L,O村孝行 N島節子 M尾恵 G頭宣子 K口淳子 A部朋恒 K玉健彦(記)

現在はオキとトマが谷川岳と呼ばれているが、昔はこの爼嵓(まないたぐら)のことを谷川岳と呼んでいたという。O村さんとM尾さんからこの山行の話をいただいたのは、2月の上旬のこと。雪洞泊雪山ということ。これまでの雪洞経験は1度。良い経験になるということで参加を決めた。募集をかけて最終メンバーは7人。うち4人が新人という経験の浅いメンバーが多いパーティー編成となる。

予定では、1日目に川古温泉から小出俣山を経由して谷川乗越にて雪洞泊。2日目に爼嵓、オジカ沢ノ頭、肩ノ小屋を経由して天神平まで。2日間の総行程ざっと14km、2000mの登りと1300mの下り。新人メンバーには厳しい行程である。

■3/8(土)晴れ
川古温泉発7:15 十二社ノ峰11:10 小出俣手前1621m14:30 雪洞掘り始め15:00 完成16:30

水上駅にて前泊。翌朝2台のタクシーにて分乗して川古温泉に移動。7:15に出発。南北に伸びる尾根に西側からアプローチ。モナカ雪につかまり、さっそくワカンを装着する。尾根に出てからは、脛~膝の深さのラッセル。

ときどき押し寄せるモナカ雪が曲者。ラッセルは、N島さん、M尾さん、G頭さん、A部君、K玉で回す。K口さんをサポートするO村さんの檄が飛ぶ。

神経を使ったのは稜線でのルートファインディング。尾根の東側は、一見歩きやすそうだが雪庇が張り出している。雪庇でないところは藪とモナカ雪で歩きにくい。それでも選択肢は、歩きにくい藪を進むほか無い。時には雪庇ギリギリを歩き、時には藪が薄いところで雪庇から逃げる。その繰り返しで目に見えてメンバーの体力が消耗していく。

初日の行程3分の2ほどの1621m地点到着が14:30。ここでタイムアップとなる。ここで雪洞製作にとりかかる。7人分の雪洞はいったいどんな大きさになるのだろうか。O村さんもこれだけの人数が入る雪洞を作るのは初めてだという。床を2mほど掘り進むと笹薮が出てきてしまった。これ以上奥行きが取れないといことで、横に大きくすることにした。さらに、50cmくらいの段差をつけてベンチ状に拡げる。約1時間半で雪洞完成。1時間を目標にしたが、雪が固くてなかなか掘り進まなかったので上々といったところか。ベンチの上まで使って、7人が寝るスペースは何とか確保できた。

■3/9(日)晴れ
出発6:30 小出俣山8:45 川棚の頭11:45 オジカ沢の頭14:00 肩の小屋直下16:05 天神平17:255西黒沢出口18:30

翌朝は晴天の無風。出発は6:30。
まだ全行程の3分の1にも達していないにもかかわらず、天気の後押しもあってメンバーに悲壮感はない。小出俣山に近づくにつれてヤブが薄くなりペースが上がる。当初の雪洞泊予定地の谷川乗越到着が9:30。やはり、1日目でここまで来るのは難しそうだ。

本谷の頭を越えると樹木はほとんど無い。変わりに川棚ノ頭と爼嵓が視界に入る。これまでの初級雪山で登った山とは全く違った景色である。こんな急斜面を登れるのだろうかと不安がよぎる。川棚ノ頭はロープを使って登った。アイゼンはよく効いた。時間が経つにつれて雪の状態が悪くなる。アイゼンに付着する雪団子に悩まされる経験も初めてだ。G頭さんは体調が悪いようだ。

爼嵓も中盤を過ぎると、オジカ沢ノ頭の避難小屋や肩ノ小屋がすぐ近くに見えてきた。肩ノ小屋付近には登山者も多数見える。オジカ沢ノ頭には実際すぐ着いて、到着は14:00。しかし肩ノ小屋が遠い。稜線を歩けない箇所があり、南側に崩れた雪庇の上をロープを使って歩いた。疲れた体には、100mの登りさえこたえる。

