メンバー:S藤L K池 M上

一年中、車両通行止めになってしまったアプローチ道をテクテク歩いて、幽ノ沢へ入る。濡れるつもりはなかったのですが、M子さんは滑りそうなところでやはり滑ってドボンと泳いでしまう。M子さんの7年熟成の沢靴のフェルト底は殆ど消滅しておりました。
左俣の滝は右から巻いて、沢の左尾根を登る。中央ルンゼへの下降点の少し先から懸垂して美しい沢床に降りる。
突然、壮絶な景色が目に飛び込んでくる。天高く一条の白い線が垂れてる。あーんなとこ登れるのでしょーか?雨でも降ってくれれば敗退できるのだが、うーーん降ってくれない。登るしかないかぁー。

しばらくは、スタスタと歩いて、傾斜が厳しくなってきたところで、沢靴からクライミングシューズに履き替え、いよいよザイルを出す。

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■1pitch H明 40m かんたん
朝一なんで緊張するし、恐い。ビレイはエイリアンとナイフブレードとロストアロー。ピンなんて全くなし。

■2pitch K池 50m かんたん
K池さん、水流を跨ぐところでハーケンを一本入れてたが殆ど効いてなかった。つまり50m完全にランナウト。ここもハーケンでビレイ。

■3pitch M子 60m かんたん
M子さん、ひたすら真っ直ぐに登って行く、既に50mくらいも伸びて、姿が小さな点になっているのに、さらに巨大な垂壁に齧り付き始めたので、大声で「も~やめてぇ~」って叫んでピッチを切って貰う。ハーケンでビレイ。

■4pitch H明 30m 恐ろしい(このピッチ、普通は存在しません。修正ピッチ。)
垂壁の弱点を突くべく右トラバース。最初っからコッチ(左)方面に登って来て欲しかったなぁ~。ハーケンやイボイボを5ヶ所もぶち込んで、下り気味の恐いトラバースに耐える。後続はスタスタ来る。カムとハーケンでビレイ。

■5pitch H明 15m やや困難
どうみても壁の弱点、残置がたくさんありそうなもんだが全くなし。出だしに一枚&途中にもう一枚、効いていないかもしれないハーケンを入れる。ガバ見つかると難しくはないのですが、やはりランナウトが気持ち悪い。

■6pitch K池 50m かんたん
高度感が半端じゃなくなって来た。なんとも恐ろしい。ビレイ点は下から見ると大きなテラスに見えるが、辿り着くと、外傾した狭いバンドでした。ハーケンでビレイ。

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■7-8pitchH明 50m 絶悪地獄
誰も行ってくれないので、H明が行く。ノーピンで垂壁を10mほど登る。ホールドもスタンスも乏しい・・と思ったが結構あるある。オンサイトとランナウトで気持ちがシュリンクしている。
錆びたボルトと腐ったシュリンゲが現れたところで「も~降りるーー~!」と泣き叫ぶが、下から「右右右ー!右ー」って指示されてしまう。新しいビナ残置するのって勿体ないわよねーみたいなこと言ってるし。
腹を括って、5メートルほど右トラバース、とっても恐ろしい、小さなスタンスを微妙に拾ってジリジリと進む。途中、軟鉄とイボイボを重ね打ちしたが、効いてたかどうか。
緊迫のトラバースを終えて頭上を見上げると、絶望的なクラックというかチムニーというか汚い凹角がぶっ立っている。も~勘弁して欲しい。

凹角の入り口、僅かなリスに最小のエイリアンが入った、が、もしも、落ちたら空を飛ぶでしょう。勇気をふり絞って二手上がってロストアローを決める、そこそこ効いているかもしれない。さらに三手で紫のリンクカムが完璧に決まった。ふーー・・一安心。さらに一手上にフレア気味だが3番が入った。これで死なないかもしれない。
しっかし、次の一歩のために誂えたような希少なガバがぐらっと動くではないですか!このガバを使わないと登れましぇん!涙目でふと見ると泥の詰まった汚い割れ目に指が一本だけ入るじゃーないすか!これを使って体を少し上げると上向きのクラックというか岩の欠けた穴に青のリンクカムが入りました。
数手上がると、チョンボ棒があれば問題なく届く高さにボロボロの残置ハーケンを二本見っけ。しかし、今回はチョンボは持って来ていない。で、気合で小さな外傾スタンスにそーーーっと乗って、体を伸ばしてヌンチャクを入れる。ふーっ。これに恐る恐るA0してもう一本の残置にもランナー入れる。お~安心・安心ー。
二本のハーケンのうちの揺れていない方のハーケンに簡易アブミを掛けて凹角からリッジに出る。

