[メンバー]

M久L、N島、H山(会員外)

[報告]

●1日目(晴れ)

6:00出発 6:20入渓 8:20ボージョ谷出合 16:20二又 18:00テン場

 白山といえば関東の沢ヤであれば、まず思い浮かぶのが境川のオバタキ谷であろう。ボージョ谷は同じ境川の上流に流れ込む一支流であり、登山体系ではオバタキ谷と同じページに紹介されている。

オバタキ谷と違い周囲には登山道はまったく無く、下降は沢にルートを求めるしかない。その変な名前と遡行図の迫力に想いを馳せ、地形図とにらめっこし下降ルートのあたりをつけていく。そういった創造的な登山を実践できるフィールドが白山の北部に広がっていた。

今回、下降路はト谷(ウラダニ)右俣をチョイス。本当ならボージョ谷のお隣、ト谷左俣としたいところだが、そこは地形図のコンターが詰まりスラブ状100m大滝があるなど、下降にはリスクがあると考えた結果だった。

 オバタキ谷の出合から境川本流に入渓。平穏な流れは長くは続かず、すぐにゴルジュへと変化していく。右岸の壁は100m程あろう高さからいくつもの滝を落としている。越後でも黒部でもないその雰囲気に節子さんがいう。「A久さん好みのいい山域じゃない?」

 雨後の遡行であるが水量も手に負えないほどではなく、渡渉を繰り返しながらボージョ谷出合には登山体系の記述どおり2時間で到着することができた。

 小さく地味な入り口から進入すると、序盤は5~10m程度の滝が連続する。カマも意外と多く結構泳がされる。水は少し黄色掛かったディープグリーンで爽やかではない。なんだか濃い感じ。巻きを許さない雪国ゴルジュの滝群にロープを多用し、時に激シャワーを浴びながらの遡行が続いた。

 地形図上850mから1150mの間に3つの滝マークがあり、大滝の存在を示している。その中ほどにコンターが詰まり岩壁マークが半円状に沢を囲こむ部分がある。ボージョ谷の核心部だ。いよいよそのエリアに突入する。ひとつ目の滝は60m。岩壁を割くような豪快な姿。ここは右岸の草付きから高巻き落ち口付近に着地。しばらくはゴーロとなり周囲を大スラブが取り囲みはじめる。巨石帯を進み沢が左に屈曲すると2つ目の70m滝が轟音と共に姿を現す。左岸の壁は垂直にそびえ、基部は戸隠の百間長屋のようにえぐれている。右岸のザレタ斜面から支尾根に取り付き高巻きにはいる。小岩壁をブッシュから巻き込むと岩のリッジに乗りあがった。岩はボロい上に足元右手はスッパリ切れていて気を抜けない。最後は岩壁基部のズルズルのブッシュ帯をトラバースし緊張の高巻きを終えた。

3つ目はスラブ状40mナメ滝。中段まではフリクションを効かせ爽快に上り、上部は軽くブッシュ帯から巻く。

 核心部を終えると沢は急に表情を変え、傾斜はほとんど無く、時折ナメを交える穏やかな流れがしばらく続いた。このあたりはテンバ適地だけど、翌日の行程は長く藪ルーファイも控えているので、少しでも先に進めておきたい。登山道のない今回のルートでは一回のルーファイミスが下山遅れに繋がる恐れがある。

 20mの滝をルンゼから高巻き1300m付近の二又に到着したのが16時過ぎ、我々が進むルートは記録を見ない右俣だ。トイ状の連瀑はツルツルで取り付くしまもなく、草付にロープをのばす。時間に余裕がないので続く滝群もまとめて巻いてしまう。藪漕ぎでゴルジュをやり過ごして沢へ復帰。巻いた区間は水に磨かれ小粒ながら洞窟探検のような見事な造形を作り出していた。ボージョ谷からト谷に抜け無ければこのゴルジュを見ることは無いが、そんな記録は見たことが無い。もしかしたらこのゴルジュを目にしたのは我々が初めてか?なんて言って喜び合う。