肩ノ小屋付近を通過したのが16:00。この時点で最終17:00の谷川岳ロープウェーは絶望的。この時間では、日中に緩んだ雪がまたしっかりと固くなっていた。誰もいない天神平スキー場で休憩したあと、田尻沢コースをヘッデン下山。この日12時間行動はさすがにこたえた。

以下メンバーコメント
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●~来年もいくわよ!~ M尾恵
初めて「俎嵓山稜」を知ったのは6年前でした。仏岩トンネルから入るとばかり思っていたのが正式には川古温泉から、と知ったのは、O村さんが調べてくれた「登山大系」。
初日、藪と雪屁に苦戦し、予定を大幅外した所で雪洞掘り。翌日、遅れを取り戻すこともできず、ドンドン時間が押して行く。そんな中、気持ちを楽にしたのは快晴無風と言う気象条件とメンバーの明るさ、団結力でした。
そして途中、「3時間遅れかぁ~!」と言いながらも、敗退、エスケープを考えている風のまったく無いO村リーダーでした。俎嵓山稜は多くの要素の詰まった期待通りの素晴らしいルートでした。
次回は仏岩トンネル、阿能川岳経由で再訪したい。

●~俎嵓で山を教わる~ A部朋恒
ぶな会員としては初の山行でした。冬山へはやる気持ちから、多少の無茶を承知で同行をお願いしたので、川古温泉からの歩き出しでは緊張を隠せませんでした。しばらくは一歩一歩足運びをまねしながらついていくのに専念するばかりでしたが、尾根に出て行く手が見通せるようになる頃には漸く緊張もほぐれ、これまた見よう見まねで不器用に地図を開いたりする余裕もでてきました。それからもルート選定や稜線歩きでの雪庇回避など、まねて学ぶことばかりで、初日から身体も頭もフル回転でした。

雪洞泊を経て二日目は長丁場でしたが、O村リーダーをはじめベテランの先輩方の采配からは、体力的に辛いなかでも安全には最大限気を配るという鉄則を教わりました。今回六名の皆さんと一泊二日をご一緒することができて、様々な技術や知識だけでなく、心に残る思い出もいただいたように思います。 ありがとうございました!

●~いっぱいいっぱいだったけど~K口淳子
長い道のりでした。きつかったけれど、嫌だとか止めたいって一度も思わなかった。
途中、急なところで思わず「恐い」と口から出てしまった場所が…。M尾さんにお助け紐を出してもらい這上がりました。後で、O村リーダーから「恐い。と言わずにロープを出してください。」と言うんです。と、教わりました。「それが、山やだよ」って…。こんな感じにこの二日間、いろいろな事を教わったし、感じました。
みんなのトレースを追うことで一杯一杯、皆さんに守られて登りきった「俎嵓」。ありがとうございました。

●~勉強、また勉強でした~G頭宣子
俎嵓の感想といっても今の段階では、バテてしまったことと荷物を持って頂いたことの悔しさで一杯だ。潰れたらもっと迷惑を掛けると甘えたが、一人だけちゃんと行けなかったと感じる。しばらく、ウジウジしそうだ。

俎嵓で最も興味深かったのが、ラッセルでのルートの見極めだ。M尾さんからアドバイスを頂いたり、K玉さんに相談したりしたが、N島さんを振り向いて確認させて貰ったのが心強かった。雪庇の通過や岩場でのトラバース・藪の選択・雪壁の乗越し方等全てが勉強になった。

特に、小出俣山の次のピーク1653mからは北に尾根が続くがこの先崖下に沢がある地形であり、谷川乗越へはコルに向かって降りなければならない。地図の先を読んで稜線上に出てしっかり先の尾根や下行路を見ることの大切さを学んだ。(実はその前の小コルからトラバース出来ると思い稜線上を進んでいなかったが、見てみるとこのトラバースが危険だった。)尾根に惑わされるこのような地形では、視界が悪い時はコンパスを見て時に戻ることが必要となるとのことであった。

