■メンバー
L K岡T志、N島S子、K池M美

■タイム
10 月8 日
黒部ダム7:20~大ヘツリ中央ルンゼ出合9:55~F1上11:30~F6横14:20~F12 下20:00

10 月9 日
6:10 発~奥壁終了点14:00~南尾根P0・P1間コル16:10~別山南峰右ルンゼ途中19:30

10 月10 日
7:00 発~内蔵助谷出合9:10~黒部ダム10:30

この数年、ほぼ固定メンバーで、秋に黒部別山の谷をトレースし続けている。
(06 年中のガビン沢、07 年大タテガビン沢、08 年別山谷左俣敗退、09 年別山谷左俣R3)
今年は雨天中止した昨2010 年のリベンジで、大ヘツリ中央ルンゼにトライした。
文中Fナンバーは『黒部別山』(黒部の衆編著,1986)に準拠。

8日(晴れのち曇り)
9月末から10 月初めの台風19 号の豪雨に加え、10 月5日の長野北部地震などの影響で、十字峡手前などで土砂崩れが発生し、下ノ廊下は通行止めとなっている。
前日も落石による死者が出た。とりあえずダムから下り出すが、あちこちに落石や崩壊の跡があり、本流には見たことのないダム湖が形成されている。
敗退が頭をよぎるが、とにかく出合まで進む。

しかし内蔵助谷出合以降、通過した南東壁沢や大タテガビン沢などは安定しているように見え、大ヘツリの各ルンゼも新しい落石は顕著でなかった。行けそうだ。
ロープを結び、出合のF1を左のルンゼ状から越える(K岡)。
久しぶりの本チャンリードでギクシャクして体が動かない。
滝上で谷はいったん開けてスラブ滝がS字状に連続するF4・100mとなる。
傾斜が緩くスタンスも豊富で、ロープなしでジグザクに登る。
しかし、かなりの水量で、この後のF5以降は水線近くを登る気になれず、右の藪っぽいスラブをスタカットで登り出し、以後、谷を離れて左岸を進んでいく。

ときどき谷を覗きこんでみるが、チョックストンのF6をはじめ、みな完全な滝になっており、まとめて巻いた。
リッジをたどり、大ヘツリ右ルンゼへの略奪点付近を越え、小ルンゼを横断。
10 ㍍ほどのF10 もシャワークライミングになりそうなので、高巻いてF11 の下で本流に戻った。
F5 以降ここまで、S子さんとK岡のスタカットで7ピッチ、かなり時間がかかっている。

40 ㍍F11 は、右のスラブ状フェースを45 ㍍登り(K岡)、ブッシュでビレイ。
トラバースして本流に戻ろうとする(N島)が、S子さんをして側壁が立っていて薮も薄く悪いという。
既に日は落ちて暗く、足下が見えないため、一つ一つの行動に時間がかかる。
S子さんが再度懸垂で降りて、F11 下の取り付き付近を偵察してくれるが、傾斜していて幕営適地はない。
覚悟を決め、ヘッドランプを付けてもう一ピッチ急な薮漕ぎをする(K岡)。

直上の後トラバースして、水音が大きくなり、谷が近くなったと思われる地点から懸垂。
何とかF12 下のゴルジュの中に降り立つことができた。
今日は、ここに泊るしかない。狭い平坦地を整地してツェルトを張る。水には困らないのが幸い。

9日(晴れ)
泊り場のゴルジュの上には、大きなチョックストンが威圧的に乗っていた。
中央ルンゼ最難とされるF12 であるが、やはり水が流れている。
登れたとしてもシャワーでずぶ濡れになるので、これも巻くことにした。

