【メンバー】Lみみみ、K坂
【行程】
12/24 羽田空港→旭川空港→稚内
12/25 稚内→利尻島
12/26 天気待ち
12/27 天気待ち
12/28 (利尻入山)アフトロマナイ川右岸林道入口→林道終点→東北稜末端→1003m標高点ピークC1
12/29 C1→1170m付近C2
12/30 C2→東北稜末端→林道終点→アフトロマナイ川右岸林道入口(下山)→稚内
12/31 稚内→旭川
1/1 レスト
1/2 (黒岳入山)黒岳ロープウェイ~標高1780m付近C1
1/3 C1~北稜取り付き~黒岳~C1〜黒岳ロープウェイ(下山)
1/4 観光
1/5 観光
1/6 旭川空港→成田空港
【報告】
12/23
羽田空港で前泊。
羽田空港は第三ターミナル以外は夜間閉館になるらしく、第二で寝ようとしていたら追い出された。
12/24
手荷物がデカすぎて自動受付機が使えず、有人カウンターは大混雑。もう一つの有人カウンターは空いてると聞いて探しに行くもこれがなかなか遠く、出発前から汗をかく。さらに受託手荷物のルールがよくわからず、手荷物カウンターでよくわからないまま追加料金を支払う。持込手荷物に重い物を移しておくべきだった。エアドゥは安いが案内がいろいろわかりにくい…。
そんやかんやでピーカンの旭川空港に到着。送迎車でレンタカーの店舗に移り、予約していた車を借りる。車は四駆のフィットで、チェーンはないそうだがまあ山奥には行かないので大丈夫だろう。
秀岳荘でガス缶とアルファ米を買い、ラーメンを食べてからイオンモールで食料を買い出しして稚内へ向かう。慣れない車につるつるの路面、悪天にヒヤヒヤしながら半日かけて稚内のゲストハウスに到着。ツインルームを早めに取っていたので快適だった。
12/25
12/30から31午前にかけて好天予報のため、そこに登頂〜下山日があたるよう12/28に入山する方針とした。12/26に低気圧が通過する予報のため、波の穏やかなうちに利尻島に渡って島内で天気待ちすることとし、車もフェリーに乗せていく。12/25は終日好天予報のため、稚内で少し観光とお参りをしてから午後のフェリーで利尻島へ。

鬼脇にある北のしーまで温泉に入り、沓形の梵天で蕎麦やホッケの夕食を摂る。
夜間開いている公衆トイレはないので、鴛泊のセコマで閉店間際にトイレに行きフェリーターミナルの駐車場で車中泊。
12/26
悪天のため下界で天気待ち。
朝のフェリーターミナルでパッキングし、沓形に移動してふる里食堂でホッケなどの昼食を食べる。冬の利尻島は開いている施設がほとんどないので、午後は夜になるまで図書館で時間をつぶした。夕食は鴛泊で飲食店を探したら一軒も開いてなかったのでセコマへ。
12/27
この日も天気待ち。
ミルピス商店で名物のミルピスをいただく。おまけでもらった行者ニンニクジュースが意外と美味しく衝撃的だった。昼食は島の駅でカレー。この日の夜は入山前に体力を回復するため宿をとることにする。開いている宿で一番安かった旅館雪国で素泊まりした。夕食は沓形の勿忘草で中華。
12/28
旅館のご主人が7時過ぎなら送迎可能とのことだったので、フェリーターミナルに車を置いてからアフトロマナイ川右岸の林道入口まで送っていただく。
この日は弱めの冬型だが、東面の海岸付近は穏やかだった。とはいえ15分ごとに晴れたり雪が降ったりするのが島らしい。
林道終点付近で堰堤を造っているようで、林道は数日前に重機で圧雪されており楽をさせていただいた。途中でワカンを履きつつ1時間強くらいで林道終点に到着。雪原となったアフトロマナイ川を横断して東北稜の末端に取り付く。10mほどの斜面を笹ラッセルするとすぐ尾根に乗り、膝下ラッセルでサクサク進んでいく。
少し登ると疎林になっていき、標高500mくらいでもうハイマツが現れる。少し驚いたが、弱めの冬型でもけっこうな風が当たっており納得。

その先もラッセルはさほど深くならず、予定していた1003m標高点ピークにすんなり到着。ピークの南東側は吹き溜まりとなっており風が当たらないので、急斜面の雪を整地して快適なテン場とする。ただ風下斜面はやはりかなりの雪が吹き溜まるので、テントの除雪にはそこそこ労力を使った。
12/29
1003mピークのすぐ先からナイフリッジが始まるので、日の出ごろに出発。しかし東側に遮るものがなく朝はすぐ明るくなるので、もう少し早くてもよかった。
この日も弱めの冬型。テン場はほぼ無風だったが、尾根に乗るとすぐに冷たい強風に叩かれ、ここが利尻山だと思い知らされる。

