北ア 明神岳5峰中央リンネ 2023/9/17-18

アルパイン(夏)

[メンバー]

Lビッグワン、K谷(会員外)

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[行動経過(天候・タイム)]

9/17(日) 晴れ

06:00 上高地

06:50 明神池

09:15中央ルンゼ取付き

10:15 F3

10:40 F3登攀開始

12:50 カールボーデン

13:20 中央リンネ取付き

19:00 トップアウト。5峰ピーク直下ビバーク

9/18(月) 晴れ

05:30 ビバーク地

08:00 岳沢登山道

08:50 上高地

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[ルート概要・特記事項]

情報が少ない山は、ルート取りやプロテクションの選択や進退の判断等、自由な登攀を味わえるのが好きだ。

中央リンネは明神岳南端の5峰へ突き上げるルンゼとなっており、その姿は徳沢園に向かう道中も目に入ってくる。日本の岩場(下)を開くと最初に東南カンテと合わせて紹介されているが、登った話を全く聞かない。無雪期の記録は大阪アルデ山岳会のものがあり、リンネ序盤で引き返している。記録の後記には

「この中央リンネ、ボロ岩、草付、ブッシュ、落石、と日本の岩場の悪さを集めた様なルートではあるが登る価値は充分にあると思う。」

岩場の悪さを集約したルートは一体どんな登攀になるのか。若干ナーバスになりつつも中央リンネに思いを馳せた 。

5年前の年末にY田さんと東稜に登って以来のアプローチだ。

宮川のコルよりワデ宮川を詰めていく。意外とガレ場が崩れやすく歩きづらい。徐々に東南壁の迫力が増してくる。惚れ惚れする程ピラミダルな山容で美しい。我々は右側から食い込むルンゼに向かっていく。

デルタ状台地まで上がり中央ルンゼへ侵入を試みるがルンゼの淵が立っている。大人しく30m程戻り軟傾斜の箇所より沢床へ降りた。淵の岩は如何にもボロ岩であったが岩床は想像よりも硬い。探せばリスもあり途中残置が2か所見られた。

F3は扇状に開けておりハングしている。左岸側に登路求めここからロープを結んだ。

ちなみに日本の岩場では、右岸からとなっているが、とれも登れる様にはみえなかった。

1P目:35mⅢ(ビッグワン)

階段状のフェイスから右壁。初端からランナーを取りにくく緊張する。洞窟手前でピッチを切る。逆層で支点を取る場所に難儀した。ペッカーとイボイボで終了点構築。

2P目:50mⅣ-(K谷)

F3の落ち口に向かってトラバース。リードはザレをケアしながら慎重にロープを伸ばす。

#3カムが効くポイントがあり。抜け口から草付きを登る。60m伸ばすも良い支点が得られなかったので10m下のブッシュでビレイ。

3-4P目:コンテ。カールボーデンからリンネ手前まで。カールボーデンから東壁は遠目から見ていた時よりコンパクトに見える。右岩溝ルートはより溝が狭くて興味深い。

5P目:25mⅣ-(ビッグワン)

リンネに向かって草付きスラブを左上。2ヶ所垂直の草付き交じりの岩を越えていく。

6P目:60mⅣ?(K谷)

脆いルンゼ。フォローでルンゼに入るとロープが一直線に終了点まで伸びていた。ランナーは取れなかった。それもそのはずF3より脆さが明らかに増していた。登攀自体はⅣ級を越えないだろうが精神的負荷は増していく。K谷の安定感は頼もしい。終了点はハーケンとボールナッツ赤。

7P目:55mⅢ(ビッグワン)

出だしは緩傾斜なので素早くロープを伸ばす。ルンゼが狭まり再び傾斜が強まってきたあたりで残り5mコール。周りを探すがどこもテスティングの段階でいい感触を得られない。

僅かなリスに薄刃を叩き込みイボイボと合わせて支点を作るが、荷重をかけたらイボイボは抜けてしまう。フォローに終了点から3m程上がってもらいカムで支点を作り直した。

8P目:50mⅣ+(K谷)

脆いルンゼから洞窟手前から左上。チムニー基部まで。

洞窟から左上するワンポイント悪く甘い左手を騙しながら抜けた。ビレイヤーはヒュンヒュンと音を立てて落ちてくる岩をやり過ごす。

9P目:45mⅢ+(ビッグワン)

チムニーを上がり脆いバンドへ出る。進行方向全て崩しかけのジェンガみたく不安定で脆い岩場となっていた。5峰の直下がルートを通して最も脆い。右往左往して時間を食う。

直上ラインは硬そうだが浅い凹角、右上も被った脆い岩で恐ろしい。なんてこったい。

結局、最初に検討した狭い草付きバンドから一段下の岩棚へブッシュを繋いでダウントラバース。降り切った所でハーケン2枚と黒トーテムでピッチを切る。

この頃には大分日が傾いてきた。

10P目:20mⅢ(K谷)

スラブのバンドを上がり、リッジと合流した地点でピッチを切る。ヘッデンを付ける。

11P目:30mⅣ+(ビッグワン)

一旦右に迂回する形でモンキークライムして一段上の岩へ。3mトラバースするとクラックが暗闇へ伸びている。ここにきて岩が硬く安定してきた。どこまでこの露岩帯が続くか、未知数だが登るしかない。クラックに手を捻じ込み、ハイステップで一気に身体を引き上げる。

弱点のクラックラインを繋いで行き立派な灌木地帯に這い出た。

ハイマツ帯を20m程歩くと稜線へ出る。明神館や上高地の明かりが見えてほっとした。

丁度2人寝られる地形。ツェルトで屋根を作りタイベックを敷いた。

水でα米を仕込むが待っている内に眠ってしまう。やはりシュラフカバーだけでは寒く、夜中に目が覚めて安曇野の光をぼんやり眺めて時間を過ごす。相方は熟睡で何より。

翌日も爽やかな穂高の朝を満喫した。南西尾根を下りビバーク地から3:30弱で上高地へ下った。

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