朝、お洒落なボーダーや楽しそうなスキーヤーを横目で見ながら菅平のスキー場を歩く。今夜はワイン一升と鰹一匹とキリタンポ鍋なので重い。葱と芹の束がバイルより重いとS原さんから苛められる。

さて、本日は左岩壁の中央ルートです。去年、左ルートをO田さんと登った時、二段目の方が簡単だったので、今回もきっとそーだろーということで、私としては二段目を狙う。うまい具合にS原さんが一段目を行くとおっしゃるんでシメシメ~。

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【左岩壁 中央ルート】

◆1ピッチ S原 Ⅴ+ 30m
下は寝ていたが、途中から立って悪い氷になる。あぁ~リードしなくてよかった~。落ち口ミックスだし。
登り上がると目の前に巨大な蒼い氷柱がぶっ立っている。恐ろしい・・次ってわしの番?(・・;)

◆2ピッチ H明 Ⅵ 50m
これを登ると、もしかして夜になるから、止めましょうか?
と提案するが、今まだ13時半だよってM田さんがおっしゃるので、しかたなく取り付く。
出だしの鱗氷をなんとか登って、いよいよ!ド垂直が始まる。
30mはある。見上げてはいけない。まともに見たら恐ろしくて登れない。目の前の30㎝しか見ないことにしたが、時々遥か下が見える。みんなのメットが点だ。恐ろしい。力むから腕が壊れる。打ち過ぎるから抜けない、抜けないとヘンテコな体勢で喘ぎモガクから消耗する。

夜は、ししゃもと鰹をおつまみにひたすら飲む。私のキリタンポ鍋は大好評で、みんなで食いまくってるくせに、量が多いとか重いとか文句タ~ラタラ・・。そして、とうとう神の天罰が下りました。M田さんは、食用ではなく鑑賞用のハバネロをモロに齧ってしまいぇーした。そして、拷問が始まりました。ワイン飲みまくって、ようやく復活した、その次の瞬間、またまた齧りましたー。そして、またまた拷問がスタートしたのでした。

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【不動前 ロットの滝】

◆1ピッチ M田 Ⅳ+ 25m
M田さん、わざわざ、シャワーを浴びる岩窪でスクリュービレイ。M田さんは、全身氷漬けで札幌雪まつりの氷像のようになってしまいました。

◆2ピッチ S原 Ⅴ+ 25m
正面はシャンデリアでカシャカシャ。例年は右の氷柱を登るのですが、今年は繋がっていない。アバラコフで敗退した跡が2カ所もあるよ~って、S原さんにお伝えするが、お返事は「行きます。」そして、右トラバースして、一瞬!落ちそうになったりしながら氷柱の裏側に廻る。そして再び「行きます。」裏なんで、姿は見えないが、嗚咽と咆哮だけが聞こえました。
下山するともう春でした。

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<M田さんの感想>

【左岸壁中央ルート】

アイスの殿堂、米子不動、大谷不動、駆け出しアイスギャルには刺激が強すぎました。
先週もひえっ~って肝冷やしながら登ったのに、今回の大谷不動左岸壁中央ルートF2も見上げるとかなり大きい。
リードH明さんがヘロヘロになりながら抜け次は自分の番だ。
フォローなのに、なんだか怖い。気持で負けちゃってる。打つ氷は先週の米子龍神とはまた違う悪さなのだ。力つき、2度ほど釣られてしまった。

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【不動前(ロット)の滝】

『宮っちゃん、下段部分の氷、寝てるからリードしてみなよ』
6級の滝を登ってる人からみたら4級+は寝てるのだ。最近いろいろ連れてってもらってるおかげでグレードの違いがだんだん体感でわかるようになってきた。見た感じ西上州のエイプリルフールより立ってる。緊張して息がハアハアいいだす。そうなると体がなかなか動かない。左上に残置ハーケンを発見し、そちらへ吸い寄せられるようにリード。到着した場所はスカスカの氷。スクリュウーを打てるような場所を見つけられず、トラバルのも怖かったのでさらに上にあがりハンキング・スクリュウー・ビレイ。暖かくなってきてるので、水もじゃあ-じゃあ-。ロープも手袋もビチョビチョ、支点のシュリンゲとビナは氷つき、水もしたたりまくるいい女になってしまった。ビレイ点選択大失敗である。
上段部をS原さんリード。5級くらい。小声ではあったが、相変わらず吠えながら登っていた。アイスは強いハートも必要なんですね。今回は気持ちがすり減ってしまって5級のフォローすらもヘロヘロな一日でした。

