谷川連峰 幽ノ沢V字状岩壁左ルート 2016/6/4

アルパイン(夏)

メンバー:H口L、N田(会員外)

6/4(土曜)晴れのち曇り

ベースプラザ 03:40 出発
一ノ倉沢出合 04:25 着
幽ノ沢出合 04:55 発
カールボーテン取付 08:00 発
(ここから登攀開始、要のテラスまで5ピッチ)
要のテラス 12:00 着 (右ルートと左ルートの分岐点)
左ルート登攀終了 15:05 
堅炭尾根 17:10 着
芝倉沢出合 19:05 通過
ベースプラザ 21:40 着

“右(ルート)に比べ左ルートは難しいフリークライミングと人口がミックスした上級者向きのラインだ。・・・”、

廣川健太郎のチャレンジ!アルパインクライミング、V字状岩壁左ルートの紹介の冒頭に記載されている、、、
実は、この一句で心が折れて、自信がなくなり、挑戦でずじまいだった。
インターネットでWeb検索しても、非常に登攀記録の数が乏しい。
特に2010年以降の登攀記録はほぼ皆無ではなかろうか。

核心ピッチは濡れていることが多く、写真でも黒光りしている。
核心ピッチを人口登攀A1で処理するのが一般的のようですが、フリーで突破したい!!
人口登攀ルートをフリークライミングで突破するアルパインクライミングのスタイルがわたし自身のこだわりであり、目標でもあり、夢でもある。
その第一歩として、V字状岩壁の左ルートを目標に定めた。

V字状岩壁の右ルートは過去2回登攀しているが、都度、V字状岩壁の拡大写真を撮影し、今回は私自身の山行記録(記憶?)、ガイドブック、僅かなWeb上の山行記録と私自身が撮影したV字状岩壁の拡大写真を念入りに調査した。

左ルートの核心ピッチまでは要のテラスから左ルートを忠実に辿ると3ピッチであるがどうも、右ルートに入って途中で左へとトラバース気味に昇れば左ルートの核心ピッチのテラスにたどり着けるようである、現地の状況を見て判断することとした。

DSCN0389_R

今回の左ルート挑戦にあたっては、

(1)核心ピッチは濡れている程度をみて、突っ込むか、断念して右ルートに切り替えるか、あるいは引き返すのか判断する。

(2)核心ピッチはひどく濡れていなければ、挑戦する。

(3)要のテラスまでの状況に応じて、右ルートに入って途中から左ルートの核心手前に入る。

と、決めた。

今年の谷川連峰は冠雪であったので、カールボーテンまでのアプローチを警戒した。
6月上旬であれば例年通りならば、幽ノ沢出合から雪渓上を登ることになるが・・・。

登山指導センターに確認すると5月30日現在で一ノ倉沢の雪渓は7月中旬の状況とのこと。
残念、幽ノ沢二俣からカールボーテンまでは雪渓があるだろうが、二俣手前は雪渓がズタズタかもしれないので、左岸の展望台を昇り高巻きし、二俣へ懸垂下降することを覚悟した。

また、二俣からの雪渓の登りや、下山の芝倉沢の雪渓下降もコンティニュアンスビレイを使うかもしれない、ということで、入山前にコンティニュアンスビレイをおさらいした(久しぶりです!)。

以上、事前にできる準備・調査は万全の状態か、後は現地の状況から適切に判断するだけ。
こうして、クリーンハイクの前日に決行することとした。

DSCN0385_R

ヘッドランプを付けてベースプラザを出発、一ノ倉沢出合に着いて、雪渓の少なさに驚く。
幽ノ沢の出合は雪渓が全くない。どこから雪渓が現れて来るだろうか?、恐る恐る突っ込む。

展望台が迫ってきたが雪渓はなし、ナメ床の昇りを楽しむ?、怖くて1個所ザイル出しました!。

そして、展望台の尾根を大きく右回りにカーブしたところで、ズタズタの雪渓が!
一気に緊張してきた。しばらくは左岸よりに雪渓と岩との境を慎重に登る。
アイゼン付けずに突破すると二俣につく。

