[メンバー]
K野
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[行動経過(天候・タイム)]

3/13(水) 曇り後小雪
14:00 千歳烏山駅
22:55 親不知駅(ステビバ)

3/14(木) 曇後晴れ、夕方から小雪
05:45 親不知駅(タクシー移動)
06:15 栂海新道入口
08:50 入道山
13:40 坂田峠
15:00  シキ割手前780mC1

3/15(金) 晴れ、夕方雪
06:15 C1
09:30 白鳥山
12:50 下駒ヶ岳
15:30 1350peak付近1360mC2
17:30 雪洞作り完了

3/16 (土) 雪後風雪 停滞C3

3/17(日) 晴れ、夕方吹雪
04:30 C3
08:50 犬ヶ岳
13:20 1548peak先1540mC4

3/18(月) 晴れ
05:30 C4
06:40 サワガニ山
12:50 黒岩山
14:20 1625m緩い尾根C5

3/19(火) 晴れ、微風
05:30 C5
14:10 長栂山
16:30 朝日岳直下2360mC6

3/20(水) 晴れ
06:40 C6
07:00 朝日岳
08:50 入道山
10:30 赤男山南のコル
14:00  雪倉岳
15:00 雪倉岳避難小屋C7

3/21(木) 暴風雪後雨 停滞C8
3/22(金) 強風、視界無 停滞C9
3/23(土) ホワイトアウト、強風 停滞C10
3/24(日) 吹雪、夕方曇り 停滞C11

3/25(月) 晴れ、強風
04:20 C11
06:50 三国境
08:10 白馬岳
09:20 小蓮華山
11:00 乗鞍岳
12:40 栂池ロープウェイ

■3/13(水)移動(千歳烏山~親不知)
駅に向かって歩いていると知らないお年寄りに二回も声を掛けても
らい、「頑張れ」と応援して下さった。あぁ、これから始まるのだ
なと実感が湧いてくる。
学生時代から鈍行で山へ向かう事が多い。段々と山に近づくにつれ
、自分の山のスイッチが入っていくからだ。小淵沢辺りから雪がし
んしんと降ってきた。
日付が変わる前に親不知に着く。駅周辺は積もっていない。今回の
山行の為に用意したモバイルバッテリーの付属ケーブル不良で、
もうスマホに充電出来なくなる事態になる。以後残53%を大切に
使う事にした。GPSも使えなくなったので山と対等になり良しと
する。
Netflixで「The Dawn Wall」を鑑賞したことは後悔していない。

■3/14(木)親不知 ~入道山~C1
いよいよ単独行が始まる。日本海を背に歩き出した。前日までの積
雪で登り始めてすぐ銀世界となる。入道山先で1本尾根を間違えた
がすぐ復帰。足下は沈まず快適そのものだが、35kgの重荷がじ
んわり肩に食い込む。その為か中々ペースは上がらない。
上がるのは自分の息だけ。予定していたシキ割のした780mの雪
庇の下で幕営。900m付近までトレースを付けて行動終了とした
。この先どうなるのか不安が強い。

■3/15(金)C1~白鳥山~C2
白鳥山までは前日までの新雪と違いクラストした斜面の快適な登高
。白鳥山からの下りで軽くシリセードのつもりが結果的に30m滑
落。
一度木に引っかかり止まるもザックの重さに引かれ再び落下し、5
m下の木で止まる。山から面倒くさがらず慎重に行動する事を教え
てもらった。単独だから些細なミスも命取りになる事を再認識。
その後1092mコルへの下り急な下りで、重荷でクライムダウン
も難しく15m懸垂。
1291peakの直下膝上ラッセルに喘ぐが1350peakま
で延ばせた。
明日は午後から冬型で荒れる予報の為、雪洞を堀り停滞へ準備を整
える。ここも電波入らず。
白馬岳に抜けるまで7日はかかりそうだ。

■3/16(土)停滞C3
雪洞内は、外とは打って変わって静まり返っている。一晩で20c
m程積もっており、日中もしんしんと雪が降っている。
正直重で身体がしんどかったから良いレストになった。

■3/17(日)C3~犬ヶ岳~C4
この日は黒岩山まで前進しようと考え、夜明け前に出発。
C3まで見えないクラックを踏み抜いていた。それを警戒して尾根
上は避け、樹林の斜面をトラバースする形で登る。風上の西側斜面
は固くラッセルは踝から脛程度。
自分の感覚的には順調なつもりだけれど、犬が岳まで4時間近く掛
かった。段々分かってきた事がある。1日に進める距離は良くて地
形図半分、悪いと1/4といった具合だ。
犬ヶ岳から先アップダウンが少ないので、ここで巻き返そうと意気
込んだ。がここからクラック祭りで何度もハマった。最大で2m近
く落ち所もありヒヤッとさせられたが、幸い怪我はない。
加えて昼過ぎから穏やかな天気は一変。吹雪となり1時間粘って歩
くが、無理はせず早めに行動を切り上げた。
吹雪の中何とか設営を済ませテントに逃げ込む。本当に3月の天気
なのか?恐らく今が丁度季節の変わり目かもしれない。
服が少し濡れたので、少しガスを炊き、乾かし物をして就寝。