●~山の神もほほえんだ~N島節子
オジカ沢ノ頭から国境稜線をはずし南西に延びる俎嵓山稜。雪を纏ったその姿は実に美しく、肩の小屋から望むと一際目を引く存在だ。しかし谷川岳東面の賑やかさとは一線を画し、静寂の中に気品を漂わせている。
私にとって谷川岳南面は特別な思いのある場所で、俎嵓も過去に幾度か計画を立てたが、その度に天候に阻まれたりして未だあの美しい山稜を歩いてはいなかった。

2月に阿能川岳へ行った折り今シーズン中に俎嵓を歩こうかな、という思いがふつふつ湧いてきた。そんな時O村さんがこの計画を立てているということで混ぜて頂くことにした。当初は3人くらいかなと思っていたら、何と最終的には7人の大所帯に膨れあがり、こんな地味なところによく集まったものだと正直驚いた。入会間もない人や雪山経験の浅い人も含めてのパーティーだからこの長丁場はどうなることか。実のところ私は、俎嵓を踏破できる確率は五分五分といったところだろうけど、それでもまあいいか、と思っていた。

結果的に好天と雪質にも恵まれラッセルもほとんどなく、みんなの頑張りのおかげで無事に計画を達成できた。
しかし、好天であっても風が少しでもあれば歩き通すことは出来なかっただろうと思っている。それだけ体力的要素が強いルートなので、初心者にとってはかなりきつかったはず。今回はメンバーの努力とそして何より山の神様が味方してくれた結果成し得たものだと思う。

楽に登れてしまう山よりも、ある程度大変な思いをした山行の方が深く記憶に残る。そのような経験を蓄積していくことで少しずつ成長していくものだと思う。今回の山行を通して各々が何かを感じ取り、次の山に繋げてくれたなら、リーダーのO村さんにとってこれほどうれしいことはないのではないか。

O村さんは膝の調子がまだ今ひとつらしいが、O村節は健在でホッとすると同時に妙にうれしかった。今回のルートと同じで渋くて中々いい味があると思います。私も、今回のように個人山行を大人数で行くことはないのですが、たまにはこんなのも面白いなって思いました。

●~隠れ美人・川棚ノ頭~O村孝行
「俎嵓」の名は知っていた。それは、天神平から幕岩方向を見下ろした時に見える顕著な雪稜のことだと思っていた。藪が多くてあまりすっきりしたルートには見えなかった。
今回、調べてみて、南から少しずつ高度を上げて国境稜線に交わる尾根を言うのだと知る。
万太郎辺りから見えるすっくと立ち上がる山の姿が「川棚ノ頭」というのは知っていた。漫然と見ていただけで、いつか登るぞと言う気にはなっていなかった。

今回は低いところからとりついて、じわじわと高度を上げ、徐々にとがったてっぺんに近づいていく、本来の山登りができた感じだ。その点で「川棚ノ頭」は南側から登るのが正しい。主稜線の山ではなく、いかにも外れの山みたいな名前だが、南から見上げれば他の山にはない美しさがある。この美しさを知らず、谷川を語るなかれ。
こっちから見るとすごい美人だぞ、という山だ。

今回はメンバーが理想的な構成かも知れないと思う。節子さんの指導力が遺憾なく発揮された。M尾さんの面倒見の良さに助けられた。K玉くんは頼りになった。もう「中堅」で活躍してほしい。G頭さんは長丁場のペース配分を誤ったけど、体力があるし男勝りの腕力もたいしたものだ。K口さんはばてそうでばてない粘り強さがあるし、気持ちがめげない。A部くんは何事にも感動してくれて、学ぶ姿勢がいい。これからの成長株だ。
新人の皆さんにはハードだったかも知れないけど、いつも冗談を言い合って楽しかった。来年はみんなが「中堅」となって新人を引き連れていきましょうね。