驚いた!!。この先、右俣も左俣も雪渓は全くない。雪渓は消滅してしまったのである。

水量少な目の沢登りか?、1個所だけ、少し高さのある滝でザイルを出す、クライミングⅢ級程度か。
無風快晴!、雪渓のないカールボーテンは初めて。

DSCN0398_R

本日、幽ノ沢右俣は私たちと中央壁の先行パーティーの、2パーティーだけ、V字状岩壁をまたも貸し切りです。

ザイルは経験上50mではギリギリのピッチあるので、ダブル60m2本で。
カールボーテンから登攀開始です。

【1ピッチ目】
55m。中間支点は僅か。カムを使います。

【2ピッチ目】
ここはトラバースのビレイ点まで延ばしたかったが、あと5mロープが足りず、カムで支点構築。

【3ピッチ目】
5mのピッチ、超面倒くさい。

【4ピッチ目】
右俣リンネをトラバース、おー、真新しいハーケンがあるぞー!
なんて心強いんだ。安心して通過できる!。さらにカムを使って補強!
右俣リンネを跨ぎ、上のテラスに出る。
V字状岩壁を観察する。左ルートの核心ピッチが良く見える!
水路のように黒光しているが、乾いているようにみえる、フリーで突破できるかもしれない、期待する。

【5ピッチ目】
50mでギリギリ。要のテラスまで。このピッチは結構悪いんです!
出だしは少し降りて、右上にトラバースV字状岩壁の真ん中の膨らみの左寄りをルンゼに接するように登る。

ルートファイディングが難し、中間支点が少なくて、また、所々岩から岩清水が染み出ている。N田さんリードありがとう!
頑張りました。要のテラスのビレイ点は見つけにくい!

要のテラスと思えるところに支点なく、もう少し上の、どちらかと言えば、右ルートを登攀するのに都合の良いところにあると思う。
要のテラスからから左ルートと右ルートの分岐であるが、左ルートは難しいトラバースか。

ここで、時間をみる。12時である、時間に余裕がないこと、当ピッチで表面が黒っぽい岩は水が染み出て濡れているので、左ルートは難しいと判断。

左ルートの核心ピッチの取付きテラスまで行って観察して右ルート戻りに右ルートを登攀しようと心が傾く。

DSCN0415_R

【6ピッチ目】
55m。作戦どおり、左ルートに入らず、初めは右ルート沿いに昇り途中から左ルートへトラバース気味に左上する。左ルートの核心ピッチ手前のテラスに辿り着く。

テラスっぽいけど、頼りないハーケン1本あるのみ、長くて厚みのあるハーケンをリスに打ち込む。ガチ効き!、顎も効くかな。これで安心、懸垂下降で引き返すも、人口登攀の核心ピッチへ突っ込むも頼りになります!

上部を二人でマジマジと観察する、上部の被り部分か核心部分の急な傾斜の岩あたりが濡れているかもしれない。
でも全体的には、乾いているように思う。核心ピッチをフリーで突っ込むことを決断する。

念のためアブミを持ってきたが、使うのや~めた!、ザックの奥にしまい込む、フリーがだめならA0で!

【7ピッチ目】
50m。いよいよ、左ルートのハイライト!、人口登攀の核心ピッチです。
通常は、左上するバンドに沿って昇りハングを乗り越えるらしいが、どうみても悪い!
その右の正面の垂壁が弱点じゃないかと思えた。
廣川健太郎のチャレンジ!アルパインクライミングには正面の垂壁もA1と記載ある。

正面の垂壁を左寄りに昇って後はその場の判断で突っ込むこととする。
えーと、N田さん、ちょっと傾斜がきついので、首が疲れるかもしれないけど、ビレイよろしくね。

「行きまーす」、アルパインヌンチャク11本、フリー用ヌンチャク6本、カムは#2以下7本、もちろん、ハーケン・ハンマー全てぶら下げ、チョークバックに掌を突っ込み、たっぷりチョークを付けてからテラスを離陸する。

3点支持を確実に、でも自然と対角線上に軸足でない足を切って2点支持の振りのムーブが起こりだす、、、フリークライミングだ!

