L岡田、会員外2名

2月8日(日)
朝5時半に起きて朝食を取り、家を6時少し前に家を出てる。途中のディリーで昼食を買い、目的の中部電力池の又発電所取水口には7時半頃に到着。国道158号線から取水口まで4km程の林道は期待通りしっかり除雪がされていて特に問題無く車で入山できた。

除雪してあったのは取水口200m程手前の橋の前までだったがここまで来れれば大勢に影響は無い。このあたりの積雪は1.5m程で例年よりもかなり多い。身支度をしてスノーシューを履き8時に出発。

予定通りだ。車から橋を渡り取水口に向かう道はおそらく前日山に入ったであろうスノーシューのトレースがあり、その跡を辿って林道に沿って谷の奥に向かう。昨日は天気が良くて平湯でも0度を上回る陽気だったが、この日も曇っているとはいえ暖かくて、さほど傾斜の無い林道を歩いているだけでも汗がでる。

車から時間にして40分、2km程の距離で林道から離れて青垂の滝に向かう谷に入る。この谷は谷底が大岩がごろごろしているのと水流が出ているので谷底を歩けず、傾斜の急な側壁をラッセルしながら登る必用があるのでトレースが無いと結構大変なのだが、うまい具合に昨日のトレースの主は結氷した滝の写真を撮りに行ったようで、滝まで全工程トレースがあって助かる。

ともかく、出合いから500m、20分程の時間で青垂の滝下に到着。数年ぶりに見る青垂の滝は右も左も良く氷っていてどちらも登れそうだ。左の滝(雄滝)は右の滝(雌滝)よりも大きいが右の滝程傾斜は無い。青々とした右の滝(雌滝)は高さ85m。下部三分の二はほぼ垂直で迫力があるが、青々としているのは水が滴っている証拠。

P1030991
雄滝は高さ120mと言われているが本当のところは登ってみないとわからない。Kちゃんと二人でどちらを登ろうか相談し、一応本滝である左の大きい方の雄滝を登ることにし、準備をしているとN野さんが到着。遅れているT根さんは古傷の足が痛むので今日は登れないとのこと。N野さんも見学に来ただけなので、この時点でKちゃんと二人で登ることに決まる。

滝の下まで行ってロープを結んでいるとT根さんが登って来た。T根さんからスクリューを4本借り、自分の持分11本と合わせて15本を持って取り付く。普段は50mロープを使って登っているのだが、この滝は支点の状態がよくわからないので懸垂用に60mロープを用意してきた。

1ピッチ目 O田がリード。滝の中心部を登る。この部分を避けて左右の緩傾斜部分を登ることも可能だが、せっかく存在する氷瀑を余すところ無く楽しむためにあえて最長登攀距離を登る。氷は思っていたよりもしっかり氷っていて快適に登れる。35m、4級+から5級-を登り、その上の雪田状の緩傾斜部分20mを登って55mでスクリュービレィを取る。

2ピッチ目 Kちゃんリード。中央の盛り上がった70度程の傾斜の雪壁を登るが予想したよりも氷の上に積もった雪の層が厚く、クラストした厚い雪に阻まれアックスが効かず、打ったスクリューもあまり効いていない様子で苦戦。雪壁というには傾斜が強くてなかなか高さが稼げないまま小一時間かかってやっと15m程登った頃だった。
突然、Kちゃんのアックスが抜け足を中心にして体が後ろに半回転して背中を下に向けて墜落。スクリューで止るものと思ったが打ったスクリューのうち上部の二本は何の抵抗も無く抜け、そのままノーバウンドで15m下の45度程の傾斜の雪面にまで落下したKちゃんは更に雪面を10m近く滑落し、やっと効いてくれた3本目のスクリューで止った。すぐに起き上がったKちゃんはくやしそうな声を出したが、こちらはKちゃんがすぐに起き上がってくれた事で少なくとも大きな怪我はしていなさそうなので安堵のため息が漏れた。