最後に、アイスシーズンも終盤となりましたが、憧れの不動と名のつくところに行けて私は幸せもんです。まだまだ足手まといな状態ですが、今シーズン一緒にがんばってきた仲間(先輩)たちよ、来シーズンもよろしくお願いしまーーす。

<S原さんの感想>

【1日目:左岩壁中央ルート】
菅平、峰の原スキー場の左奥から遊歩道の標識に従って林間を小1時間ラッセルすると、前方の尾根にかかった氷柱が見え始めた。さらに林道に降りて30分程で、大谷不動の奥の院手前のテン場に到着。前週の米子不動に比べるとあっけないほどのアプローチだ。広いテン場は独占状態。先行するパーティーは1組だけで、本流から上に抜けたようだ。

テン場から不動裏の斜面に沿ってトレースを辿ると、こちらも20分ほどで左岩壁の氷瀑群が登場。F2 が特徴ある円柱型になっている2段の滝が、今日の目的の中央ルートだ。

F1: 40m, IV, S原
傾斜はさほどでもないが、ところどころに出てくる悪氷の処理が課題。落ち口の薄い氷に注意しながら登り詰め、細い雪のルンゼを抜けて右上の立ち木でビレイ。

F2: 40m, V+, S藤 傾斜の緩い基部から約20mの垂直の円柱型氷柱。後半ペースが落ちたところで「代わりましょうか」と声をかけると、予想通り俄然ペースが上がった。はい、失礼しました。

下りは立ち木で懸垂。F2から F1までの斜面では、F2基部に作った簡易アバラコフを使用。

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【2日目:不動前の氷瀑】
朝から好天。奥の院手前から「ロットの滝」の標識に従って林間を進むと、大きな滝が現れる。先頭のM田さんがまず一声、「よぉっしゃあぁっ」

P1: 30m, IV-, M田
凹角気味のルートを選んで堅実に登る。急な傾斜にも負けずに、安定した体勢から豪快にアックスを打ち込む。氷瀑中央をトラバースして、左岩壁のハーケン支点を目指すが、これはあまり良い選択ではなかった。上からしぶきが降り注いで凍りつき、M田さんはビレイする間にギアごと氷人形と化してしまった。

足元には凍りついたアバラコフが残置されている。誰かがここで敗退したようだ。見上げると、暖気で氷が緩み、確かに悪い。

P2: 30m, V+, S原
一度右にトラバースして、氷質の良い中央を登る。上部の垂直部は、右の氷柱がシャンデリア状で登れない。一旦左の氷柱の裏を登って、氷瀑の前面に出てから左上の立ち木を目指すが、高さ40mほどの空中に身を乗り出すところが核心。何とかスクリューを1本打ってひと息つくが、最後のトラバースも長い。途中から氷がなくなり、ミックス状で支点も取れず、文字通り薄氷を踏む思いで終了点に到達。いや~、楽しい。
S藤さんがぶつぶつ言いながら登ってきた後、最後に氷人形のM田さんが到着。立ち木から懸垂下降で終了。

今回の大谷不動は、赤岳鉱泉より短いアプローチで、BC から徒歩30分圏内に大同心大滝や摩利支天大滝クラスの氷瀑が多数並ぶ、絶好のゲレンデだった。右岩壁などにはミックスの名ルートもあり、ぜひまた訪れたいと思ったが、今後さらに好天が予想されており、来週登れるかどうかは分からない。

今シーズン始めの目標は、『不動』と名のつく氷瀑を登る」だったが、シーズン後半に米子、大谷と続けて登れたことは大きな収穫だった。リーダーを務めてくれたS藤さんと、負けずに同行してくれたM田さんに感謝。さあ、来週からはGWの準備で雪稜登攀だ。(S原)

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