メンバー: O川L、M田、H光、会員外3名

9月18日(土)
6:50扇沢=7:05黒部ダム~10:00平ノ渡~12:00東沢出合~14:00下ノ黒ビンガ手前~16:20下ノ黒ビンガ先C1

9月19日(日)
7:15CI~8:15中ノタル沢~9:45金作谷出合~13:40立石奇岩~16:00薬師沢小屋手前C2

9月20日(月)
8:00C2~8:30薬師沢小屋~9:30赤木沢出合~10:25五郎沢出合~12:15登山道~13:00-13:15三俣山荘~湯俣川赤沢出合上流C3
〈H光行動〉12:35北ノ俣岳~13:25太郎平小屋~14:25折立

9月21日(火)
7:40C3~11:00-11:45湯俣川地獄~12:10湯俣温泉~14:30高瀬ダム

 

9/18(土) 晴れ

6:50に扇沢でトロバスに乗車し、黒部ダムから10:00の平ノ渡の乗船に間に合うように黒部湖畔の登山道を進む。道中では一昨日の雨によるキノコの姿が散見され、O川さんのキノコ講座を交えながら本日の食糧調達にも精を出す。

平ノ渡の乗船時間には余裕で間に合い、平ノ小屋で一服。10:00に渡し船に乗って黒部湖対岸へと渡る。ここから奥黒部ヒュッテまではコースタイム二時間だが、黒部湖がゆるやかに収束し、沢上地形になった時点で、待ち切れず登山道を外れて入渓する。

上ノ廊下はコバルトブルーの水流に白色の花崗岩が映え、早くも大渓谷の魅力全開。入渓直後に様子見も兼ねて渡渉ファーストトライを試みるが、強力な水圧で吹き飛ばされてアウト。諦めて側壁をヘツリ、流れの緩いところを泳いで先に進む。後になって振り返ってみると、この渡渉が上ノ廊下の核心であった。

奥黒部ヒュッテ付近の東沢出合にほぼ予定時間通り到着し、いよいよ本格的な上ノ廊下の遡行開始。下の黒ビンガの手前までは比較的入りやすいこともあり、釣り師パーティーの姿もちらほら。しかし、下ノ黒ビンガ付近から一気に渡渉のレベルが上がり、スクラム渡渉や水流の流れを読んだ泳ぎなどを多様する、ガチ沢屋の世界となる。

口元ノタル沢出合付近では、某パーティーが先のゴルジュで進退窮まったらしく、ここで幕営して明日撤退するとのこと。しかし、いざ突入すると、流れは強いものの絶望的なポイントはなく、スクラム渡渉やエディの有効活用でなんとか突破する。ここのゴルジュで結構水に浸かったこともあり、いい加減身体も冷えてきたので、本日は廊下沢手前の河原で幕営決定。

 

9/19(日) 快晴

快晴の中、7:15に幕場出発。朝のすがすがしい空気を吸いながら、イワナが優雅に泳ぐ清流の脇を進む。天然ダムであった黒五跡では、広大な河原がどこまでも続いている。右手に赤茶けた斜面に流れを落とすスゴ沢の姿を確認すると、いよいよ上の黒ビンガが出現。

上の黒ビンガは、下の黒ビンガ以上のボリューム感を抱えた見事な側壁で、思わず「ビンガ~ビンガ~♪」を熱唱。渡渉でそれほど困難な場所も無く、大自然の創りし壮大な渓谷美を心から満喫する。

10時前にビンガを抜け、薬師岳と北薬師の間のカールに端を発する金作谷出合に到着。上部には北薬師の岩峰群や雪渓の姿を望むことができ、中々のビューポイント。ここは例年遅くまで雪渓が残っているということで、雪の無いこの季節でも、草付きのラインや岩の転がり方から、その事実が確認できる。

金作谷出合から先が、上ノ廊下で一番泳ぐポイント。やや確保が欲しい様な渡渉でも、水流を見極めてガンガン泳ぐ。今回、普段の沢登りではまず考えることの無い、エディとストリームの見極めによるルート取りが功を奏したので、泳ぎ系の沢はボート関連のアクティビティの知識を導入する事で、パフォーマンスの向上が見込まれるはずである。ひとしきり泳いだ後は、焚火を起こして冷えた身体を温める。ここから先は困難な渡渉も無く、そのまま奥の廊下へと進むこととなる。

