中央アルプス 越百山-仙涯嶺-南駒ヶ岳 2023/2/24-26

積雪期登山

【メンバー】L:H口さん、Y本さん、URA(記)
2/24 7:05ゲート ~ 8:10福栃平 ~ 9:05四合目 ~ 13:15越百小屋(幕営)
2/25 6:45越百小屋 ~ 8:00越百山 ~ 10:15仙涯嶺 ~ 17:15ハートブレイクロック(幕営)
2/26 7:10出発 ~ 7:20南駒ヶ岳 ~ 13:00北沢尾根三角点 ~ 16:40南駒ヶ岳登山口 ~ 18:30ゲート

当初は3泊4日で南ア・白峰三山縦走を計画していたが、2/22-23の天気が優れないことから、出発を1日遅らせて、天気予報が南アよりも安定している中アに山域を変更。入山者も少なく、ラッセル敗退もありうる厳しい山行になる可能性も念頭において臨んだ。


■2/24(1日目)天気:曇りのち雪

7:05伊奈川ダムのゲートをくぐる。他パーティーが入山している気配はなく、私たちのパーティーが先陣となる。凍った林道を1時間ほど歩いて福栃平(越百山と南駒ヶ岳の分岐点)に着く。そこから約300mの急登を経て4合目(下のコル)に着き、遠見尾根の登りとなる。上のコルから先は踏み跡が無くなり、福栃山まで再び急な登りとなる。

積雪量もぐんぐん増えてゆく。ところどころで深雪となりラッセルも発生。ワカンを装着して少し快適となるも、傾斜が強くなると踏ん張れなくなり、アイゼンに変更。夏道は福栃山を北に巻いて越百小屋に出るのだが、どうも福栃山の頂上を南巻きにルート取りしたようである。

登山開始から6時間強で、雪に埋もれた越百小屋に到着。先に到着したY本さんとURAで冬季小屋の入口を探したが見当たらず、テントを張ることに。夕方から風雪が強くなって深夜まで降雪(2 日後の下山で登山口も2~3cmの積雪)。テントの中も寒く、水作りから就寝までガスコンロを点けっぱなしにし、1泊2日で中ガス1缶を使った。


■2/25(2日目)天気:快晴。徐々に偏西風が強まる。

5時起床。夜中から続く暴風は明け方にはおさまり、清々しい快晴である。厳しい冷え込みのなか、テントを撤収し、6:45に出発。昨日の私たちのトレースは何も残っていない。一晩で15〜20cmの積雪か。稜線の左側の樹林帯をしばらく登り、森林限界に付近で稜線に出る。越百山直下まで美しい稜線がお出迎え!南側に見事な雪庇があり、先頭を歩くH口さんはルーファイを楽しみながら越百山へ導かれる。

8:00越百山(2613.m)到着。山頂手前でアイゼンが刺さり難い氷化面があった。雪質は、越百小屋のテント場の整地で把握していた通り、表面から深さ30cm前後は硬く、その下にさらさらした軟雪が深くあるような感じだ。この先の仙涯嶺手前までは同じ雪質の傾向で、表面の硬化した積雪層が厚ければ普通に、薄ければ、ずっぽり踏み抜いて沈んでしまう、そんな登下降となる。越百山山頂からの眺望を満喫後、仙涯嶺へ約1.5kmの快適な雪山尾根歩きを楽しむ。また、越百山を振り返ると、なんて美しい稜線なんだろうと見入ってしまう。

そして、今山行の最大の難関、仙涯嶺は近づけば近づくほど険しさを感じなくなってゆく。しかし、突然、難関と直面し、相当な体力と時間を費やすことになっていく・・・

仙涯嶺の難所の入口は手前のピークを越えてから始まる。過去の山行記録から、仙涯嶺は岩峰の連なりの⻄側を巻いてトラバースするようであるが、夏道の鎖場を発見し、やはり⻄側(木曽側)に下りて巻くようであった。今朝沢ルンゼへと鎖場を下りてからの、夏道は絶壁を縫うようトラバース道であろうから、厳冬期は雪壁で埋まっていて、壁を這うように横切るしかない。H口さんがロープを出してリード。出だしの数mのトラバースは痺れ、中間支点の工作は片手はアックスを壁に刺した状態で、もう片手でアルパインヌンチャクを灌木に巻きつける、苦しい体勢を繰り返して横切る。ロープをフィックスしたら、URAは2番手でプルージックで通過し、ラストはY本さん。トラバースなのでロープを引っ張らないよう注意。