 その後、V字谷の中に何とか3人寝られる平坦地を見つけ、藪を切り開いて本日の寝床とした。焚き火をおこす頃にはすっかり暗闇になってしまった。久々に12時間行動。

●2日目(晴れ)

4:40出発 6:50 1583コル 8:15左俣左沢大滝上  9:30左俣右俣中間尾根上(藪漕ぎ終了) 

12:20ト谷二又 16:10境川ト谷出合 18:40入渓点

 ヘッデンを灯し遡行開始。左岸に流れ込むルンゼからト谷とボージョ谷を分ける尾根を目指す。ト谷への下降点は1583mのコル。これより進行方向右側から越えると傾斜の強い沢型に出てしまう。そこに大スラブでもあろうものなら進退窮まるので、「間違えるなら左側ね。」と申し合わせる。登れない滝の巻きから藪にはいり、気持ち左寄りのルーファイで進む。6時50分コルに到達。地形図では拾えないルンゼに惑わされ、方向修正のアルバイトがあったものの、目標の7時前に到達できた。第一関門はクリア。

前方に容姿端麗な笈ヶ岳(おいづるがたけ)がたたずみ、眼下には境川の大きな谷が広がる。はるか向こうに見える大笠山までのこの広い空間には人工物どころか登山道も何も無い。下山するにはト谷左俣左沢を三ツ俣まで下降し、右沢を150m登り返した後に尾根を乗っ越して右俣を下降しなければならない。

 藪を下降しはじめるとすぐに沢型が現れ、源頭部にナメが続いたおかげで快調に進む。このまま行けば三ツ俣も早く行けそうと思ったが、それは甘かった。沢は50m大滝となって道を閉ざし、足元には空間が広がっていた。三ツ俣は下方に望め、登り返す予定の右沢にも大滝が確認できる。

これだと降りても時間が掛かりそうなので、このままの高度をキープしたまま藪をトラバースし、目的の尾根を目指すことにする。幸い視界良好な為、目指す尾根の特徴を捉え、大きな樺の木を途中の目印にし、ネマガリ竹と格闘が始まった。密藪に閉口しながら、時に木に登って方向確認しながら1時間強。迷う事無く目的の尾根に到達。木に登って現在地を確認。この木には熊の爪痕がいくつも刻まれていて、こうやって木の上から樹海を見下ろすと、獣も人も同じ事やってんだなぁって気になった。

 右俣も時折ナメが出るものの少し藪沢っぽかった。1175mで右俣本流と合流すると沢は開け、明るいゴーロと美しいナメうが繰り返す気分の良い下降となる。ここまで苦しかった滝の登攀やズルズルの高巻き、長い藪から開放され、心身ともに癒しの楽しい沢に浸っていった。左俣と合流し、もう終了が見えてきたぞと思ったが、またまたそれは甘かった。

 ト谷下部は巨石に塞がれたCS滝を多く掛け、空中懸垂や、悪い草つきにロープ2ピッチ伸ばしての50m懸垂など、予想以上に時間が掛かり、境川との出合に到達したのが16時15分。ここから本流下降に2時間でこなし、なんとかヘッデンのお世話になる直前に車のところに戻ることができた。14時間行動。

 2日連続での長時間行動。内容も変化に富んで濃く、長い長い沢でした。境川ではオバタキ谷、本流のフカバラ谷以外は記録がとても少ないので、そこをトレースできた事にとても満足しています。

久々にN島さんと沢行こうってなった時、順当に紀伊半島の沢で計画し始めたけど、名古屋集合で白山も良いなって思ったときに、N島さんも飛びついてくれました。やっぱりね。

 お互いにストレスなく山にいけるのは、まあ、趣味志向含め似たもの同士なんだなという事ですね。