Kちゃんは今度は中央のラインは諦め、左の側壁に近い方から登り、20m程上のハングした氷の下まで行ってからハングの下を辿って右方向にトラバース。今度はスクリューが効いているか一個一個確かめながら登る。ここから滝上部の垂直部分に向かって右の立ち木の方にトラバースするのかと思っていたら立ち木には向かわないでハング気味の中央部の氷を登って上部氷柱の基部、やや左でビレーを取る。
このピッチKちゃんはトータルで2時間以上かかってリード。ビレーを解いて後続するとハング下までは何の変哲も無い3級の氷だがハング下は深いシュルンドが口を開けていてその中に入って登る。今まで登った氷瀑の中ではこんな氷結状態の氷を見た事が無く、滝が崩落するのではないかと不安になる。ハング状から発達したカリフラワー氷を登り、Kちゃんの待つビレー点に着く。
2ピッチ目グレードは前半3級~後半4級+、30m。

下から見た時には右の立ち木に行けば快適なビレー点があるように見えたが、右の立ち木との間にはV字状の深い谷があり、その谷の底部分は滝の流水が透けて見える程薄い氷で構成されていて、溝の両側は複雑にハングした氷に囲まれとてもトラバース出来るような代物ではなく、Kちゃんがそちらに行かなかった訳がよくわかった。

3ピッチ目、再びO田リード。右のラインの方が結氷状態が良いが右へのトラバースが不可能なので水のしたたる85度程の氷柱を直上する。技術的な核心だ。
下から見たときは10m程にしか見えなかったがたっぷり20mはある。こうした氷の表面を水が流れる氷柱というのは実は中までしっかり氷っている事が多いのだがここの氷は見るからに薄く、せいぜい5cm程の厚さしか無いのでアックスを強く打ちこめない。右側の氷もしっかりしていそうで当てにならない巨大カリフラワーなので油断は出来ない。一瞬敗退の文字が頭に浮かんだが、ここまで登って敗退するのも癪に障るので気を取り直して続登。登るにつれて水しぶきでフリースのそでがどんどん濡れてくるが、逆に傾斜が落ちてきて励まされる。

「もう少しだ」最後のカリフラワーの基部に6本目のスクリューを決めて上に抜けると目の前5m程の流水左に直径20㎝程の立ち木がありそこでビレーを取る。特時計を見ると1時30分。ここまで取り付きから4時間かかった。3ピッチ目は技術的は5級だが、体が濡れることと薄い氷に神経を使うので体感グレードはそれ以上だ。

2時にKちゃんが登って来て終了。滝の上は穏やかな地形で緩やかな谷川が続きすぐ上には5m程の滑滝があるが全く氷結していなくて水が流れ落ちている。ビレーを解き、水流にあるスノーブリッジを渡って対岸に行く。
下降はそこの太さ10cm程のモミの立ち木を支点にして空中懸垂30mでビレー点にしようと思っていた右(左岸)の立ち木に達し、そこから60mの空中懸垂で取り付き上10mの斜面に達し、最後10mは左を巻いて降りて基部に降り立った。

二人で握手を交わし、ロープを畳んでデポしたザックにまで戻る。見学の二人はとうの昔に寒さに耐え切れず車に戻ってしまっていた。ここで持参のお握りを食べて空腹を満たし、あとは50分程かけて車に戻った。帰りにがけに見た雌滝はあやしい程に青く美しく輝き、Kちゃんと二人でまた来年戻ってこようと話し合った。

青垂の滝(雄滝)は登攀距離にして120m、滝自体の高さは100mと思われます。技術的なグレードは5級ですが、結氷状態が特異でグレード以上に精神的な重圧があるのが30年以上前に初登りされて以来再登がされていない理由かも知れません。特に雪のつき方によっては2ピッチ目の雪壁登りが核心になる可能性があります。

ヒヤリ・ハット:言うまでもありませんが、Kちゃんの墜落には肝を冷やしました。条件の悪いところでどうやってより確実性の高い支点を構築するか教えるべきでしたが、自分もまさかこの雪壁がこれ程悪いとは下から見ただけでは予見出来ませんでした。豪雪地帯の氷瀑は雪の少ない地方の氷瀑とは違うという事です。
(O田)