メンバ:S原L S藤M

9/14(土)扇沢630-黒部ダム645-750内蔵助谷出合-BC設営-920緑ルート取り付き
1000登攀開始-1450中央バンド1530-1755大テラス上で終了-1930取り付き-2100BC

9/15(日)BC700-840黒部ダム-920扇沢

扇沢駐車場に前泊。降雨予報にも関わらず、夜半から満天の星空が広がる。
9月連休のため、6:30の始発バスに長い列ができている。そのほとんどが室堂に向かい、黒部ダムの登山者用トンネルを出たのは数名。クライマーは見当たらない。

重いザックを担いで日電歩道を辿り、小一時間で内蔵助谷出合へ。内蔵助谷の右岸には丸山東壁が朝の陽ざしを浴びて輝き、その中央に緑ルートの大ハングへとつながる垂壁が聳えている。

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■アプローチ
出合近くの看板のある広場にテントと荷物をデポし、取り付きに向かう。
事前情報では、内蔵助谷登山道が1ルンゼを過ぎて川を離れ、高巻きするあたりの「危険」表示のあるロープが目印。ところがそれらしきものが見当たらず、代わりに2ルンゼを詰めて右岩稜に出て、そこから藪を漕いで中央壁に戻ったので、30分以上時間をロスした。

頭上に三日月ハングのある取り付きはすぐに見つかったが、周囲の踏み跡は薄く、しばらく人の通った形跡はない。今日も東壁全体に人影はなく、終日貸し切り。
気を取り直して支度を整え、登攀開始。中央バンドまではトポ本では7Pだが、記録を調べて、時間短縮のため5Pで登ることにする。

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■1P目:40m III-A1 S藤 湿った凹角の右からフリーでスタート。最初のピンまで約5mと遠いが、ホールドの少ないフェースを確実に登っていく。途中からホールドがなくなり、人工登攀になる。一度右手の扇ハングルートに行きかけて戻り、左上の小テラスまで。S原はスピード重視で、アブミを使わずA0でフォロー。

■2P目:35m IV-A1 S原 ほぼ直上するラインを人工で登る。時々ボルトの遠い箇所もあるが、よく探すと草むらにピトンが隠れていたりする。ハング下の小テラスでビレイ。

■3P目:45m A1 S藤 前半の核心、三日月ハングを軽快なアブミさばきで乗越す。ほとんど初めてのアルパイン人工とは思えない、落ち着いたリードぶりだ。ハングを越えて、さらに10mほど上の安定したビレイ点まで。

■4P目:40m A1 S原 ややかぶり気味のフェースを人工で登る。途中の草付きでピンの遠い箇所がある。草もまばらで、束ねても支点にはならない。ここは手製のチーター(通称「ちょんぼヌンチャク」)を伸ばして頭上のリングボルトを捉え、一息つく。3点ほど並んだ一番左上の支点でハンギングビレイ。

■5P目:40m A1-III S藤 一旦直上してから右手のカンテに移り、小ハングを乗り越え、急な草付きを登って中央バンドまで。

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中央バンド右端には「ホテル丸山」の岩小舎が見えるが、草が生い茂った入口が暗く、ちょっと敬遠したい気分。ここでビバークした記録も多いのだが、今夜は雨予報なので先を急ぐ。時刻はほぼ予定通りの15時。今日中に大ハングを登って下降するにはぎりぎりだ。

中央バンドのトラバースもちょっとした藪漕ぎになる。足元が濡れて滑るので、念のためにロープを使う。途中ダイレクトルートの支点を過ぎて、バンド左端を直上する凹角の右壁が大ハングへの取り付き。
だが、壁が2m近く切れており、空中からのスタートになる。高さ約2.5mの最初のピトンにスリングをタイオフしてアブミをかけ、さらにその上のボルトにもプリクリップする。ここでも特製チーターが役に立った。最後の2Pはザックを置いて、スピードアップを図ることにする。

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■6P目:25m A1 S藤 ボルトラダーを大ハング直下まで。最後の数mがホールドの少ないフリーになり、緊張する。少し時間がかかったが、よくリードしたものだと感心する。

