S藤H明、S口M恵、他2(I嵐F彰、H川Y敏(同人Grappa))

■S藤H明(記)
何年か前のこと、チンネからの帰路、内蔵之助谷を辿っていると、もう少しで黒部の本流というところに渋谷の109を100倍にしたような筒状の岩塔が聳え立つ、なんて凄まじい壁なんだぁ~・・あぜん・・これがマルトーとの初めての出会いでした。

あれから何年たったことか、何回かチャレンジするも悪天や仕事の都合で夢はなかなか叶いませんでしたが、今回ようやく登ることができました。天空から見下ろす黒部の眺望は素晴らしかったです。
取り付きから見上げるマルトーは、緊張のためか吐き気がするほどでした。三ヶ月ハングは僅か1メートルくらいの張り出しですが、大ハングはありゃ一体なんなんでしょうか、5メートルくらいは張り出しています。恐ろしいことです。

他のパーティーに先んじられてしまっては、夜間登攀を覚悟しなくてはならない・・いや・・一番で取り付いても夜間登攀は織り込み済です。だいたいトロバスは七時半が始発だし、今回は迷うことなく取り付きに行けましたが、それでも実質の登攀スタートは10時を回っていました。

<01ピッチ>H明 45m
緑ルート貸し切りでスタートする。最初のボルトまで10mくらいランナウトするとのことで、やらされる。
ランナウトで落ちたら普通は倍の20m以上落ちるが、この場合、グランドするから10mしか落ちない、と、わけわからんことを自分に言い聞かせて登る。

落ちた場合を想定して地面にザックと靴を敷く。思えばボルダーさんがよくやる「なんだっけ?」をやって貰えばよかった。
左のラインは濡れていて使えない。Ⅲと記載のあるトポがあるが嘘。きっとⅣ+はある。
アングルを一本埋めるもハンマーで指を激しく叩いてしまってイタイ。
アングルはどうせ効いてないので無視してクリップしないで登ったら後ろが大騒ぎ。

あとは比較的近い人工でビレイ点に到着。(後で聞くところによると、濡れた壁の草の中にガッチリ効いたハーケンがあったそうです。ピトンスカーがあるのは有名だが私がアングルを打ったのがそれだと思っていた。)

<02ピッチ>M恵 40m
出だし、しばらくピンがみえないので普通は焦るが、M恵さんは気にしない。その都度「あるある」とか言いながら登って行く。しかし藪藪のところで動きが止まる。11アップの天才M恵さんじゃー簡単過ぎて寝てるんじゃねーかな?なんて思ってたがビショビショの垂壁に腐った数珠繋ぎシュリンゲが垂れているところが一箇所、極めて悪いフリーが(H明はフォローで足が滑る。)一箇所あった。
そーいえば「落ちたらトメテヨーン」って騒いでたなぁー。無視してすみませんでした。

<03ピッチ>H明 40m
記憶にないから簡単だったように思う。ここから先5ピッチ目まで全てハンギングビレイとなる。

<04ピッチ>H明 35m 
M恵の順番だが、三ヶ月ハングをやらされました。右腕の付け根を丹沢の泥壁で肉離れしてしまい、ハングだと少し辛い。

<05ピッチ>M恵 35m
長い人工、時々遠くて、最上段に立ってイチカバチカでジャンプしたりもする。(フォローだし。)ところで身長154㎝のM恵さんはどーやって行っただろ。不思議だ。(ここでH川-I嵐パーティーは消耗により敗退。)

<06ピッチ>H明 35m
人工で少し上がった先が判然としない。ここから多数のパーティーが苦戦または敗退している。夜の23時にホテル丸山に到着というパーティーもあるくらいだ。私も間違った。残置シュリンゲで振り子式でスイッチバックして元に戻る。そこからはいつ折れてもおかしくないハーケンにクリップしながら。ジリジリと横へ上へと移動する。ここいらで暗くなった。待ってましたの夜間登攀。このために新しく買った超強力ヘッドランプで腐ったピンをひたすら探す。時々いやらしいフリーになる。落ちたらピンは飛ぶ、かもしれない。

キラキラ星が出てきた。月は緑ルートに相応しく三ヶ月だから暗くて役に立たない。針ノ木の猫耳岩峰のシルエットが夜空に浮かぶ。とうとう行き詰まる。右手に松の木があるけど手が届かない。仕方なし、イナバウアー(もう古い?)しかない。

小枝を摘んで引き寄せて飛びつく。暗くて下が見えないので恐くない。(ところで、やはりルートは違ってたようでした。下降の時に凝視したらそこから左ナナメ上にリングボルトが続いていました。)
左方向に少し登ったところに立派なビレイ点を発見。幸せがジンワリと込み上げて来る。次のピッチは僅か15mⅢで大バンドに出る筈だ。憧れのホテル丸山にも泊まれる。

暗闇の中、眼下に光が近づいて来る。M恵さん(くれーとわっかんねんだよー、みえねーだろー、こんなことまでしてのぼってなにがおもしれんだよー、もっとしばらくあかるくしとけよなー、などと、激しくおっしゃっておりました。)を迎える。

