M藤です。去年から狙っていた1ルンゼ、何とか完登出来ました。
いまの実力では、1ピッチ目はめいいっぱいでした。まだまだ力不足です。
もう少し気温が低ければ、1ピッチ目も締まって楽に登れたと思いますが。

以下、報告です。

メンバー L.M籐(記録)、N野

3/6(金)夜、相模湖駅集合。
道の駅奥飛騨温泉郷上宝泊。翌日は取付き偵察か、状況により1~2ピッチフィックスロープを張ることとする。

3/7 (土)
8:30 槍見温泉発
天気は曇り。気温が高いのが気になるが、雪は締まっている。
錫杖沢出合い近くなり、眼前に前衛壁が聳え立つ。一際目立つ1ルンゼは、垂直に氷の糸を垂らし、我々を威圧する。

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9:45 クリヤ岩屋にてテント設営。この頃から、小雪が舞う。直上するトレースを辿り1ルンゼに向う。

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岩壁基部まで来るとコールが聞こえてきた。ルンゼを見上げると、秋に偵察した時と、随分様子が違う。クライマーに目をやると見覚えがあるピッチが。ここは3ルンゼだ。
岩壁基部を左にトラバースし、1ルンゼ取り付きに到着。
出だしのルンゼは痩せた氷が細々と繋がっている。

12︰15 スタート

1ピッチ(N野→M藤リード)
N野さんリードでスタート。1本目のスクリューを決め、N野さんが岩陰に見えなくなる。順調にロープが出ていくが、突然「ガシャ!」と氷の剥がれる音に、「墜ちた!」と直感し腰を落すと同時に、N野さんが氷塊とともに転がり墜ちてきた。

墜ちたところが急傾斜の軟雪面だったこともあり、幸い怪我はなし。2本目のスクリューを入れたあと、バイルを打ったら氷ごと剥がれたとのこと。2本目のスクリューは氷ごと剥がれ、1本目で止まった。しかし、これで、痩せた氷は下部で完全に断ち切られてしまった。

左のフェイスはランナーを取れないことは、秋の偵察で確認済み。ルンゼ左横のクラックを右上し、切れた氷の上部に出る作戦とした。

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仕切り直しで、再びN野さんリードでクラックに取り付く。相変わらず、小雪が舞い、時折、スノーシャワーがルンゼを滑り落ちてくる。濡れたクラックに、アイゼンでは厳しそう。グローブを脱ぎ捨て素手で登る。N野さんは前爪をデュアルにセットしており、やり辛そう。緊張がロープを通して伝わってくる。墜落に備えダブルロープを頻繁に出入りさせる。ビレイも痺れる。時間をかけジリジリと高度を稼ぎ、ルンゼの氷上にもどる。落氷の様子から、苦戦しているのがわかる。暫し、奮闘するも、「ギブアップ」の声。ロワーダウンで降りてきたN野さんが「10年早かったですよ~。」と、笑顔でロープを差出す。「マジで…」。。

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選手交代でM藤リード。クラックを登り返す。滴る水に手が凍てつく。ルンゼの氷上に達する。ここから上部は更に氷が細い。ベルグラが岩から浮き、その上に溶けかかったスカ雪が乗っている。悪い。気温が高すぎるのだ。戻って岩壁を行く選択肢も考えたが、アイスクライミング的には、岩に逃げたことになる。

氷にアイゼンを蹴り込んでみる。「イケる」という感触が返ってきた。N野さんが墜落してまで、ここまで上げた。次はこっちの番だ。

「突っ込むんで、よろしくお願い!」N野さんに声を掛ける。

しかし、予想通り、簡単には登れない。バイルを撃ち込み、引くといとも簡単に氷は切れる。足元の氷は崩壊する。蹴らずに置いてバランスとるだけ。側壁も使いつつバランシーな登攀を強いられる。少しでも氷結の良さそうな所にスクリューを打とうとするが、スクリューは廻すことなく根元までズボッと入る。カムもハーケンも使えない。このルンゼを抜けない限り敗退はない。効かないスクリューにクリップし、雄叫び全開で攀じ登る。