ところが、ここからが地獄の苦闘でした。岩登りはカンタンになったものの、ザイルの流れが卍なんで、重いというか全く動かない。しかもしシュリンゲを使い切ってしまったのでランナーがとれない。(途中マトモな終了点を見い出せなかったため2pitchをまとめて登ったからです。)
重い重い卍ザイルを必死にズリ上げては、口にくわえて数歩登る、これの繰り返し・・消耗しまくる。汗びっしょり。
左手から尾根が合流してきたあたりで輝く灌木を見っけた。傾斜はまだまだキツイ。
ランナウトしているから落ちたら飛行する。慎重に慎重に丁寧に丁寧に進む。難しくはない。灌木までジリジリと進んで、なんとかかんとかビレイ解除!!
ザイルが重くて上がらないので、後続にはユマーリングして貰いました。長い間のビレイ誠にありがとうございました。

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これで、大滝登攀はとりあえず終了。しかし、傾斜はまだまだある。時間も押しているので、尾根を辿って稜線に出ましょ、ということにする。隣の中央ルンゼの洞穴ハングがかなり高い位置に見える。ということは、まだまだかなり低いところにいるけど、暗くなっても肩ノ小屋くらいには着けるでしょ、水も途中、沢に降りれば汲めるでしょ、というゆーことで、間違って落ちたら空を飛ぶくらいに急な笹尾根(滑る!)をスタカットで漕ぐ。
しかし、灌木と笹藪に両腕でぶら下がって、5ピッチほど登っても殆ど垂直の尾根は延々と高く高く続く。
ふと考える・・そうだ~!!我々は奥壁ルンゼの左尾根を登ってしまっているのだ。
つまり、目指すべき標高1650mの堅炭尾根のコルではなく2000m弱の一ノ倉岳に向けて、距離と高さを延々と強いられていたのです。

そして、とうとう暗くなってしまったし、濃いガスも出てきた。小さな平坦地に出るが、どうも先がスッパリと切れ落ちているよう見える。右も左も切れているように見える。白いガスにヘッドランプの灯が反射してなーんにも見えない。
偵察に出ると、尾根は、痩せて鋭いナイフ状の岩稜になっている。基部のトラバースも左右とも繋がっていない。明るくならないと何もかもよく判らない。ふと時計を見ると・・うひゃ!22時!
ビバークを決断をする。女性陣はチェストハーネスを作って、確保されながらトイレを済ます。喉が乾くが水は最後の一口づつしかない。しかるに酒も飲めない。数万日ぶりの健康的な休肝日となる。
羽毛服を着込んで乾いた雨具を着て、3人並んで、大型のツェルトにお尻~背中~頭~爪先とぐるぐるにくるまって横になる。温かい。左に人妻、右に元人妻が密着なのでとても幸せというか緊張する。
ウトウトしながらも喉が乾いているので水の夢ばっかりを見る。深夜はポツポツ降られたり、時折、強風が吹くが大したこともなく5時には起床。

さて、朝、①懸垂で大滝上まで降りて再び沢通しに登り返すか、あるいは、②さらにそこから大滝そのものを懸垂で降りるか?、あるいは、③今乗っている尾根を忠実に辿り途中から右の小さなルンゼに降りて山頂を目指すか?
しかし、大滝上まで戻るには懸垂で6ピッチはあるだろう。また、大滝そのものは支点が脆弱というか無いので下降は危険、ボルトを埋めるにしても、大変な時間を要する。また、下流で台風直撃を喰らったら大増水に打たれて死んでしまう。一方、尾根の岩稜通しは先が読めない無謀な賭け(支点がとれない)になってしまうかもしれない。
そこで、①も②も③もナシにして、灌木が上まで繋がっているように見える右隣の楽ちんそうな尾根に乗り移ることにする。そのためには、先ずは、右のルンゼに向かって20mほど懸垂しなくてはならない。
懸垂で降りた平坦地には、嬉しいことに(昨夜から水の音が聞こえていて、幻聴かと思っていたが)おいしい湧き水が出ていた。助かったぁ~、グビグビ飲んで、行動水を補充する。