最初のナイフリッジは右から用意に巻けた。その後も次々と現れるナイフリッジを巻いたり乗ったりして越えていくのだが、出発から2時間もかからずにサングラスが凍ってしまい、サングラスを外せばまつ毛が凍るので視界がとにかく悪い。凍ったサングラスを外して数秒周囲を確認し、サングラスを着けて何歩か進むというのを繰り返してじりじりと前進する。地形や雪庇がよくわからずなかなか進まない。みみみはこの山行のために秋から人生初のコンタクトを練習して導入していたが、それがなかったら詰んでいただろう。
-10℃までしか測れないみみみの気温計はカンストしている。体感では-15℃くらいあるだろうか。風速は10m/s前後くらいだが、ずっと吹きさらしなので寒くて堪らない。標高1000m程度だが、北アルプスの稜線手前くらいの環境だ。そして湿度が高いのかあらゆるものに雪がくっついて凍りまくる。みみみの目出帽は鼻の部分に氷の塊ができ、サングラスを完全に外していたK坂のまつ毛からはでっかいつららが垂れ下がっている。
リッジ上を歩いていくと下れない岩場が出てきて、引き返して巻き直す。また現れたナイフリッジはリッジ上の雪が不安定に見え、しかも少し先でまた下りになっており行けるかわからない。リッジの左側も雪庇で見えないので、仕方なくロープを出して右巻きを試みる。
1P目はK坂から。リッジに乗った雪と藪のコンタクトラインをトラバース。灌木は豊富だが、太くても枯れて折れやすいものも混じっており、油断できない。1時間ほどかけて20mくらいしか進まず焦る。
2Pはみみみ。リッジ上は悪そうに見え、右側も岩壁になっている。どうしたものかとよく見てみると、右の岩壁の下に雪の斜面があるように見えたので、藪雪壁をクライムダウンして様子を見に行く。岩壁の下まで来ると、雪の斜面を10mほどトラバースすれば安全な藪に辿り着けそうだったので、灌木にスリングを巻いてからトラバースにかかる。しかし5mほどの雪の斜面の下は岩壁になっているようで、上からは虚空しか見えない。斜面の雪つきも悪く、岩やら浮き石やらにアイゼンの爪先だけが当たって恐ろしい。頭上の岩壁にクラックやリスはなかったが、アックスで探ると土のように軟らかい部分があったので、祈りながらイボイボを打ち込む。半分ほどで止まったイボイボに仕方なくスリングをタイオフし、覚悟を決める。慎重に足を送っていくと3mほど進んだところで安定した雪になり、そのままトラバースして藪に入り、リッジ付近まで上がって灌木でビレイ。このピッチも1時間ほどかかってしまい身体の冷えはピークに達する。
そこからは容易な歩きだったが、雪庇や雪崩がよくわからないので一応スタカットで2Pほど進む。部分的に尾根の左側に出ると風から開放され、ようやく一時の安らぎを得られた。
そこからまた吹きさらしをしばらくコンテで進んでからロープを畳む。15時すぎくらいに左斜面に泊まれそうな場所を見つけ、整地して幕営する。この時期の道北は日が短く、東面ということもあり15時半にはヘッデンが必要になった。
この日は1200mまで進んで早めに終わるつもりだったのだが、終日がんばっても1170mまでしか進めなかった。顔面の防寒が甘かったK坂は頬に軽い凍傷を負っている。
翌30日の天気はよさそうだが、12/31の天候悪化の予報が早まっており、進むとしたら30日中に長官小屋に辿り着かないと窮地に追い込まれる可能性が高い。途中までタイムリミットを設定して進んだところで、スカ雪での苦戦が予想される「門」はかなり先にあるし、これまでの積雪の様子から、山頂直下の雪壁の雪崩リスクもかなり高いように思われた。せっかくここまで来たが、翌日から下山することを決断した。
12/30
低温多湿と雪の影響で、テントのジッパーが凍りまくり開閉に難儀する。外に出ると、この日も大量の雪が吹き溜まっていた。
テン場を離れ尾根に乗ると、今日は朝からほぼ無風で空もいたって穏やか。時々青空も覗く薄曇りの下、昨日の苦労が嘘のようにさくさくと下っていく。

