黒部横断 さらさら越え 2024/3/16-17

山スキー

【メンバー】

ヤマ(L)、MSO(記)

【タイムスタンプ】

3/16(土)

日向山ゲート5:00~6:30扇沢7:00~8:30大沢小屋9:00~12:30針ノ木峠13:10~14:00針ノ木谷分岐~17:40黒部川(渡渉前)~18:30黒部川(渡渉後)(C1)

3/17(日)

幕営地5:30~8:15刈安峠8:30~8:50中ノ谷co1800m付近9:00~11:00ザラ峠11:10~17:50立山駅

【報告】

〇3/16(土) 快晴

 金曜の最終列車に乗って0時前に信濃大町駅へ。昔は駅ビバが出来たらしいが今は終電後に施錠されてしまうので、付近の邪魔にならなそうなところで適当に仮眠を取った。夜中でも気温が高く、青空ビバークも快適そのもの。

 4時に予約していたタクシーで日向山ゲートへ、ゲートにはすでに車が2台止まっていてまさか黒部横断か?と身構えたが1台は蓮華岳、もう1台は爺ヶ岳に向かうらしい。ゲートから扇沢までは関電関係者が入るからかしっかり除雪されているのでスニーカーで歩く。除雪するなら扇沢まで車で入らせてくれよと思わなくもないが、もしそうなると針ノ木雪渓はシュプールだらけ、黒部横断を狙う人ももっと増えてしてしまうのだろう。

 ゲートから1時間半ほどで扇沢。針ノ木峠方面にトレースは無い。正直他パーティがいてもおかしくは無いと思っていたが、やはり去年の黒部横断の記録を読んでみんな躊躇しているのかもしれない。大沢小屋までは沢筋を適当に歩いていたら堰堤の巻きで手間取ってしまった。雪が多ければ何も問題ないのだろうが、小雪の年は夏道をトレースするのが正解のようだ。

 針ノ木雪渓は小さなデブリはあるものの、ほとんどメンツルと言っていいレベルでとても美しい。ただ、綺麗な景色とは裏腹に睡眠不足と昇温でバテてしまいなかなかペースは上がらない。稜線直下は斜度が急になり雪も固くなってきたのでシートラに切り替えたが、板を脱いだ途端に膝ラッセル、スキーの浮力の凄まじさを実感する羽目になってしまった。

 12時半、ようやく針ノ木峠へ。快晴微風、槍に伸びる縦走路や黒部源流の山々が目に飛び込んでくる。黒部横断をやっている実感が沸いてきて、少し元気が出てきた。

 針ノ木谷の雪はとっくに死んでいるかと思いきや、ギリギリ賞味期限範囲内。沢割れはco1950mくらいから始まるが、ここらへんは例年良く割れている箇所。針ノ木谷出合までは2回だけ板を脱いだが、どちらもそこまで手間取ることはなかった。

 本谷に入っても所々沢割れは目立つものの大きく困ることは無く、1時間ほどで南沢出合の手前まで下りてこられた。案外楽勝なのではという考えが頭をよぎったが、小雪の黒部横断がそこまで甘いはずもなく、南沢出合の手前からはスノーブリッジ皆無、何度も渡渉を強いられることに。しかも直近の大量積雪のせいで両岸の雪壁だけは無駄に高く、渡渉のたび乗り上げるのに苦労させられる。小雪の年の遅い時期に大量積雪があったところで今更スノーブリッジが出来る事はないようだ。いい勉強になった。

 結局黒部川に出るまでに5~6回の渡渉をこなし、ヘロヘロになりながらも日没ギリギリにようやく黒部川へ。ゆっくり感傷に浸りたかったが、今日中に黒部川を渡っておかないと明日の行程に影響が出てしまうので、いそいそと渡渉準備。足回りは会の先輩からのアドバイスを参考に、スキーブーツのシェルにネオプレンソックスという構成で挑んだ。

 さて準備は万端。ついに黒部横断のハイライト、黒部川の本流渡渉!

 感動の第一歩!!

