ルート:穂高屏風岩東壁ルンゼ
メンバー:A山、H本(会員外)

8/13(火)
6時起きで上高地へ。最高の天気のなか、横尾へ。
新村橋で前穂東壁を見るといやおう無く気分は高まる。
横尾到着。ぶなテンを探しているとN野さん発見。
「?」だったが、今日はレスト日ということ。みんなで連れ立って渡渉点を確認しにいく。
いろいろ探したが、結局目の前でフツーに渡渉していく年配クライマーに準じて渡渉。
その後流木で橋が作れないかとH本さんと無駄な抵抗をしてみたがだめ。
A山は作りかけの橋で渉ろうとしてバランス崩しどっぷんするはめに。
でもなんだか水遊びに興じるおっさんみたいで気が晴れた。

8/14(水)
本番当日。2時起き。
寝てる間も、食べている間も渡渉のことが頭から離れない。
テントで寝たT塚さん、まみすけさんとともに朝食。
しっかり食べておく。この先いつ食べられるか分からない。

3時出発
思い切って渡渉。奇声を発しながら。
ネオプレーンを履いているH本さん、靴下はいているT塚さんは平気だったようだ。
まみすけさんは裸足でも無言で堪えている。本当に彼女はえらいなあ。

1ルンゼ押し出しを登りきり、T塚さんまみすけさんとお互いの健闘を祈り、こちらは取り付きまで下がる。
それなりに悪いが道はこなれている。何Pか入っているようだ。

P8141431
いつものリングボルト一本のスタート地点に到着。
登攀開始5:15(以下デジマルグレードはA山体感)

1P目Ⅲ<5.7>40m(A山リード)
コケは生えているけれども快適の一語。凹角途中でピッチを切る。

2P目Ⅳ<5.9>40m(H本リード)
そろそろ感覚が戻ってくる。そうだ、ピンは極力ない。
カンテを乗り越したところがビレイ点。

3P目フリー<数歩5.8>からA1、40m(A山リード)
ノーピンのところを少し右上し、A1開始。
3年目にボルトが飛んでいて打ちなおしたヤツがきれいに残っている。
「今回もありがとう。今度は上までいくからね。(もう会わないよ!)」
三日月レッジへトラバースしてビレイ。

4P目A1時々フリー<5.9>30m(H本リード)
浅い凹角にフリーで取り付き、ピンをほじくりだしてA1。いつものロシアンルーレットが始まる。
垂壁を乗り越したところでビレイ。

5P目フリー<5.8>のちA0、トポではⅣA1、30m(A山リード)
左上するバンドをフリーとA0で渡る。
乗り越したところにある垂壁は左に巻いて、細い潅木をタバにしてビレイ。

6P目急峻なブッシュの登攀60m<5.7>(H本リード)

7P目同じく50m<5.7>(A山リード)
ブッシュとは言え、バカにできない。支点は取れないし、岩がもろい。
T3に到着。この時点で10時。
10時に到着しないと完登は難しいと見積もっていたので良いペースである。
ただ、日照り状態。暑い。暑すぎる。水を我慢しないといけないのでとちょっとだけ口に含む。
すぐに飲むことはせず、口の中を回することで、節約する。

上を見ると上部壁2P目に1P取り付いている。
「遅い!」
ヤバイ。彼らに頭を押さえられたら完登はおぼつかない。
「またいけないのか」という言葉が頭をよぎる。

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~ここから上部壁~
8P目ⅣA1、30m(A山リード)
フリーで行くと10aのピッチ。
H本さんが「二人とも過去リードしているから、今回はフリーの強いA山さんで。」と発言。
本当は暑くて休憩モードだったのだが。。。
体感グレードは10aA1。ボルトは極力押さえられている。つなぎのフリーだけでも10aはあり。
ハングに頭を押さえられたところで右に回りこみ脱出。

ビレイ点に着くと、先ほどのPが下降してくる。
見ると昨日目の前でフツーに渡渉していた年配クライマーだ。
「難しいので降りた」と言っていた。
ただ、会話はあまりできなかった。それほど暑い。暑すぎる。

9P目ⅣA1のちA2、30m(H本リード)
最後に2mの庇があるピッチ。1年目に庇のリングの無いボルトの穴に必死で3mmスリングかけたところだ。
遠くて手が届かずダブルフィッシャーマンができず、片手で単純な「玉結び」で切り抜けたところだ。
H本さんは順調に登って行く。8P目で多少弱気な発言をしていたので、H本さんは庇の前で切るのではと思っていた自分が恥ずかしい。
フォローをして庇の上を見ると、、、あった新品RCCだ。でもだからとは言って簡単ではない。
その隣のラープ、ちょっと上のシャフトだけのボルトも活用して、ひいひい言いながらビレイ点へ。

