谷川岳 一ノ倉沢本谷下部 2011/11/8

アルパイン(夏)

初日は雨で中止、水上にある水紀行館という道の駅でクライミング(1日500円)
二日目の本日、小雨であったので入溪。
しかし氷雨となり早々に本谷バンドからテールリッジへエスケープし下山しました。

【タイム】
6:10一ノ倉沢出合~6:40衝立前沢~7:30テールリッジ先の淵~8:00大滝~9:50台スラブ~10:20本谷バンド~11:30テールリッジ~12:50一ノ倉沢出合

立冬の本日、それまで曇で覆われていた空に星がまたたく。
風が吹いているが登山指導センターは快適でした。
今は車で一ノ倉沢出合まで行 けるので楽チン。

出合に近づくと雨がぱらつく。
前日も晴れていても雨が降っていた。地元の方の話によると、冬になるとこのような天候になるとのこと。
『ふっこし』と呼ぶ。

前日は雨が本降りで沢の水が道路まで流れていた。本日はそこまでの増水はない。
本谷バンドかテールリッジまで。行ける所までと、出発した。

出合からは水線沿いに進みました。30分ほどでテールリッジ基部。
そこから右岸の高巻きでM田リード。リスを探すのに苦労した。ここで雨が本降りになる。
2~3級のスラブ登りは快適。アクアステルスはフリクション良く効きます。
滝沢からは水がじゃんじゃん 流れていて圧巻でした。

まもなく大滝に着く。チムニー上にエイリアンとよばれるCSがある20m滝。普段は涸れ滝なのですが今日は水あり。
トポ通り右岸のバンドからトラバースする。4級。M中さんリード。
私はフォローで上がりましたが、手がかじかんでガバだかわからずスリング頼りに登る。
おまけに要所要所でシャワーをあびてずぶ濡れになった。

大滝を越えると大スラブ帯と呼ばれる広大なすり鉢状の沢床をフリクション効かせて登ります。20分程で本谷バンドへ。
小さい氷のつぶてがパラパラと痛い。風もつべたく厳しかった。バンドから上部はガスに覆われて何も見えない。

エスケープルートの本谷バンド~南稜テラスまで、一部ロープ出し て進みました。
南稜テラスからは南稜フランケ、変形チムニー、中央カンテ、凹状なんとか、中央なんとか、衝立ど~ん!
対岸には滝沢スラブや二の沢が水しぶきをあげて垂直に谷底へ消えてゆくさま。
おそろしい。。。

テールリッジに着いたとたん、言いようもない安堵感と感謝の気持ちが込みあげてきた。
生きててよかった!

このあたりから少し気候は好天。気温も暖かくなる(といっても氷雨ですが)
ゼニイレ沢の方は青空。にもかかわらず、一ノ倉沢だけは呪いがかかったみたいに雲と氷雨に閉ざされていました。

温泉帰りに一瞬雲が晴れたら・・・
山の上には雪化粧!でした。

【低体温症について】

今回私は途中から、寒さが強くなりました。動いていても寒い!
寒すぎて震えて、景色を堪能する余裕ありませんでした。それからパンなどの固形物を食べたくなくなり、何とか無理して甘い菓子を必死に食べて補給しました。
動作も緩慢になり、とにかく動いてなきゃ駄目だと思い、動きつづけてました。神経の全てを登攀と安全管理だけに集中させました。「低体温でヤバいです。」とリーダーに早くに告げてフォローしていただきました。これらのおかげで無事に下山できました。でもとてもギリギリだったと思います。反省です 。
左手に軽いしもやけができてました。
今回いつもの沢スカで遡行しました。村 中さんはカッパを着ていました。私も下にカッパを履いていればもう少し余裕ができたのだと後になって気づき、反省しました。

これからはもっと寒くなりますので、くれぐれも低体温にならないよう、気をつけていこうとおもいます。

(M中さん)
【技術的な感想】

全体的には岩というより沢の要素の強いルートで、「局所を抜けるために」視界前方の登りやすさよりも全体を俯瞰したルートファインディングが必要。

例1)大滝を超え、すり鉢状スラブのトラバース手前に20mほどの3級の階段状スラブを登るが、実は非常に美しい漏斗状滝の中段から落口までをライン的に引き寄せられて登る格好になっており、ボンヤリ登り出してしまい落ち口から下を眺めるとクライムダウン不能な状態で40m滝の絶壁の只中に置かれてしまう。

例2)スリ鉢状スラブのトラバースにおいても、下から左側の非常に美しいスラブ帯を登ろうとすると、いつの間にか逆相のキツいノール状スラブに立ちこんでしまい、命からがら(場合によってはボルトを打って)戻ることになる。
見える範囲だけじゃなくて沢のスケールに自分を合わせてルートを見定め、そのための離脱路を一発で発見できるセンス・経験を積みたい。

【M田さんの低体温症について】

ゼロベースで評価すると、ツェルトを被り風を遮り、場合によってはバーナーを炊くなど強制的な体温上昇を図る正しい論のひとつもある。特に厳しい登攀が続くルートのただ中ならそうであろう。
しかしながら今回は、私自身3週間前に下見を終え、どの段階でどうかなったらどっちに行く?というようなことをその日までずっと考え続けてきた。
その意味では教条的にいきなりツェルトを被っても「いきなり命守っていったい何なの?」みたいな感じだろう。

何回かの山行でM田さんが少し余裕がないときのものの考え方も吸収しており、自分のコンディションが絶好調だったこともあって、この登山の成果物を「安全登山」という漠然としたものではなく、「ギリギリまでM田さんと対等なパートナーシップで登りきる。残余の部分は今の自分ならなんとかなるし、勝利の経験持ち帰って頂戴」ということにした。

滝沢大滝を眼前に見ながらM田さんが先行する。時々立ち止まって何かを腹に収めている。
テクニカルなムーヴの箇所では私を待ち、適切なルート取りの指示を貰った。
小一時間で本谷バンドに立つ。とうとう、普通に登りきったのだ。

しかし、ここが2ルンゼでここがどうといった話は氷雨が頬を打つ寒さのなかでは注意散漫でほとんど聞いていない。
体のこわばった不慮の滑落に注意を払って本谷バンドでロープ1回。
クライムダウンでの無駄な精神力と体力の消耗を避けるため南陵テラスから2ピッチの懸垂で氷雨帯を抜けた。

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