■7P目:25m A2 S原 緑ルートの核心、大ハングの凹角を縫って左上する。最初からルーフ登攀になり、不安定な体勢から身体を伸ばしてピンをつないでいく。全体にピンは豊富だが、浅く入ったピトンが折れた記録もあり、根本にタイオフしながら慎重に進む。抜けかけてお辞儀をしたボルトも多い。ここではリベット・ハンガーが活躍した。
1箇所壁を乗り移る場面でピンが遠い。前方のクラックにエイリアンを効かせ、恐るおそる体を引き寄せて前進する。ハングを乗り越えた左上の終了点を目指すと、最後の1手がまた遠い。が、草陰に隠れたピトンを探し出してひと安心。

大ハングの上にも2Pあるが、木登りや草付きが増えるとのことで、記録の例に漏れずここで終了とする。

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■下降
S藤が到着したところで懸垂開始。
空中懸垂1回で中央バンドに着き、バンド右端に戻って登攀ルートを逆に辿る。一旦は空が夕焼けに染まり、明日までの好天を期待させたが、日が暮れるとともに雷が鳴りだして、にわか雨がぱらついた。

ナメ滝と化した傾斜の緩い下部岩壁を、手間取りながら計5Pで下降し、取り付きに戻った時にはすっかり暗くなっていた。幸い雨は小降りになっているが、藪蚊が群がってくるのには閉口した。

往路に使ったアプローチは、濡れた岩のトラバースがあるので避け、ヘッドランプを頼りに、わずかな踏み跡を辿って1ルンゼ方向に下る。トレースはあるのだが、草が生い茂って非常に分かりにくい。1ルンゼからアプローチして迷った記録が多いのも無理はない。

ようやく草むらから白い岩の1ルンゼに出て、登山道に戻る。出合のテントに戻った時には21時を過ぎていた。出合で新鮮な水を補給し、身体を拭いてさっぱり。

快適なテントで遅い夕食をとり、200m超の岩壁を登りきった余韻に浸りながら、ゆっくりと身体を休めた。

夜半にまた雨が降ったが、翌朝は薄曇り。雨に濡れたギアとテントで重いザックを担ぎ、黒部ダムへの長い帰路についた。

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■ギア類
ロープは60m。クイックドロー各自12本は、長いピッチでは少しピンを間引いてもぎりぎり。カムはエイリアン緑~BD#2+リンクカムを持参し、ランナーやビレイ点補強にほぼ一通り使用。ナッツは使用せず。ピトン、ボルトキット、ハンマーも使用しなかったが、想定外の下降を強いられる場面があれば、必要になった筈だ。

アブミには二人ともサブエイダーとリベット・ハンガーを装着。遠いピンや浅いボルトで重宝した。ピンの遠いフェースでスカイフックを試したところ、壁の状態によってはスムーズに前進できた。

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■S原所感
今回は初見同士のメンバーで、アプローチが心配だったが、事前情報と良好な視界のお陰で大きなロスがなく助かった。またS藤はフリー登攀に加え、最近始めたばかりの人工登攀もスムーズで、ほぼ予定通りのクライミングができた。あとはルーファイの経験かな?

今回の最大のポイントは、天候の読みだったかも知れない。台風と雨雲が迫っており、土曜午後から雨の予報もあったのだが、今、一番精度が高いと言われる「GPV天気予報」で夕方まで晴れると読み、ビバークなしのワンデー・トライとしたのが、結果として良かった。荷物を軽量化してスピードアップできた。

よりスムーズなアプローチなど、いくつか教訓もあったので、今後のクライミングに活かしていきたい。

■S藤所感
数年前の自分では、人工ばかりの“丸東みどり”に行く日が来るとは思ってもみませんでした。ですが、お盆の雲稜に行くにあたってアブミの練習を始め、人工ができることも、選択肢が増えるということなんやなあと思うと楽しくなってきました。雲稜ではリードをする機会はありませんでしたが、S原Lより丸東のお誘いを頂き、せっかく練習したアブミのルートを登るチャンスだと思い、ご一緒させて頂きました。

ピンが比較的近く、垂直までは易しい箇所も多く、むしろ三つ峠での練習の方が難しいくらいに感じました。大ハングはやはり難しく、私がリードしていたらきっとビバークになるところでした。懸垂を始めてからみるみるうちに暗くなり、雷が鳴り出し、雨が降り出し、降り過ぎて下降点がなくなった瞬間は、負のスパイラル過ぎて死ぬかと思いました。初めての暗闇懸垂で、終始心臓が飛び出しそうでした。そんな中、冷静に導いてくださったリーダーには、本当に感謝です。どうもありがとうございました。