剱岳 剣尾根 2014/7/25-27

アルパイン(夏)

メンバー:T城L、M藤、K谷、N野

ルート:計画/剣尾根~チンネ継続登攀
実際/剣尾根下半部で下降
剣尾根、いいルートでしたがとても厳しく稜線に抜けきりれず下降しました。一層のルート研究と装備軽量化、天気の見極めが必要。とてもよい経験になりました。

7/25(金)晴れ
8:00馬場島着 8:40林道ゲート~9:30取水口~12:30白萩川徒渉点(雷岩)~14:00小窓尾根乗越~14:40池ノ谷BC1
初日は白萩川を渡渉して小窓尾根を乗り越し池ノ谷にBC設置。

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林道終点の取水口からは白萩川タカノスワリを渡渉するルートと高巻きルートがあり、今回は渡渉ルートを行く。
2回の渡渉をすませ通常あと2回の渡渉で小窓尾根取りつきがある雷岩の渡渉点につくのだが、梅雨明け直後の増水のため突破できず。N野さんとM藤さんは左壁のバンド状をへつって突破するが、私とK谷さんは少し戻って高巻きルートから巻く。1時間のロス。

雷岩で渡渉して小窓尾根に取り付くと、アゴが上がるほどの急登だが踏跡はしっかりしている。1時間半で小窓尾根を乗越し反対側へ少し下って池ノ谷のテンバ。雪渓が目の前に迫り、秘境に降り立ったことを感じさせる。

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7/26(土)快晴
4:30BC1~6:10剣尾根r10取付き~6:40コルE~8:00最初の岩場~11:00コルC~16:00 r6のコルC2

好天で迎えた剣尾根アタックの日。不用品をテントに置いて、明るくなるのと同時に行動開始。アイゼンを装着して雪渓をハイペースで進む。とはいえ、泊り装備と水3Lを入れたザックは重い。
r10からコルEに上がりこむといよいよ剣尾根下半部だ。ハイマツと岩交じりのヤセ尾根を潅木をつかみながら攀じ登る。踏み跡はそこそこあって迷わないが細くて急な尾根なのでまさしく”攀じ登る”だ。時折現れる露岩に神経使いっぱなし。急登しばらくで最初の岩場20m。

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◆最初の岩場20m(体感Ⅳぐらい)M藤さんがザック背負ったままリードしてFIXを張る。後続もザック背負ったまま突破。ここはなんとかなった。
さらに続くヤセ尾根を行く。一部スッパリ切れ落ちた場所もあるが、M藤さんN野さんは臆せずフリーで越えていく。
眼前に剣尾根の象徴”門”の岩場が近づくと小さなギャップのコルC。ここからが剣尾根の核心だ。

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◆1P目:(Ⅳ級A1アブミトラバース)コルCの底から取り付くこのピッチ、さすがに重装備では登れないため空荷で登って荷揚げとする。
ここは先攻(N野=T城)のN野さんリード。5m直上し右にアブミトラバース、少し緊張するフェイスを15m登って終了点。
途中でヌンチャクが足りなくなってN野さん冷や汗。
荷揚げは立ち木に1/3システムを作るが、ザックが重くて大変。時間を食う。
後攻(M藤=K谷)はフォローのK谷さんがザックを背負ったまま登って時間短縮。

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◆ヤセ尾根P:露岩まじりのヤセ尾根を120mぐらい登る。ロープを出すか出さないか迷うところだが、落ちたらイチコロなのでN野さんにポイントでロープ出してもらう。
ここを越えると小ピークを左から巻き込んでトラバース、r6のコル。M藤=K谷組はここまでコンテで来た様子。

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r6のコルから門はもう目の前、凄まじい迫力で岩峰がそそり立つ。しかし時刻が16:00となり、今日中の突破は無理そうなこと、門を越せてもビバークサイトがないことを相談し、r6のコル手前の小ピークの平地でビバークとする。ツェルトで屋根を作ると大展望の立派なホテル剣尾根の出来上がり。

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ホテルに落ち着き、天気をチェックすると寒冷前線通過のため夜半から明朝は雷雨の予想。しまった、晴天に浮かれて気象のチェックを怠った、そう思っても後の祭り。
明日はコルBから池ノ谷へエスケープすることとし、オヤジ4人で忍び寄る前線におびえながらそそくさとシュラフに入る。この日ばかりはあのN野さんでさえ、酒が進まなかった様子。
夜中、ツェルト補強のため起きだしたときに見つけた流れ星に、登山の無事を祈る。

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7/27(日)くもりのち強雨のちくもり
5:00ビバークサイト~5:30門1P目~8:00門登攀終了~8:30コルB~10:00r2懸垂終了~11:40/BC撤収/13:00~14:30白萩川徒渉点~18:00馬場島下山

