メンバー:M藤L、H田

赤岳鉱泉の小屋入口には次のような張り紙があった。

「三叉峰ルンゼ:最上部から稜線に抜けることが非常に困難なため、最後の滝前に石尊稜に抜けた方が無難。現在、上級向き」

そう言われると、行きたくなるのが人の常。明日は三叉峰ルンゼを詰めて稜線へ抜けることとする。

明るくなるのを待ち、出発する。

明瞭な踏み跡を石尊稜方面へ進む。二又を左に入り石尊稜への道から分岐。
(この時、先行する2パーティーに追い付く、先頭のベテラン風パーティーが後続パーティーに向かって「石尊稜はあっち、こっちは三叉峰ルンゼ」と言っているのが聞こえた。そもそも、これが間違いの素。)
更に、その先の分岐を右へ行くと程なく涸滝が現れる。

涸滝を超えると氷が見えた。先行パーティーは無い。
 
 

1ピッチ(M藤)

ルンゼ上の細い氷を行く、出だしのみ少し傾斜が強い。

後続パーティーが続々とやってくる。「先頭で良かった」。
(先程のベテラン風のおかげで、全パーティーとも三叉峰ルンゼと勘違いしている。)

2ピッチ(H田)

リードのH田さんは安定して登る。
トポには下部7~8mが垂直(Ⅴ-)とあったが、そんな感じは全くなかった。

「ここが核心?、これでメイン終わり?」物々言う。

3ピッチ(M藤)

ルンゼを詰める。

「裏同心ルンゼよりつまらなくない?」物々文句を言う。

4ピッチ(H田)

ルンゼを詰める。

快晴無風の中、「裏同心ルンゼより絶対つまらないよ。」物々登る。
 
 

5ピッチ(M藤)

チャレアルのトポには二又を右とあるが、どうみても左が本流に見える。

このままつまらなく終了するのは勘弁して貰いたい。左俣へ進む。後続パーティーは全て三叉峰ルンゼのトポ通り右俣へ。

上下2段に分かれた涸滝が現われる。少々難しそうだ。

「待ってました。」物々言う。

右側の繋がっていない氷柱にスクリューを打ち、氷柱から乗り移るようにして一段目を超える。

二段目手前で頭上のピナクルに投げ縄の要領でスリングを掛け支点を取る。氷の無い2段目を超える。
細い灌木数ヶ所から支点をとる。一段目でセカンドが落ちたので二段目に備え、念のため支点を補強する。
一気に難易度が上がった。

6ピッチ(H田)

所々に涸滝があるルンゼを詰める。視界が開けるとドーンと双翼の滝が現れる。

右は10メートル強、左は20メートル位はありそうだ。

左は殆ど氷無し。、右は薄々の氷が繋がる「ベルグラ番長」的な佇まい。

「む、むずいんじゃねーか。これ。。」物々言う。

今日はルンゼを詰めて稜線に抜けると決めている。右に見える稜線は無視する。
 
 

7ピッチ(M藤)

見上げると中々の悪相である。

登攀を困難にしているのは、技術的な問題では無い。

氷脆くプロテクション無し。18メートルノープロで登る。上部の氷は白く濁っており赤スクリューくらいは拾えるかと思ったが、その余地は無かった。

抜け口の2メートル下になって、氷の中にピナクルを発見。ピックで掘り起こし、やっとプロテクションが取れた。

ノープロで薄氷に張り付きながらの作業は精神的によろしくない。滝を抜け、傾斜の強い樋状の雪壁を登ると3ートル程の小滝が現われる。やっとスクリューをと思える氷が出てくるが、それでも赤スクリューに3センチほどタイオフ。無いよりまし。

「む、むずいね。やっぱり。。」物々言う。

8ピッチ(H田)

ルンゼを登ると雪原の広い斜面にでる。

もう終了だと安堵した。が、行く手には摩利支天大滝に似たロケーションに10メートルほどの涸滝が見える。

「きょ、きょうはルンゼを詰める日だからね。。」楽に巻けそうな右のリッジは無視する。
 
 

9ピッチ(M藤)

雪原を涸滝の下まで。暫し、休憩。

10ピッチ(M藤)

危うそうなのでバトンタッチ。プロテクションは取れずフリーソロ状態で抜ける。
「ギアとロープの分だけフリーソロよりムズいんですが。。」物々言う。

11ピッチ(H田)

スカイラインへ向け、一直線に雪原を行く。傾斜の増した上部を乗っ越し、縦走路に飛び出す。
「このルンゼ最高!」
 
 

(感想)
三叉峰ルンゼの左俣を詰めたつもりでいたが、無名峰ルンゼを登ってしまったことに下山後になってやっと気づきました。。
名前は冴えないものの、人の気配も無く、まともなトポも残置も無いこのルートは「登らされてる感」がありません。
11ピッチのロープスケール。枯滝にベルグラと要所に男塾系キャラクター。横岳山頂付近にダイレクトに突き上げるロケーション。気持ちの良いルートです。
但し、途中のベルグラ状の滝は写真より薄く傾斜もあるので、ここは要注意です。前日に登った裏同心ルンゼの氷が立派に発達していたことを勘案すると、今回に限らず同じ様なコンディションかもしれません。