ズボッ

 感動の第一歩は膝まで沈む泥濘だった。あまりに感動的で涙が出そうだ。泥濘にはまったブーツが全然抜けてくれないので、仕方がないので足だけ脱出して埋まったブーツを回収した。この日の気温は黒部湖でもおそらく氷点下に満たず、湖岸の泥が柔らかくなってしまっていたようだ。その後はネオプレンソックスのみで渡渉、耐えられるくらいの冷たさだったので最初からこうしておけば良かった。

 渡渉が終わったころにはあたりは完全に暗くなりギリギリセーフ。整地もそこそこに湖岸の適当な場所にテントを張り、ようやく一息ついた頃にはもう19時を過ぎていた。

〇3/17(日) 曇りのち雨

 明日も仕事。19時半の終電には絶対に間に合わせたいので、薄明るくなってきた5時半に歩き始める。中ノ谷ゴルジュはどう考えても埋まってないだろうと、夏道沿いに刈安峠に上がりトラバースで中ノ谷に合流することに。峠まで夏道のコースタイムは1時間半ほど、ラッセルも無いし同じくらいの時間で着けるかと思っていたが、シールで登るには少々斜度がきつく、さらには所々デブリによる縦溝が嫌らしく苦労させられた。結局2時間半かけて刈安峠へ。この辺りからあられのような雪が降り始める。午前中は天気がもつ予報だったがどうやら悪化してしまったようだ。

 刈安峠から中ノ谷への北斜面はまさかのドライパウダー。縦に落としたい気持ちに駆られたが、出来るだけ標高を落とさないようトラバース気味で下りていく。途中で沢割れして滝が流れている箇所があったものの、そこまで通過に手間取ることはなくco18000m付近で谷に合流できた。

 中ノ谷は斜度も緩く、刈安峠までの急斜面と違ってジグも切らずに登れる。標高を上げるにつれて視界はどんどん悪くなり、風も強くなってきた。あられが顔に叩き付けられてとても痛い。ザラ峠まであともう少しのところで、ついに完全なホワイトアウトになってしまった。時折GPSで位置確認をしながら11時ちょうどにザラ峠に到着。中ノ谷が埋まっていればもっと早いのだろうが、去年のゴルジュを高巻いたパーティよりは早く到着できたようだ。目論見が当たって嬉しい。

 ザラ峠は気を抜けばシールや板が飛ばされそうな爆風。2人で記念写真を撮るような余裕は全くなく、爆風を背に受けながら急いで滑走モードに切り替える。湯川谷の斜面は全く視界がないので横滑りで慎重に標高を落とすが、目印になるような灌木もほとんどなく、先頭を滑ると気分が悪くなってくる。200mほど標高を落としたところでようやく視界が回復してきて一安心。風にたたかれてガタガタのバーンだったが、もはやターンが出来るだけで嬉しい。

 沢割れは国見谷出合のあたりから、やがてすぐに堰堤も出てきた。堰堤が出てからのルーファイが懸念事項だったが、地図よりも奥まで点検用の道路が整備されていて拍子抜け。一部だけショートカットしたが、基本的には道路をトレースして進んだ。ちなみに堰堤が出てきたあたりから雪質はずっと「シールいらず」。傾斜が無くとも板が良く滑るのでシールがいらないという意味ではなく、シールが無くても坂を直登できてしまうストップスノーという意味。最初は不思議な感覚で面白かったが、だんだん何も面白くないことに気づいた。いつの間にかあられは雨に変わっていた。

 重要文化財の白岩堰堤を越えると本格的に斜度が無くなるのでヒールフリーにして黙々と進む。天鳥トンネルのトロッコ道で一度シートラになったものの、ありがたい事に雪は立山駅まで続いていた。

 18時前、立山駅着。3週間前の立山ワンデイ以来、まさか今シーズン再訪することになるとは思わなかった。ずっと雨に降られたせいで身体が冷え切っていたので、北陸の海の幸は諦めて銭湯に入り、終電のかがやきで帰京した。

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