登行。残置あり。左への屈曲をまたぐ藪漕ぎの後、懸垂下降20mで先ほど見えたSBを超える。すでに十分雪渓と格闘している感じだが、トポによるとここからがオイックイだそうである。

越後コボラ沢を越えると、逆くノ字型のスノーブリッジが登場。こちらも先が見えず水深も深そうだったので、1Pロープ→藪漕ぎ→懸垂下降の流れでパス。出口からSBの中を振り返ると廊下状の瀞場となっている。記録にある泳ぐ箇所だったようだ。さらにゴルジュは狭隘化する。

やがて本日6回目のスノーブリッジが登場。入口付近で崩れた雪が積み重なっており、いやらしい感じだが、巻くのも厳しそうだったので意を決して潜ることにする。覗いた感じでかなり先は長いと予測していたが、実際には想定の三倍ぐらいあり、通過するのに五分ぐらいの時間を要した。メンバー間の間隔は、S口90秒、K田60秒、M中90秒で先行者のあとに続く。間隔を開けるといっても、ルンゼを引き込む長大な屈曲したスノーブリッジの中ではヘッデンも認識できないとなるとパニックになる恐れがあり、ギリギリ先行者の光を追いながらの遡行となる。地形図的には上北沢を過ぎた直後からの複数のSBが全て連結している感じで、中越後沢をまたいで全長約300mといったところ。正直生きた心地がしなかったが、わずかな外光が隙間から差し込んでくる暗闇の中を抜けるのは、とても神秘的な体験だった。

2013-08-12 09.16.03
このあと二つのSBを潜ってオイックイ終了。定吉沢出合で小休止。この先の狭いゴルジュを抜けると、再び雪渓が出現する。一つSBを潜った後、本日十個目の長い雪渓の上を歩き、続く長めの雪渓を左岸藪から巻く。1223標高点下部のあたり、西俣沢を越えた箇所は15m魚止滝の巻きポイントとなるが、その直前にもスノーブリッジがあったので滝から50mほど手前のリッジから右岸を巻く。滝部分は越えたものの、谷あいは雪渓が続いており、先の雪渓も含めて一気に三つのスノーブリッジを捲くことにして、滝の落口を西に屈曲していく沢床から30mぐらいのところにあるバンド帯をつたっていく。ここは50mロープ1本だと懸垂箇所選定がシビアで、やむなく出口付近のSBに開いた穴を通過して沢床へ下りる。

2013-08-12 11.51.45
崩れた雪渓を抜けると強い流れの5m滝。20m補助ロープで肩絡み確保しながら越えると、またしてもスノーブリッジが口を空けて待ち構えている。100m以上ありそう。周りは樹木高いゴルジュ。再び意を決して潜るが、内部は奥に行くに従って広くなり、突き当りは左右にわかれているように見えた。右出口は釜のある小滝。暗闇のなかで直瀑と滝壺に光が差し込み、神秘の聖堂にた佇むよう。我に返り、焦って光の差し込む左に見える側壁の空間に一旦避難集合。周りを見渡すと左壁に残置ロープがぶら下がっており利用。すぐに威圧的なヒョングリの滝。一瞬側壁を登って上部のSBの穴から抜けようと思ったが、ヒョングリの右壁を登ると、暗闇の先に光が見えた。その光を頼りに、やけに天井の低い雪渓を、さらに腰を低くして再び潜って抜ける。

雪渓潜りのみならず、途中で小滝の登攀などもあって、かなりシビれるポイントだった。真の核心と言ってもよいだろう。気が動転したのか、方向を見失いかけた者に声をかけて確かめたりもした。抜けた後は小沢を登ってこの雪渓の上に出る。丹後沢との分岐を経由して3mCS滝手前まで延々とこの雪渓は続いていた。16,17個めのスノーブリッジを潜ると大利根滝20mが登場。右壁が階段状になっており、快適に登れる。

P8120159
ハト平の平坦地は残雪で覆われていたため遡行を続ける。すぐに出てくる雪渓の上を歩き、深沢出合で藪に入って懸垂下降で次の雪渓上に降りる。そこから狭いゴルジュとなるが、急に水が濁りだす。先へ進むと、やはり崩壊中の雪渓がギッシリとゴルジュ内に詰まっている。この時点でスノーブリッジの数を数えるのはやめた。氷水に浸ったり、雪渓と壁のわずかな隙間を抜けたりと、悪戦苦闘しながらなんとかゴルジュ帯を抜ける。
西小沢出合付近の平坦地も残雪が敷き詰められていたので、5m滝上の右岸のウドの散在する薄い藪を刈り払いして幕場とする。ここが佐市平だろうか。苦労して生木の焚火を作り、濡れた装備を一生懸命乾かして、奥利根最後の夜を過ごした。

8/13 (H光記)
6:00幕場-10:10深山滝-11:15赤沢滝-12:40稜線-12:50大水上山-13:10利根川水源の碑-13:40丹後山小屋-16:00林道-16:45十字峡小屋

4:00起床、6:00出発。朝一のゴルジュ帯はやっぱり雪渓がビッシリ。適宜、潜ったり、藪から巻いて懸垂下降で下りたりして抜ける。しばらくすると雪渓が消えて、快適な小滝群が始まる。これでようやく雪渓とおさらばかと思いきや、人参滝手前でまたしても巨大な雪渓。この辺になると水流が少なく、下を潜れなくなってくるので、やむなく雪渓上に乗ろうとするが、取りつこうとすると雪渓が崩壊して冷や汗もの。仕方がないので、手前の藪からロープ3P→藪漕ぎ→懸垂下降で巻く
結局、人参滝は完全に雪の下に埋まっていた。続く深山滝20mも、上部が少し見えているのみ。ラントクルフトが深く、取り付くのは危険な為、左岸の藪に入って1P→懸垂下降で巻く。

P8130205赤沢滝、最後はシャワー。廣光さん
その後も断続的に雪渓が続き、登っては降りてを繰り返す。赤沢滝20mのみしっかり露出していたので、ロープ1Pで流芯を爽快に突破する。水上滝は落ち口のみ見えていたので、左から補助ロープを使って慎重に落ち口へトラバースする。この後も雪渓が途切れることなく、結局稜線直下の三角雪田まで続いていた。稜線直下で12時の無線定時更新。これまで一度も他パーティと繋がらなかったが、この時初めてH部パーティと連絡が取れた。あちらも無事に小穂口沢を抜けたとのことで、今晩一緒に打ち上げする約束をする。

12:40稜線到着。荷物を置いて、まずは空身で大水上山へ。越後方面がガスって見えなかったが、雪渓の詰まった利根川源流と中ノ俣の展望は素晴らしい。再び荷物の場所に戻り、今度は利根川水源の碑へ。ここで沢装備を解除して記念撮影。後は下山するのみである。下山中、7~8合目付近で携帯の電波が入ったので、五十沢温泉に連絡して送迎のバスをお願いする。

16:45十字峡小屋到着。小屋でA久パーティの書置きを見た後、我々の書置きを残す。17:30に送迎バスが到着。服部パーティはまだ下山してきてなかったので、一足先に温泉へ向かう。宿で水資源機構の方に下山連絡。温泉に入って、近くの居酒屋で打ち上げを始める。

20:30頃、ようやく連絡が入り、H部パーティが到着。稜線の藪漕ぎが結構大変で、下山時間が遅くなったとのこと。盛大に打ち上げを行い、翌朝バスと電車でお盆の家族連れで賑わう道の駅水紀行館に戻り、帰京した。

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