右岸の急で濃いブッシュのルンゼを登り、右にトラバースして開けた谷に戻ると、紅葉の中に2段の奥壁を望むことができる。小滝群を越えて、奥壁1段目に取り付く。
壁の左端に水の流れるルンゼがあるが、その右の濡れたスラブにロープを1ピッチ延ばし(K岡)、いったん緩くなった谷をしばらく歩くと2段目の壁。真ん中のルンゼ沿いのラインを登る。
スラブ1ピッチ(K岡)の後、ルンゼに入る。
濡れた溝の中のオポジションのクライミングが続き、細かく3ピッチ(いずれもN島)に切る。
最終ピッチの段差がワンポイントながら核心(+)で、S子さんが空身で突破。
ホールドは濡れていて手が冷たい。荷上げは落石も怖いので、S子さんが登り返す。ご苦労様でした。

さらにボロボロのルンゼから右手の藪スラブへ乗り込んで登っていく(K岡)と、傾斜が落ちて樹林帯となる。
ここでロープをしまい、藪漕ぎに突入。かなり密なネマガリダケでなかなか進まない。
南尾根の稜線に立ったときには16 時を回っていた。
こんどは反対側の南峰右ルンゼに向かって、ネマガリダケの急斜面を滑るように下り、ギャップで懸垂2ピッチ、ガラガラのルンゼに降り立つ。
最近落ちて転がったのであろう、不安定で角の尖った岩がゴロゴロしている。

支流ルンゼや周辺の斜面は、草や灌木が下に向かってペッタリ寝た姿になっている。
大水が流れた跡がありありで、これまで見たことのない風景だ。
次の本流の大きな段差は、右の支尾根に乗って西側のルンゼに降りる。しかしすでにヘッド
ランプの行動。下降地点がはっきり確認できず、懸垂も2ピッチになってしまう。あとはガラ場を歩いていく。
谷がやや広まったあたりで、気休めに小尾根状地形を選んで草を刈り整地して泊まる。

10 日(晴れ)
下部連瀑帯を懸垂4ピッチで内蔵助谷に合流、ブナハリタケなどを採りながら、水平道をダムまでのんびり歩いた。

■所感
● 明るいスラブで構成される南側の大タテガビン沢と比べ、大ヘツリ中央ルンゼは渋く、難しい印象を受けた。
下部では谷が狭く、奥壁も見た目ほどはスケールがない。
とくに今回は、水量豊富で藪漕ぎが多くなったこともあり、沢登りの趣であった。
巻いてしまったF12 前後の滝群を直登していけば、難度はより高いだろう。

● 二日連続の残業は、反省点。特に初日、「怖い」と思った。
見えない、というのは、非常に大きな制約である、と実感した。
雑なロープ操作をする、ルートの判断を誤る、緊張が続かなくなる、等、即全て大きな事故につながる。
そもそも一日の行動が伸びて、残業になっているのだから、疲れも溜まっている。
特に中高年クライマーは伸びしろが無く(少なく?)、昨日できたことが今日できない可能性だってある。

● 靴はアクアステルスとクライミングシューズを併用した。
履いている靴によって、ラインが変わってしまうので、選択が難しい。
道具そのもの以上に気持ちの問題も大きいだろう。
カムはキャメロット各種をそれなりに使用。ハーケンは薄刃中心に必須。

● かつて黒部の主の一人と言われたIさんに、ただただ連れられて5人パーティーで登った。
今回、自分たちの力で登ろうと再トレースした。
しかし、3人パーティーにもかかわらず、初日の泊り場は前回と全く一緒、F12 が登れなかったのも同じ、南尾根に出た時間は前回より遅い、等々、I さんの力量に改めて感じ入った。
と同時に、ミスを少なくしてもっと早く行動できなければいけないことを痛感。

● トップはK岡とS子さん二人で交替して行った。
別山の様な山は、ルーファイ・ライン取り含め、独特の難しさがある。
K池さんは、技術的には十分で度胸もある。
後は広い状況判断、リスク評価、実践的なロープ操作などを意識しつつ、経験を積んで下さい。

● 最難のピッチを初め、懸垂地点手前でのトップをS子さんにお願いしたのは、パーティー行動と実績の面からは当然とは言え、メンバー構成から考えれば矛盾である。
K岡は、来年こそ精進してフリーの能力を少しでも上げ、山行日数を増やしたい。
そして、また黒部別山に行きたいと思う。

● 同行のお二人に心から感謝します。