立石奇岩では、尺岩魚の比ではない巨大シャチに遭遇。よく見ると、シャチの浮き輪を持ったソロ登山者が歩いて下降してきている。話を聞くに、どうやら上ノ廊下シャチ下降にトライ中とのことだが、乗った矢先すぐに転覆するので邪魔以外の何物でもなかったとのこと。世の中にはとんでもない変態さん(褒め言葉)がいるものだ…。

薬師沢小屋手前の河原に幕場を張って、豆腐作りや焼きマシュマロを楽しみながら上ノ廊下最後の夜を過ごす。

 

9/20(月) 雨のち時々小雨

寒冷前線の通過の為、0時頃からポツポツと雨が降り始める。しかし朝には小雨になっていたので、様子を見て8:00に出発。出発から30分ほどで薬師沢小屋に到着し、上ノ廊下遡行成功を祝って写真を撮った後、再び源流の方へと歩を進める。小屋からは40分程で赤木沢出合に到着。ここで黒部源流組と別れ、美渓で有名な赤木沢の遡行を開始する。

赤木沢は思った以上に滝の連続で、登攀要素が皆無だった上ノ廊下の後だと新鮮。グラビアルートの為、巻き道も非常にしっかりしているが、我々は極力巻かずに滝中突破をガシガシ登る。赤木沢の核心となる35m大滝上の二俣で、双六の方へ進む「☓☓クラブ」の人達と別れ、単独遡行開始。

小滝を登り続けると、やがて沢は源流の様相を呈し、湿原を一跨ぎすると薬師沢左俣に入る。後はこの沢をひたすら詰めると、北ノ俣岳手前の登山道に到達。ガスで視界は全く無いが、気持ちの良い達成感に包まれる。北ノ俣岳山頂直下では、雷鳥様七匹御一行に癒される。山頂に到達すると僅かに遠くの視界も開け、色付き始めた山肌からは旅の終わりを感じさせる秋の気配を感じる。

ここからの下山路は快調に飛ばして折立まで二時間弱。登山口に到着した時点で、出発間際だったジャンボタクシーに相乗りして富山まで直行し、充実した連休の沢旅は幕を閉じた。(H光 記)

 

M田、O川行動

薬師沢小屋で、T濱夫人と分れ、赤木沢出合のナイヤガラの滝で、H光くん、☓☓クラブのお二人と、お世話になった気持ちの握手をガッチリ交わして分れる。

時折小雨の降る中、三俣山荘まで源流を3時間、早いペースだったが、疲れが出たようでぎりぎりいっぱいの歩行だ。だけど、と思う。良く予定通りに来られたものである。

山荘で伊藤新道の情報を聞き、今日のテンバプランを決める。首尾よく温泉を見つけられるか。上の廊下完終の上気冷めやらぬうち、もう関心はそっちに移っている。

伊藤新道は降り口が分かりづらい。三俣山荘から少し鷲羽岳方面に行き、右にトラバースするように、僅かな踏み痕を見つけ下り始める。石や草、細い外形した道。何回か滑る・転ぶ、ゆっくり行くほかはなかった。クロウスゴやコケモモの実が沢山あって食べながら歩く。特にコケモモは美味しい。20粒ぐらい手に乗せいっきに口に放り込む。新鮮な味がたまらない!

荒れた地肌の硫黄尾根がま近に迫り圧巻。やがて尾根道は、灌木と岩のミックスになって急下降。赤沢へ向けてグングン下る。降り切ると、文字通りの赤茶けた尖った岩がごろごろしていた。

赤沢出合まで下りてから湯俣川を硫黄沢方向に遡行し、乳白色の右岸の小沢に入ると、山荘で教えられた通りに温泉があった!湯は真っ黒でぬるめ。テンバを探しに一段上がると、なんと、更に、石でせき止めた大きな温泉があったのだ。こちらは、全体湯の花が溜まっている。湯は微かに緑色で暖かい。

温泉脇にタープを張る。こんな贅沢なテンバはまたと無いだろう。マッチーは、夕刻腹痛が出て、楽しみにしていたこの温泉に入れなかった。温泉湯で、スープを飲み、ポトフをつくり、卵をゆで、ポテトサラダをつくり、お茶を飲む。500mLビールで乾杯!