<07ピッチ>H明 15m
M恵さん、暗いからヤダというのでやらされる。簡単な濡れた岩とガレの草の中の歩き。

<ホテル丸山>
唐幕の「大町の宿」に比べたら渋いホテル。床はガレガレで天井からはポタポタと水が滴って冷たい。しかし、ツェルトを張ってザイルとガチャを敷き詰めてガスを焚くと天国になる。
少し飲んで食べてたら過労のため眠くなる。無線を家に忘れて来たため、途中敗退した「イガ-ハセ」との連絡がとれない。M恵さんは失神したように瞬間で寝てしまう。夜通し内蔵之助谷の沢音がごーごーと大きい。

<中央バンド>
ノーザイルで問題ないが、滑って転んだら空中遊泳になってしまうので部分的にザイルを出す。

<08ピッチ>M恵 20m
取り付きが判らなくて少しロスするがすぐに判った。一カ所凄まじく悪いフリーがある。M恵さんはアブミを残置して登り切ったが、私だったら敗退していたかも。本当は大ハングの真下までだが立派な支点があったのでここで切ったみたい。ハンギングビレイ。

<09ピッチ>H明  5m
大ハング下まで行ったら、ペツルのボルトがあったのでガチャの数とザイルの流れを考慮して短いが一旦切る。

<10ピッチ>H明 25m
ここが名物のA2大ハング。順番だとM恵だが、やらされる。時々完全宙づりグルグルになるが休み休み行けばなんとかなる。最後は戦慄のフリーで臨んだが登ったら足元にピンがあった。

懸垂下降×7回で、いとおしい地面に降り立つ。お疲れさまでした。概してM恵さんの登ったピッチの方が難しく悪かったです。楽しかったです。来年は左岩稜ですね。

■S口M恵(記)
腕の脇の下から肘あたりが筋肉痛です。普通は肘から手首の方が疲れるのに。

黒部の巨人、丸山東壁。レベルが高すぎて私には無縁の岩場と思っていましたが、目の前にある岩を1ピッチづつ落着いて登っていったら、終了点に無事着くことができました。

1ピッチ目
濡れ濡れのスラブなのにピンが無い。ここはH明さんに行ってもらうしかない。きっとここはいつも濡れているのだろう。後続の神田のI嵐ペアーのために長シュリンゲを2本残す。

2ピッチ目
私の本日の初リードだが、前回のみずがき北稜会ルートでの夜を徹しての登攀のおかげか、緊張せずに体が動く。
途中2カ所いやらしいフリーがあった。フリー部分になるといやにピンが少なくなる。これが丸東緑の特徴かも。

3、4ピッチ目
ネット情報によると3ピッチ目と三ヶ月ハングのある4ピッチ目は続けて1ピッチで行けるらしい。しかし、H明さんはピッチを切ってしまった。えー、なんでと思っていたら、次の4ピッチ目もH明さんがリードしてくれた。三ヶ月ハングは張り出し1メートル位、ピンが豊富でとても簡単。

5ピッチ目
私リード。ルートはまっすぐなので迷うことはないが、所々ピンが遠いのがチビの私には難点。ボルトの上に乗りチョンボ棒を振り回してやっとのことで抜ける。
ここでI嵐ペアー脱落し、なんとなく不安になる。四人いるのと二人だけとではなにかあった時、力不足のような気がして。まあ事故無いように確実に登ればいいんだ。

6、7ピッチ目
右にトラバースしてから木登りをまじえたフリー。暗くなってしまう。なんで暗い中岩登りをしなければならないのかと情けなくなるが、ホテル丸山は、すぐ目の前。藪をかき分けると狭いながらも足をのばして座れる愛しのホテル入り口があった。やれやれ。
前夜ありがたいことによく寝れたせいか気持ちよく目が覚める。寝坊してしまったけれど。必要最小限の荷物を持ちホテルを出てバンドを横断すると、ふたつのリングボルトが打たれた明瞭な取り付きがあった。

8ピッチ目
朝一番のリードのうえ、取り付きすぐの垂壁はうすかぶりだったので最初は体が固かったが直ぐになれた。
しかしながら、またまたいやらしいフリーが出現。ピンは右足のずっと下にしかない。一段上のバンドに上がりたいのだが失敗したら斜め下に振られながら、墜ちていくこと間違い無し。しょうがないのでボサをまとめてクリップする。お願いだから抜けないでね。でも、ほんとに墜ちたら絶対ボサごと抜けるだろうな。まあ気休めです・・。
ラッキーなことに無事突破することができた。

9ピッチ目
ほんとは大ハング直下で切るべきだったのだが早く切りすぎたため、1ピッチ多くなってしまった。ごめんなさい。

10ピッチ目
A2最終ピッチだ。とうとう大ハングを乗っ越す。ここはH明さんの登場だろう。私は気楽にフォローで行くのだ。
張り出しは大きいがピンが近く左へのトラバースを交えながら乗り越すので、体が完全に壁から離れぐるぐると回ったりしても不安は無く、先ほどのフリーよりよっぽど楽だった。でも、ここで力尽きてぶら下がったりしてしまったら、助けるのは難しいだろうな。一生居るしかない感じの場所だ。大ハングを越して上にまだ2ピッチあるんだが、木登り混じりのルートで魅力が無く、ほとんど人が行ってないようなので、ここで終了!
やりました!

下降開始。
昨日は私達だけの貸し切りだったが緑と左岩稜に1パーティーずつ取り付いているのが見える。懸垂下降は瑞牆での失敗があるのでルートをはずれないように気を付けたが、分かりやすかった。
途中、三ヶ月ハングで登攀中の富山県警パーティーの頭の上を通り越した。彼はハング下でぐるぐると残置状態になっていたけど大丈夫だったのかしら?