10P目Ⅳプラス<一手10a、その後5.9混じり>A1、40m(A山リード)
ビレイ点から左上したあとの、ちょっとしたテラスからの一手が悪い。
上にボルトはあるのだが、下のボルトからでは届かない。
それもシャフトだけ。しかも頼りなげな腐った3mmスリング、それも切れたのがぶら下がっている。
意を決して、ボルトの左のホールドに飛びつく。予想通りガバでよかった。
その上のボルトにフィフィかけて、下のボルトを整備する。
腐ったスリングがボルトの首を隠しているため、リベットハンガーがかかりにくいからだ。ナイフでこじって整備する。
ついでにH本さん用に小さいナッツもかけておく。

そのとき急にわかった気がした。
「ガバのあるところにはボルトがない。これこそこのルート開拓者(南さん)の心意気だ。」と。
登れないからと言って、岩を見ずにボルトやハーケンを打ったり、精神的に負けて人工している人たちに声を大にして言いたい。
「日ごろのトレーニングをベースにして、ルートに真摯に向き合うことで開拓者の精神を学び取り、その心を理解してほしい」

左の凹角から右のフェースに抜けビレイ。
セルフを取った瞬間、先の開拓者の精神が自分を貫き、大声が出た。
「絶対登るぞー!」

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11P目20mⅣ+(5.9)A1(H本リード)
A1で6mほどあがったあとに左の凹角に入る。N藤さんから「右には行かないよう」とアドバイス受けたところだ。
凹角にはちょうどよい感じでピンがある。でもアドバイスがなかったら見るからに迷うところ、おまけにブッシュがあるところにピンはない。

12P目30mⅣ(5.9)A1(A山リード)
ブッシュを強引に突っ込んで抜けたら大きなフレーク。
フレークの縁はガバなので、それに沿って登っていると右のビレイ点らしきものに来てしまった。
これだとへの字ハングの右端だ。行き過ぎている。ビナを残置し、一本でロワーダウン。
正規のルートに戻った時点でセルフをし、ロワーしたロープをハーネスからはずし、落とさないように気を配りながら回収。
H本さんはA山が何をやっているかわからないだろうなあと思いながら作業を進める。
既に時間は17時を回っている。登り始めて12時間。手元に注意していないとよからぬことが起きそうで自分を叱咤する。
作業後正規のビレイ点でビレイ。

13P目20mA2(A山リード)
H本さんへとへと。「もうリードは無理」と言う。ちょうどここにはよっさんとN藤さんがビバークしたテラスがある。
かなり迷った。あと残り3P。暗くなる前に登りきれるか。
H本さんに聞く。
「いけるところまでいってみようや」
論理的ではないが、気持ちがわかる答えだった。ここでのビバークはすっぱり切った。

急いでロープを裁き、ハングにつっこむ。
時々大声を出して自分に気合を入れる。絶対登るぞ!心にはそれしかない。
ハングを大声出しながら乗り越し、フェースに出たところで雲稜上部を登っている人が写真を撮ってくれた。
感謝の声を出すほど力が残っていないので黙礼する。

14P目40mA1からフリーⅣ-(5.9)(A山リード)
時間が無い、時間がない。いままでのⅣと書かれているところもⅤはあった。
それを暗くなって登るのは至難だ。はじめのA1をダッシュで登る。
しかし急にピンがない。見ると上に木の根がある。木肌が取れ、つるつるの根っこ。いかにも持ったら折れるか頼りなく抜けそうだ。
でも他に方法がない。意を決して握ってみる。しっかりしている。思わず「ラッキー!」と叫ぶ。
その後にも微妙なフリーがあったが右上したところに終了点のぴかぴかのRCCがあった。
そのとき19時。ぎりぎり間に合った。H本さんはヘッデン登攀してくる。

終了点からも侮れない。幸いお互い元気だったので、できるだけ上に行くことにした。
ブッシュ帯も登るにつれ傾斜がゆるくなってきた。
ピンクのテープがところどころにあり、暗いながらも道もよくわかる。
21時に平坦なところを見つけたのでビバーク体制に入る。行動開始から18時間経っていた。

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8/15(水)
よく寝た。疲れていた。
それなりに寒かったがレスキューシートがあったので早く朝が訪れた。
6時半行動開始。1時間で屏風の頭。でも感覚的には2時間くらいだった。
ケルンでがっちり握手。

パノラマコースで涸沢へ。昨日みんながあげてくれたテントを発見。
H本さんは水バテなので、A山だけが横尾に降りることにし、10時半涸沢発。
14時半に戻ると、小屋のテラスにみんながいた!

皆で祝杯上げたことは言うまでも無いことでした。
天候に感謝!それよりもなによりも仲間に感謝!

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