メンバー:F、S口

北アルプスは笠ヶ岳の東側にある穴毛谷二ノ沢右俣あけぼの壁「夏休みルート」(1984年7月初登)をオールフリー、オールナチュラルプロテクションにより登ってきた。

あけぼの壁は、穴毛谷の二ノ沢を入り右俣を詰めた右岸に立つ大きな岩壁で、左側のドリュ状岩壁と右側のあけぼの壁がある。新穂高からも朝日を受けたこれらの岩壁が眺められるのだが、Fさんの話では夏休みルートを含め拓かれているルートは初登以来ほとんど登られていないだろうとのこと。

P7300012写真中央の縦長の日当り部分がドリュ状岩壁
アプローチは、穴毛谷にいくつも造られた砂防堰堤の間を渡った先にある二ノ沢からして滝の登攀や雪渓処理もある沢登りで気が抜けない。二ノ沢右俣を詰めるにつれ、そそり立つあけぼの壁が迫力をもって迫ってくる。

P7300029
今回トライする夏休みルートは、人工登攀も交えて拓かれたルートだが、今回、Fさんが登るに当たっての考えは、ひとつにはフリークライミングで登ること、ふたつめはランナー・ビレイ支点とも残置はもちろんハーケンも使用せず、極力カムやナッツといったナチュプロだけを使用するというもの。
そのうえで、一日で完登するのは難しいとのことから2つの案が示された。ひとつには、初日にロープを伸ばせるだけ登ってフィックスしたロープで懸垂下降して取付に戻り、2日目にユマーリングして残りを登攀するというもの。もうひとつは途中壁の中でビバークするというもの。
後者の場合、ビバーク時を含む2日分の水・食料や装備を担ぎ上げる必要がある。結果後者を選び、登攀を開始する。60mダブルロープを使用。

P7300035 1P目をリードするS口
※以下、最初のピッチ数は今回のもの、[ ]内は体感グレード、( )内のピッチ数・グレードは「改定日本の岩場(下)」(白山書房)記載のもの(1~2Pはバリエーションのため記載無し)、名前はリード者

・1P [5.7] S口
1P目のラインが判然とせず、またどこでも好きに登ってとのFさんの言から、ロープを解いた場所から登り始める。垂壁の中の適当な短いクラック状を選んで直上。フォローは10数㎏のザックを背負う。

P7300038 1P目、S口が夏休みルートの左から取付く。写真はフォローのFさん
・2P [5.6] F
オリジナルのずっと左側から取り付いてしまったため、右へトラバースして黒いスラブの左側の凹角下へ。オリジナルラインに合流。フォローはザックを背負わず、登りながらロープで引き上げる。

・3P[5.10c](2P 5.10c AA1)F
黒いスラブ左側の凹角を登る。ハング気味のところを乗っ越すのにムーブを組み立てる必要がある。ポケットをうまく使うこと。

P7300055-2 4P目をリードするS口
・4P[5.7](3P ⅤAA1)S口
短いチムニー状の凹角では右上のクラックでフィストからハンドがきまる。その先、ハンマーのピックで土を掘り深さ1㎝の溝に気休め程度のマイクロカムをきめてからランナウトするスラブでは絶対に落ちられない。

・5P[5.7](4P Ⅳ+AA1)F
途中のテラスを今夜の寝床としザックをデポ。テラス右端の凹角を登ってロープを伸ばす。夕刻が迫り、ダブルジェードル直下でロープをフィックスし、懸垂下降でテラスに戻る。

P7300065 5P目(オリジナルの4P目)をリードするFさん。写真左下のテラスが今夜のビバーク地
○ビバーク
横長のテラスには腰高フレークの水平クラックがあり、ロープをテラス全幅に渡って張る。テラスを整地しタープを張る。ハーネスを付けたまま張ったロープからセルフビレイを取り寝る。無風。夕方からガスった空も夜のうちに再び晴れる。

P7300080テラスにタープを張り今夜の寝床とする。落ちないように寝る時の固定ロープからセルフビレイを取る
翌日、ロープをフィックスした5P目をFがユマーリングして上がり、S口がフォローで続く。

・6P[5.7](5P ⅣAA1~6P Ⅳ)F
頭上のダブルジェードルの右を登り、左上して南東カンテを越える。

P7310092 昨日ロープをフィックスしたところから、6P目ダブルジェードルの右側をリードするFさん(オリジナルラインの6P目の南東カンテ越えまで)
・7P[Ⅲ](7P Ⅲ)S口 <プアプロの緩傾斜スラブ>
緩傾斜のスラブだがほとんどプロテクションが取れない。

・8P[5.7](8P Ⅳ+AA1)F
上下2階建てのチムニーを登る。上のチムニー内面は濡れている。残置キャメ2番あり。

P7310103 8P目チムニーをリードするFさん
・9P[5.7](9P ⅣAA1)F <蛇腹状の右の凹角からブッシュへ>
見上げると蛇腹状のような右上の岩の凹角からブッシュ帯に入ると登攀終了。

○下降
終了点からヤブ漕ぎし、ブッシュの中を2ピッチ斜めに懸垂下降。そこでNEW DAWNの終了点に至り、空中懸垂3回でニノ沢右俣に降り立つ。ガレガレの右俣を下り荷物を置いた取付に戻る。

P7310125NEW DAWN終了点から空中懸垂を3回
今回、フリークライミングはもちろん危険回避やルーファイなどFさんの様々な判断・技術には目からウロコの感心しきりで、100回くらい反省と勉強をしました。

なお、ルート図は「改定日本の岩場(下)」(白山書房)をご参考ください。
(S口)