そして、この先も南駒ヶ岳へ登り返すコルまで急傾斜な雪面が広がっている。もしここで滑落したらどこまでも滑り続けるだろうと思うとなかなか前進できない。一旦、岩峰に上がってみるもやはり行き詰まり懸垂下降するはめに。遠回りでもよいから、少しでも傾斜の緩い斜面を選んで突き進んだ。体の正面を雪面に向けて、キックステップで前爪を決めて水平移動(時々左上)する。雪面の状態が時折変わるので、安心できない。雪面が浅かったり深かったり、また雪面が硬かったり柔らかくなったりするので都度、雪面の変化に順応して前進する。

今朝沢ルンゼの下降から南駒ヶ岳への登り返しのコル、すなわち仙涯嶺の核心通過に4時間かかった(コル、15:08着)。コルで大レスト。緊張状態から一時的に開放される。疲労を感じ始めるが、翌日(最終日)の道のりの⻑さを考えると、南駒ヶ岳に辿り着きたい。ここでテン泊する案も浮上したが、この先難所はないだろうとの判断で前進することとした。これまでは⻄面を登下降してきたが、東面(伊那側)を巻くようなルートとなる。すると積雪量が増え、雪質が変わった。足元は深く潜るし、当然崩れる。稜線への最後の急登で、H口さんに代わってY本さんが先頭トレースを作り、ようやく稜線にでる。

偏西風が強く冷たいが、無事に幕営地へ到着して安堵。外は夕焼けしており、美しい風景に癒される。この日はお酒も控えめに就寝した。


■2/26(3日目)天気:快晴。強い偏西風。

烈風が吹き付けるため、テントの撤収を慎重に行う。ハートブレイクロック付近は偏⻄風が吹き荒れ、ブリザードで目の前にあるはずの南駒ヶ岳も呑み込んでしまうほどの雪煙が舞う。7:10に出発し、7:21に南駒ヶ岳(2,841m)登頂。空木岳や宝剣岳など北に続く中央アルプスを一望できる。

北沢尾根に入るが、偏⻄風の強弱で立ち止まったり、前進したりの繰り返し。基本的に稜線歩きとなるが、急峻な岩峰や雪稜で突き進めなくなると今朝沢に懸垂下降し、また稜線に戻り下るというルーファイを繰り返した。また、雪庇のある痩せた雪稜を通過する区間もあって切れ立った雪面をトラバースする場面もあった。

樹林帯に入ってからも険しい雪稜が現れるが今朝沢側の斜面を下ればよい。しかし、積雪量が多く雪も緩んで足が深く沈みだし、踏み抜く頻度も増えてスピードが出ない。北沢尾根2,411m三角点に到着したのが13:05、あと5時間弱で日が暮れてしまうと焦りだした。その先2,240m付近で尾根の分岐点(登山道の方角変更点)があってルーファイに気を付けなければならないのだが、尾根から少し逸れて小さな沢に入り込んでしまった。一定間隔で赤テープが巻かれていたのだが・・・。

時間も体力をロスする。堪りかねてアイゼンにワカンも装着すると、深く潜ることが無くなり、一気にスピードアップし、南駒ヶ岳登山口に下山した。あとはひたすら林道歩き。途中で、越百山ピストンの2パーティーを追い抜く。私たちの一日遅れで3パーティーが入って、うち 2 パーティーは越百山の手前で雪面が氷化していて敗退したとのこと。そして18:30に伊奈川ダムのゲートに到着。オリオン座が綺麗に見えていた。

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