迫りくる雷雨の恐怖にほとんど眠れぬまま朝を迎える。ああよかった、夜は降られずに済んだ!こうなれば後は早く脱出しなければ。
身支度と同時に雨雲チェック、登攀作戦を打合せて夜明けとともに出発する。念のためぶなメールに下山遅れの可能性連絡を流してから。

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◆門1P目:真ん中のルート(Ⅳ級A1クラック)を今日はザックを背負って登る。
先攻(M藤=K谷:リードK谷)、後攻(N野=T城:リードT城⇒N野)
気合十分、K谷さんの朝一リードでスタート。雨が降り出すまで時間との戦い。取り付きのクラックをアブミで越えると、後はバンド状で全然難しくないとの声に安堵。後攻のリードT城が取り付く、間もなく雨。ザーザー激しく降ってくる。アブミポイントを越えバンドに入るとフリクションはよく効くがハーケンが遠い。カムを持たなかったことを後悔して、ロワーダウンしてN野さんにリード変わってもらう。N野さんスンマセン。

◆門2P目:スラブ状ピッチ20m(Ⅱ~Ⅲ)。K谷さんは1P目で途中を切らずにロープ一杯伸ばしたが、こちらは途中短く切って2P目にN野さんリードで突破。

◆門3P目:最終ピッチ、岩の浮いたルンゼ状を20mでついに門のトップに立つ。

相変わらずの強雨、雷が鳴らないのがまだ幸い。ドームを越えコルBに急ぐ。
コルBからはr2を3回の懸垂でやっと池ノ谷の雪渓に降り立つ。落石と寒さに震える懸垂だった。

雪渓下降ではペースを上げ、ようやく体が温まる。雨も止んだようだ。濃いガスの中、M藤さんは走るように雪渓を下っていく。切れ目ない状態の良い雪渓だったので順調に下降しBCにつくころには日が差し暖かさが戻ってきた。
さて、次なる難関は白萩川の渡渉だ。タカノスワリは巻き道を行くとして、それでも1度は渡渉しないと帰れない。池ノ谷も体感3倍に増水していて不安が募る。

いよいよ小窓尾根を越えて渡渉点へやってくると、案の定増水していて渡渉を逡巡する。K谷さん提案のビレイシステムにN野さん『俺が行きます』の申し出。
水流の少ないところを渡り、皆で続いて渡って事なきを得た。『骨は俺が拾う』とM藤さんの心意気も心強かった。
最後はタカノスワリの巻き道を高巻き、取水口から林道を通って馬場島下山はからくも18:00。
3日間本当に内容のある山行でした。

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《コメント》
・N野さん
快晴の中、剣尾根の登攀でしたが、甘くはありませんでした。
大型ザックで行ったため、下部のハイマツ漕ぎには苦労させられ核心の垂壁は荷揚げで時間がかかってしまいました。
時間切れとなり、門の手前でのビバーク。
それ自体はとても快適でしたが、翌日は雨の中の登攀となり、必死の思いでした。
とにかく盛りだくさんの思い出深い山行になりました。

・K谷さん
池ノ谷という初めての山域で、その圧倒的なスケールに飲まれてしまいそうで、さながら、西遊記の舞台にいるかのような感覚でした。一見の価値は絶対あります。
右岸も左岸もアルパインルートの宝庫で、岩質もきれいで興奮してしまい、R10の取り付き点の前に聳える「デルタフェース」なんて「これってどうやって登るんですか~?」って一般登山道を歩いてきた登山者みたいな感想しか持てない感じでした。
3日目は、残念ながら悪天候の中、撤退してきましたが、1~2日目は晴れて眺望もよく、剣西面を堪能できる思い出に残る山行ができよかったです。
特に「門」のコル手前でビバーグして、いいオヤジ4人がツエルトの屋根の下で遠く日本海を見渡す夕焼けにたそがれ、さらに遠くに見える前線に不安を覚える姿は忘れられません。
無理して来て良かったです。ありがとうございました。

・T城
憧れの剣尾根は試練の連続でした。
気を抜けないハイマツと露岩まじりのヤセ尾根、遅々として進まない荷揚げ、不意を衝かれた大雨と増水の徒渉。剣尾根からチンネへの継続を夢見たけれど、剣は甘いところではなかった。
ジャパニーズアルパインここにありといった風格で厳しかったけれどやっぱり楽しかった!チャレンジして良かったです。
今回突破はできませんでしたがルートのこと、必要な技術のこと、分かったことたくさん。いつかまた力をつけてチャレンジしたいと思います。
今回たくさんのピンチに見舞われたものの力あるメンバーのみなさんのおかげで無事山行を終えられました。“おやじオールスターズ”のみなさんありがとうございました!
それにしても、継続登攀て大変なことですね!
(T城)

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