暗闇のなか、ひとりで時間を忘れるほど湯に浸かった。こんな長湯は生まれて初めて。星はなかったが、宇宙を漂う気がした。

 

9/21(火)(雨のちくもり)

夜半からの雨が止まず小雨の隙間に出発。前日よりやや増水している。始めの渡渉でロープを使った他、その後は、懸垂一回の使用。湯俣川を、飛び込み泳ぎを交え順調に下る。上の廊下での経験、スキルが生きる下降だった。

硫黄岳方面の荒れた地肌や、大岩からの水量たっぷりの滝、側壁の崩れんばかりの積み重なった大岩など、静かに美しくゆるゆると流れる上の廊下に比べ、湯俣川はワイルドな印象だ。

湯俣温泉まじかの”地獄”で、またもや温泉に入る。良い熱さ、二度目の”極楽”。ここでは、マッチーも入ることが出来た。
湯俣温泉からは、単調な道をひたすら歩く。トンネルを出ると、突然ダムが現れた。マッチーが嬉しさのあまり「ヘイタクシー!」と手を挙げて叫ぶと、ダム上の運転手さんが手を振って返してくれる。黒部湖から高瀬ダムまでひいたトレイル。特大の馬蹄形が完成した。

 

上の廊下雑想

奥深い北アルプスの懐の中、どうして出来たのか、これほどの大きな川が存在するのはどう見ても普通のことではないと思う。ビンガを代表とする崖に挟まれた深い谷、滝一つ無く、澄んで静かに、とうとうと美しく流れる上の廊下。

よく、日本を代表する沢のひとつ。という言い方を耳にするけれど、他の沢とは、入いれるカテゴリーが違う。比較しにくい特異さ、このことに注目。それは、あたかも自然の〝力〟の化身である龍(りゅう)に思える。深い谷に長々と静かに横たわり、川となって擬態している。

青く穏やかな流れにひとたび身体を入れれば、思いのほかの力強さに驚く。美しい罠にはまりかけたのだ。”龍の罠”。折り合いをつけながら、ある種戦いが終わったが、確かに相手がいたのだ。穏やかで美しく、神秘的な大自然の運動力を合わせ持つ上の廊下。特別な個性に魅了された。

今回、メンバーと同行者ひとりひとりの個性が上手くマッチして、とても雰囲気の良い山行と成りました。上の廊下を順調に遡行出来たのは、高濱、新井、両くんの泳ぎや水流処理スキルが有って、そのことによるところが大きいのではないかと思っています。

マッチーは、持ち前の明るさと、時に演じるパホーマンスで、雰囲気づくりに貢献してくれたし、テンバでの働きには頭が下がりました。H光くんは、突撃隊長として常にトップを行き、全体のスピードとモチベーションの維持に象徴的に貢献してくれました。T濱夫人は、ユーモアたっぷりで、チャーミングな方でした。

リーダーとしてのぼくは、何ひとつする必要がなかったです。最後にたっぷり自然温泉に入るというオプションまで付けてもらって最高の山行になりました。今後、もうみんなが揃うこと無いかもしれない、と思うとちょっと寂しい気がします。

夢のような4日間ありがとう。(O川 記)

 

感想 M田

以前から行きたかった上の廊下に行くことができ、とても嬉しかったです。実物の上の廊下は想像以上に美しく、澄んだ水の青さと力強い水の流れは、まるで川が生き物のように谷をうごめいているような・・・O川さんが龍にたとえていたのがよくわかりました。

複雑な水の流れを読みながらの渡渉は難しく、メンバーの助けがあったからこそ遡行することができたのだと思います。ハニワさん、タケさん、将軍さん、O川さん、H光さんありがとうございました。