上部で割れた氷の隙間にクラックを見つけ、カムを決めやっと一安心。その後も、気の抜けない登りをこなし60mいっぱい伸ばすも、氷が薄い。10mほどクライムダウンし安定した氷で、ピッチを切る。N野さんを迎えたところで14:30。このピッチに2時間以上費やす。

見上げる氷は上部まで繋がっている。残りはアイスセクションのみで抜けられそうだ。フィックス張って終了の予定であったが、明日は気温が更に上がる予定であること、ボロ氷が更に崩壊する恐れがあること、降り続く雪による雪崩の危険が高まることを考慮し、今日中に片付けるべく、登攀を継続する。

2ピッチ(N野リード)
緩傾斜を20m程上り、正面のバーチカルを左側から、抜け口がスカ氷で慎重に登る。ここは、正面のバーチカルを避け左右のラインをとることも出来る。60m伸ばし、急傾斜になる手前にピッチを切る。

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3ピッチ(M藤リード)
小さいバーチカルを超え、いよいよ立ってくる。氷質が一定ではなく、神経をつかう。左側面にまともな氷が出てきたところで、スクリュー2本+バックアップ1本でハンギングビレイ。何処でも容易にピッチを切れる氷では無い。

4ピッチ(N野リード)
ビレイ点上部の、溝状の弱点を狙う。身体がスッポリ入ってしまい、バランスが悪い。抜けたところに残置支点があり、そこで切る。フォローはザックが引っ掛かり鬱陶しい。相変わらずの微妙な氷質にバイルを何度も打ち直すが、狭いところに入り込んでいるため、強く振れない。

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5ピッチ(M藤リード)
ギア受け渡し中に、「ザー!」と、でかいチリ雪崩。耐えるが長い!更にもう一発。リード中だったらと思うと恐ろしい。既に辺りは闇に覆われ始め、ヘッデン点灯しスタート。左の岩壁とのコンタクトラインから、岩と氷をステミング。少し上がったところからスカ氷柱をトラバースし反対側へ出るがガシャ氷で悪い。少し正面に戻ってスクリューを決め、ガシャ氷を行く。足元見え辛くなり、1回、2回と足が切れる。見た目以上に悪い。

ヤバイ、腕がシビレてきた。

氷悪い、スクリュー決め辛い、チリ雪崩に耐える余力残しておかなきゃいけない、ヘッデン登攀で見え辛い。テンションする言い訳は幾らでもある。いや、無い、無い、無い!ここまで来て、最後にテンションは無い!胸元のフィフィーを掴む代わりに、思いっきり雄叫び登攀!ヘッデンの灯りに浮かびあがる終了点にクリップ。

終わった~!

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フォローのN野さんは真暗闇のなか、何と無灯火で参上。
「ヘッデンつかないんですけど」

「そ、そうすか‥」。。

流石、日本酒大好き夜型クライマー!

漆黒の氷壁を懸垂支点を見逃さぬよう、慎重に懸垂する。無灯火のN野さんが続く。4ピッチ+最後は、ほんの少しクライムダウンで取付20:20着。

(コメント)
昨年、初めて訪れた前衛壁。チリ雪崩を纏い、垂直に聳える1ルンゼに一目惚れした。秋に偵察し、冬を待った。
自分に登れるのか。雪崩にやられないか。不安な日々を過ごした。緊張から解放されたいま、「これがやりたかったんだよな。」心底そう思えるルートだった。
翌朝目覚めると、ガスの中、前衛壁からはひっきりなしに雪崩の爆裂音が響いていた。早々に敗退してきた、隣のテントのクライマーは「登ってる時間より、スノーシャワーに堪えてる時間の方が長かったですよ」。と残念がっていた。
今回は運良く登れた。本当に良かった。
(M籐)