巻きで難儀した箇所も、上から見ると尾根上を歩けそうにみえた。一応ロープは出したが、結局雪庇も大して出ておらず普通に歩いて突破することができた。昨日の苦労は本当に何だったのか…。上から見たというのもあるが、視界の程度でルーファイの難しさが全く違うことがよくわかった。

その先はロープを出すところもなく、多少ラッセルがある程度でずんずん進んでいけた。途中雲が取れて山頂が見える場面もあり、神々しく煌めく利尻山を何度も振り返りながら歩いていく。こうして、1日半くらいかかるかと思っていた下山は昼下がりには完了してしまった。



ちょうどいい時間にバスがあるので、バス停を探して少し歩く。しかしバス停らしきものはなく、自由乗降区間なので歩く必要は特になかった。
バスに揺られてフェリーターミナルに移動し、車で利尻富士温泉に行ってから夕方のフェリーで稚内に戻る。稚内ではまた同じ宿に泊まり、唯一開いていたインドカレー屋で腹を満たした。
12/31
旭川へ移動。
夜は他のぶなパーティの泊まっているペンションに遊びに行き、ジンギスカンをいただいた。寒いので安いホテルで宿泊。
1/1
天気も微妙だし疲れているので旭川で各自観光がてらレスト。
飲食店がほとんど空いていないので夜はイオンのサイゼ。
1/2
寒気の若干緩むタイミングに黒岳北稜を狙うことにする。
アプローチは手軽にロープウェイから。ロープウェイは外国人を中心としたスキーヤーや観光客で混雑していたが、小雪の舞う中リフトトップから上に上がっていく人はほとんどいない。スキーのトレースはあったので、ありがたく利用させていただき標高を上げていく。
最後に少しラッセルしてから、1780m付近の平らで風の当たらなそうな場所に幕営。
時間があるので、軽装でアプローチの偵察に向かう。傾斜の緩いところから尾根の北西面に入ると、刺すような冷たい風が吹きつけてくる。K坂の凍傷もあるし、この寒さではほぼ無風くらいでないと登攀は無理そうだ。灌木を縫って沢の横断箇所入口まで確認してからテン場へ。

夜は分厚いシュラフを使ったが、それでもかなり寒くて何度も目が覚めた。
1/3
朝起きると、昨日は揺れなかったテントが風で少し揺れている。これでは登攀は無理だろう。
せっかくなので、歩きで黒岳山頂だけ踏みに行くことにする。
だらだら準備してゆっくり出発。かなり着込んでいたが、膝下ラッセルをしていても寒い。特に手の冷えが尋常でないので、オーバーグローブの上にさらに保温剤入りオーバーミトンを装着したら我慢できるくらいになった。みみみは足も寒かったが、K坂は平気だという。二人ともシングルブーツだが、保温材のへたり具合の差かもしれない。

特に難しいところはなく、山頂の祠に初詣をして下山。
黒岳の湯で温まり、旭川に戻ってからラーメン村で昼食。夜は豪華にチェーン寿司店。疲れたので残りの日程はビジネスホテルに連泊してうだうだ過ごすことに。
1/4
旭川で各自観光。
夜はジンギスカン。
1/5
旭川で各自観光。
夜はスープカレーからのビアバー。
1/6
ジェットスターで旭川空港から成田空港へ。
○メモ
<全体>
・北海道の空港は旭川が一番欠航しにくく、転進もしやすい。レンタカーを借りると高いけど楽。
<利尻山>
・冬の利尻島はほとんどの店が開いていない。Googleマップで営業中となっていても大体閉まっている。飲食店は沓形の町が一番開いている。元日はコンビニすらやっていないらしいので注意。
・冬の利尻山はやはり風対策が重要そう。メガネ使用者はがんばってコンタクト等に変えよう。鼻を覆ったまま鼻孔と口を開放できる目出帽も絶対にあったほうがいい。
・防寒着は厳冬期北アルプス縦走の装備+1レイヤーくらいを用意した。中腹までしか登っていないので妥当だったかどうかは不明だが、持っていたもの自体は悪くなかった気がする。ただ一番寒かった12/29は衣類調整のタイミングを逃して着込み不足のまま長時間行動していたので、着込むタイミングをシビアに見極める判断力が必要。
・手袋は普段のものにファイントラックのポリゴンミトン(オーバーグローブの上から装着できる保温材入りミトン)を追加。利尻では手はそこまで冷えなかったので使わなかった。
・テント入口の凍結にも注意が必要。
<黒岳>
・とんでもなく寒い。厳冬期の登攀はかなり寒気が弱く天気のいい時でないと、一般人には相当厳しい。