懸垂ザイルを残して隣の尾根に偵察に出る。行けそうと慎重に判断してからザイルを抜く。もう戻れない。右下に奥壁ルンゼの上部とおぼしき沢が見えるが、遠目で困難度が読めないので止めときました。
再び、落ちたら1000mは転がり落ちそうな垂直の藪を延々と漕ぐ。振り返ると自分たちがビバークしたピナクルのテッペンが見える。タタミ2畳くらいの突端で3人で寝ていたみたい。恐ろしいやら嬉しいやら。
4ピッチほどスタカットで登っていると雨が降り出す。長い時間ビレイしていると寒いし暇だしで、少し傾斜も緩んだので、ここからは、ザイルを解いて各自・自己責任で登ることにする。

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ところで、冬はラッセルマシンの異名をとるK池さんですが、夏は藪漕ぎマシンと化すのでした。K池さんの通った跡には完璧な道ができるのです。ですから私は常に最後尾を辿るのでした。
途中、何度か巻けない露岩や段差にぶちあたるたびに、藪キラーのK池さんにワンポイントでザイルを引いて貰うのでした。大助かりでありました。
そして、遥か彼方に見えていた稜線も随分と近くなって来た。最後の最後、灌木がブカブカと浮いた厭らしい垂壁にぶちあたる。K池さん、丁寧に丁寧に登ってくれて、ビレイ解除。(フォローしたがとっても難しい。)
そこから、少し進むと、突然、視界が開け、バーチカルの世界から開放される。足だけで歩けるノーマルの世界になる。天国気分で笹を漕ぐと堅炭尾根の登山道に飛び出す。お疲れさまーの抱擁&握手。時計を見ると14時45分、じぇじぇじぇー。

下山は、一ノ倉岳からオキ耳・トマ耳を経て、台風接近で誰もいない肩ノ小屋を覗いて、最も安全な天神尾根を辿る。ロープウェイの時間には全く間に合わず。冬に使うスキー場の林間コースを探すがなかな見つからず、結構な時間をロス。ロープウェイ駅の係の人に降り口を教えてもらって小走りで下る。疲れているのでH明と
M子さんは何度も転倒する。K池さんは強い!全く転倒しない。
19時45分、下のロープウェイ駅に到着する。全員フラフラのヘトヘトでしたー。
さて、夢にまで見た待望のお風呂、湯テルメは間に合わず、ネットで調べた「ぬまた健康センター」へと向かう。24時間営業で、タオル&バスタオル付きなのにたったの500円!だが、墨の入ったお兄さま方がたくさんいらっしゃって、私のサンダルを勝手に履いてタバコ吸っていたりして、なかなか緊張しました。
セブンイレブンでお酒のおつまみを仕込んで、土合の駅に戻って、打ち上げの宴会をスタート、頑張って24時くらいまで飲むがいつしか意識不明となる。
台風接近のため、ロープウェイの駐車場には一台の車も人もいませんでした。土合の駅に唯一組、停滞しながらソロで一ノ倉の南稜をやるという爽やか系の少年(若い頃の私のようです。)とそのサポーターのような男女がいました。少年は未来の山野井さんでしょうか?

朝、起きたら、外は猛烈な嵐、こんな時、山の中にいたら大変なことになっていましたな。殆ど飲まず喰わずの二日間でしたから、少し痩せました。久しぶりに全身ゴキゴキの筋肉痛にりました。
水上インターでM子さんとお別れして、お腹すき過ぎて、冷し中華を食べたばっかりなのに、直ぐに醤油ラーメンを喰ってしまいました。