穴毛谷から双六本谷下降、蓮華谷九郎衛門沢遡行 2025/08/08~10

沢登り

○メンバー:LN島R恵(記)、F河K介、T橋M子、H A弘

○タイムスタンプ

8日 0815新穂高駐車場歩き出し~1115穴毛大滝~杓子平~抜戸岳~秩父平から下降~1730頃、2250m付近幕営

9日 0530幕地~0700頃双六本谷合流~0930頃蓮華谷出合~1400黒部五郎小屋~2100北ノ俣岳避難小屋

10日 0645小屋発~0915登山口

○報告

初日

 朝7時半頃、車で平湯トンネルを出たとたん強い雨に驚き、不安になる。予報ではもう雲は去っているはずだったのだが。。。車が蒲田川に差し掛かる頃には雨もやみ、青空がのぞき始める。

 蒲田川は若干だが増水している。なんとか行けますようにと祈りながら、新穂高の駐車場を出発。

穴毛谷に入渓すると、いや、水が多い。多いぞこれは。。。

 N島はかつて秋に穴毛谷を遡行したことがあり、その時には水はちょろちょろで、足が濡れることもあまりないほどだった。が、この日は、渡渉ポイントを少し迷うくらいの水量であった。さらに不安がよぎるが、いけなくはない。行けるところまでは、行こう。

 そう思いながらさらに遡行すると、なんと目の前にでっかい雪渓が見えるではないか。

 正直、これは撤退だなと思った。豪雨の後の雪渓などごめん被る。が、やはり行けるところまでは行きたかった。この山行のために、練習を重ねてきた以上、安易に転進したくなかった。

 重い気持ちで、雪渓に接近した。すると、左手から雪渓を回避できることが判明した。おお、よかった。。。

 雪渓を超えると見事な穴毛大滝。支流を使ってそれを乗越し、杓子平へ。抜戸岳へのきつい登りをこなし、秩父平に向かう。藪を避け、美しい草地から入渓する。水量は、平水よりちょっと多めのようだ。昨日はかなり増水した様子がうかがわれる。

 本当はこの日のうちに本流まで降りたかったのだけれども、穴毛谷の水量やらなにやらで時間を食い、2250地点で幕営。増水には耐えられないが、今夜は降らないだろう。豪雨後で、薪探しにも苦労したが、なんとか焚火もできた。

2日目

0350頃起床。N島は快適に寝たのが、寒かったという声も多く、というかN島以外は皆寒かったようで、T橋さんは少しのどを痛め、顔色もよくない。気がかりだが、行けます!というので、出発する。

地形図に出ている滝は懸垂。そのほかは歩いて降りられ、本流に合流。

心配していた本流の増水だが、平水よりも3~5センチほど水位が高い。が、まあ、なんとかはなる。

水は冷たく、気温も高くないので、滝つぼや渕を巻いたりしておりていくうちに、T橋さんの足に落石が当たる。少し休憩し、痛み止めを飲んでもらう。この時は、もう、双六を登り返そうかと思ったのだが、T橋さんはやはり「行けます!」というので、ゆっくり目に進むことにする。

予想よりも少し早く、9時半少し前に蓮華谷と合流した。T橋さんも少し元気そうになり、笑顔も戻ってきて嬉しい。それに、蓮華谷は増水の影響はあまりない。

ここでようやく気が楽になる。あとは、楽しく蓮華谷から九郎右衛門沢に入る。F1の巻きは、下部でザイル、上部はお助けでクリアし、小尾根を乗っ越す。ここから、藪を漕いで尾根から下り、九郎右衛門沢に戻るルーファイが、我ながら実にうまくいって、懸垂なしで、ドンピシャで、滝の落ち口から3m先の沢床に降りることができ、N島は一人、ひそかに鼻をうごめかした。会心の巻きであった。

あとは、ひたすらきれいな楽しい沢登りだ。ぐんぐん登って、14時ちょうどに、黒部五郎小屋着。

当初はここで天気予報を見て、赤木沢に入るか、まっすぐ下山に向かうか、決めるつもりであった。

が、ここで驚いたことに、電波が入らぬ。Wi-Fi、あるって書いてなかったでしたっけ・・・??と小屋の人に聞くと、あ、今日はないんです。。。。という。ふむ。じゃ、明日の天気予報はどうか、教えてくれませんか、と聞くと「朝から雨です」。

迷いゼロ。赤木沢は諦める。笠ヶ岳の方に戻るという手もありえたが、雨の中、稜線でタープを張る選択肢は検討の余地もなし。長時間行動を覚悟して、ここから北ノ俣岳を経由して避難小屋に逃げ込むことに決し、黒部五郎のカールを越えて、赤木岳、北ノ俣岳に向かう。

元気のよい二名に先行してもらい、N島とF河さんが後行する。北ノ俣岳付近でヘッデンになるが、月も夜景も美しかった。

が、ともかく神岡新道が悪い。もう、ハマったり滑ったりいろいろしながら、21時、ようやく避難小屋にたどり着いた。貸切であった。

3日目。

夜半から風雨が強く、小屋が少し揺れるほどである。いや、小屋に入っておいて、本当に良かった。皆、頑張ってくれて本当に良かった、と有難く思いながら、うつらうつらしていると、朝4時、びしょぬれの来訪者が2名現れた。

黒部五郎でテントを張っていたのだが、夜半に風雨となり、夜を徹してここまで歩いて逃げてきたという。お一人は手がぶるぶると震えており、やばそうだ。もうお一人が暖かいものを飲ませ、少し落ち着かれて休んでから、出発された。
だらだらと待ったところで天候が回復する予報でもない。我々もそのあとを追って出る。

雨の中、タクシーを呼ぶために電波が入らんか、入らんか、と、ずっと携帯を見ながら歩いていたのだが、時折入るのだが弱くてつながらない。そうこうするうちに登山口についた。それでも電波が入らんので、しかたなく、有峰有料道路のゲートまで10分ほど歩き、T橋さんに女子力を発揮してもらって、ゲート番のおじいさんに頼み込み、タクシーを呼んでもらう。我々4人ともつながらんのに、おじいさんの携帯だけ、電波が入るのはなぜだ。。。。

30分ほど待って、タクシーに乗り込み、新穂高へ。双六川は増水している。新穂高に着いて蒲田川を見てみたら、川面は白濁して波立っており、入渓など論外であった。

我々の、2025年沢合宿は終わった。天気の合間をついて、なんとか、無事に、遡行できた。穴毛谷を使って、双六本谷に、上部から入渓する、という我々の計画は、結果的に、増水に最も強い案だったのだ。



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