■3/18(月)C4~サワガニ山~黒岩山~C5
入山5日目。先日から採用した空荷ラッセルが主流になった1日。
連日の疲れと平地の重いラッセルだと、この方法が現状最善に思え
た。
黒岩山までなだらかな山稜が続くが僕にとっては苦しい。20m登
っては止まり荒れた呼吸を整える。
入山してようやく終日晴れ。春山らしさを取り戻した北方稜線は、
風が無く痛烈な暑さが堪える。進んでも進んでも遠くに見える五輪
山や長栂山は、いつまで経っても近づかない。黒岩山を踏んでやっ
と長栂山を捉えほっとした。
ここまでで既に疲れた。晴天を言い訳に早々に行動終了し、テント
やシュラフを干した。
1週間近くになると常に空腹と喉の渇きが悩みの種になっていた。
1日2500kcalでは足りないか。本能に身を任せてお楽しみ
の北海道出張土産、いか飯とじゃがバタを開ける。貪る様に平らげ
たが腹8分目も満たない。

■3/19(火)C5~長栂山~吹き上げのコル~C6
朝の支度に手間取っている内に夜が明ける。長栂山まで三度傾斜が
緩むので歩く目安を立てやすい。ラッセルの深さは相変わらずで空
荷ラッセルの後、ザックを背負って歩くとズシンと沈んだりして消
耗する。それでも前に進むしかない。1900m越えた辺りで雪質
が変わり、程良い雪の締り具合でラッセルがはかどる。
長栂山を越えて下りに入る頃、目の前に白馬岳をはじめとする後立
山連峰が飛び込んできた。思わず声を上げて喜んだ。「よし、これ
で白馬までの目処が付いたぞ!」今まで溜まっていた不安の重圧が
吹き飛ぶ。しかも朝日岳の登りは雪が飛んで夏道が出でいる箇所が
見える。実際歩いてみると、
標高差100m登るがあっという間だ。今までの苦労が嘘の様で、
一歩一日が確実に高度を稼いでくれているのが身をもって分かる。
道の有り難さを十二分に噛み締め朝日岳山頂直下の台地で幕営。北
を見れば富山湾、南を見れば後立山と展望抜群の宿だ。

■3/20(水)C6~赤男山~雪倉岳~C7
テン場から50mそこそこで朝日岳山頂。遙か彼方には劔の姿も。
いつか今回の経験を糧に黒部に挑むのが夢だ。
朝日岳、赤男山の下りは太陽の日差しで雪の表面が溶けて足を取ら
れる。晴れると日射がえげつない。水分を取っても一瞬で蒸発して
しまう様で喉が渇く。辛抱だ。
赤男山南のコルから雪倉岳へ取り付くには夏道と同じくトラバース
が必要だ。雪崩を警戒しつつ、慎重且つ迅速にトラバース。山行中
一番の不確定要素があるポイントだ。無事抜け夏道通しに山頂へ登
って行く。雪倉岳山頂周辺は雪が殆どない。1時間程下り、予定し
ていた避難小屋に着く。思っていたより綺麗で頑丈そうだ。
扉の内側にぎっしり詰まった雪をかきだしテントを張る。明後日ま
で寒気と冬型が決まり最低2日は動けなさそうだ。快適なシェルタ
ーで好天を待つ。

■3/21(木)停滞C8
外で飛行機のジェットエンジンを間近で聞いている様な殺人的な暴
風が荒れ狂う1日。
■3/22(金)停滞C9
昨日より風は落ち着いたが依然と強い。風の影響?と何故か凍った
雑巾が挟まり、扉が開かず閉じ込められる。何とか危機を脱しつい
でにトイレも掘り起こした。
■3/23(土)停滞C10
この日も寒気と気圧の谷の影響で動けず。ラジオ体操やラジオの天
気予報を聞いては一喜一憂する。
■3/24(日)停滞C11
願いむなしく強風が中々収まらない。ラジオでは明日全国的に晴れ
とのこと。日暮れに4日振り太陽を拝む。

■3/25(月)C12~白馬岳~小蓮華山~栂池ロープウェイ
風は強いが歩けない程ではない、いける。今日中に降りる算段で暗
闇の中出発。月明かりに助けられコンパスを用いルートを見失わな
いよう慎重に進む。日が上がっても風は吹き付け、
向かい合うと息が出来ない。バランスを取られまいと腰を落として
じわじわ標高を稼ぐ。
白馬岳直下2850m付近にザックをデポして山頂に向かう。頂上
に立つと信州側の景色が一気に広がった。この瞬間日本海から北ア
ルプスまでの山稜がついに繋がった。何も感情は湧いてこない。た
だそこに自分がいるだけの不思議な感覚。
下りは快調だが登り返しはすぐ息が切れる。大分自分の脂肪や筋肉
も体温維持に消費されたに違いない。
乗鞍岳の下りで12日ぶりに人と再会。平日に関わらず、BCを楽
しむ人がたくさんいた。つい嬉しくなって全員と挨拶した。
人もいて眼下にスキー場や白馬の町並みが広がる平和な空間。もう
これぽっちも不安や恐怖は無い。無事に帰って来られたのだ。