人口登攀のピッチですから、頼りになるかわからないけどハーケンが次々と出てきます、ですから確実にヌンチャクを掛けて前進する。
過去の幽ノ沢の登攀でこれほどまでにハーケンが打ち込んであるピッチは初めてかな。

途中、足下を見たら、ビビってしまい、手足が少し震えだす。
カールボーテンから200m以上の高度差あるのだろうか?、こんなところでフリークライミングするんかな、と思いながら、登りだす。

早く突破しないと、早くレストできる安全地帯よ、出てこい。
ハングにぶつかる。この辺り、岩が濡れていて、水滴が落ちて来る。

ここで、右横をみるとなんと、リングボルトのビレイ点を発見。
期待通りでした、2本足でしっかり立て、片腕を交互にレストできる。

ここでピッチを切るか迷ったが、狭いビレイ点で支点も信頼できるのか不安であること、ザイルもまだ半分以上残っているので、突っ込むこととする。

実はここから先2m程、傾斜が強くみえる、まだ先に核心があるかもしれない。
N田さんに伝えてから、また登りだす。垂壁を越えてから左のバンド沿いに上がると登攀終了。

人口登攀せずにフリーで突破、成功です。ザックを残置せず背負ったままでなんとか。
通常は濡れていることが多く、岩肌の色を見れば頷ける。今回は運が良かったと思う。
恐らくフリーで突破できる良好な状況だったのでしょう。

DSCN0425_R

何に感謝したらよいのかわかりませんが、取りあえず握手する。
グレードですが5.9程度です。でも全体的に濡れていると、人口登攀が確実かもです。
人口登攀のピッチですからハーケンがたくさんでした。

この先は、毎度のことです、ブヨに刺されながら堅炭尾根までだらだらと。
登攀終了後も引き続きザイルを3ピッチ出しました。2ピッチ目から登山靴に履き替え。
途中から笹ヤブに突っ込み、踏み跡に合流。

堅炭尾根からの下山ですが、芝倉沢も上部は雪渓がなく、ひたすら一般道を下りました。
芝倉沢出合の手前400m位から雪渓が残っていて、結構、厚みの薄い部分もありましたが、無事に林道に着きました。この先、ヘッドランプのお世話になります、ベースプラザへ夜道を歩く。

【最後に感想】

3月の雪上訓練&雪稜山行で、滑落し肋骨5本を骨折、完治?してから初めての本番の登攀でしたが、成功して何よりです。
4月下旬からリハビリ山行を開始、GWから外岩フリーを再開、常に共に行動し付き合いくださいました、当登攀の相方である、N田さんに感謝です。
支えて下さいました皆さまに感謝です。

それにしても、滑落事故以前と比べ、おもいっきりというか、雑というか、一か八かで突っ込むというか、今回のアルパインにおいては、そんなクライミングの傾向がなくなりました。ゲレンデのフリークライミングとは環境が異なりますので。

滑落事故は緊張感を持てず勢い任せの雑なクライミングをしたことによると私自身を分析した。3点支持を確実に、要所要所で自分に言い聞かす。
より慎重になったかもしれません。また緊張感を意識して持ち続ける。「慎重かつ大胆に」、そんなクライミングを続けたいかな。

登攀成功は岩肌があまり濡れていなかったことありますが、とにかく、事前準備・事前調査が出来ていたこともあるのかと要するに段取りよかったことが勝因かなと。。。4年前から毎年幽ノ沢に通っている経験を活かすことができました。経験は宝です。
知識ある方が、より広く全体を見渡して判断できますから。

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