初日、林道8㎞のアプローチ&ラッセルで疲れ果て、加えて滝までの偵察ラッセルで疲れ果て、ヘロヘロ過ぎて、重たかったワイン一升を飲み干せず。

アタック日は、朝から吹雪でメゲル、暗澹とした気分で泳ぐようなラッセルに励んでいると、コブラとアナコンダがドカーンとお出まし。
そして、その先に、本日のお目当ての「龍神」様が巨大かつオドロオドロシクぶっ立っている。
視界がないくらいの吹雪、胸ラッセル、チリ雪崩の爆音、これは、当然、敗退です。
さーて、帰ろうかなって思ってたら、S原さん、ガチャ着けてる。そして絶叫「よっしゃーぁぁぁー!」だって。
氷は110mもあって、心底、参りました。寒くて寒くてぶるぶる震えながらの登攀でした。
ハングあり長めのバーチカルありで、中高年トリオ的にはかなりやられました。

■1ピッチ(S原)30mⅥ+
S原さんが立候補してくれたので安堵&安堵。しかし、苦戦してる!?”ランナウトー!”って叫ぶと”そんな余裕なんかネー!”って微発狂。氷の洞窟でスクリュービレイ。えっ!そこまで?じゃ次って・・もしかして・・わし?
フォローしたけど、こりゃⅥ+だわ!ハングだし細いカンテだし、リードじゃ死んでしまう。

■2ピッチ(H明)40mⅥ-
氷の穴からソロリソロリと出て、垂氷を恐い恐い横トラバリ。
そっから10mくらいがドバーチカル。腕と手が死んでしまってバイルがなかなか決まらん。ほどなく傾斜が緩む。ここもスクリュービレイ。

■3ピッチ(M田)20mⅤ-
南沢大滝くらいの難しさ。M田さんは最近生意気です。ビレイ点での雑談⇒⇒「西上州の相沢の大氷柱って、あのぉー小さい滝ですよねぇー。」だそうです。

■4ピッチ(H明)20mⅢ+
不覚にも、傾斜の変わり目で足ぶらになる。しかも同じ所で二回も、いつもM田さんに足が甘めーんだよーなーって大説教してたのに、すみません、ご心配をおかけしました。


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懸垂は、私が安易なルート採ったため、最初のピッチで小枝でしか支点のとれない場所に着地してしまって。致し方なくカウンターバランスで振り子トラバース修正を余儀なくされるハメに。しかも、ザイルが凍結して抜けなくって焦りまくり!!

さて、後は、楽しい下山ですが、水泳ラッセル+林道8㎞も重いラッセル。風呂も入れず、ラーメンも喰えず、須坂のすき屋で牛丼喰って帰りました。


【M田さんコメント】
夜明けとともに龍神到着。地吹雪吹く中、仕度をはじめる。
S原さんからはすでに戦闘モードの妖気が・・・・。

1P目《S原トップ》 フォローでとりつくが、今年最大の寒波のせいか、気温低く、表面パリッと中ボロボロ。今シーズンとりついた氷の中ではかなり質が悪い。こんなところトップよくいったなあーー感心しながらやっとのこさビレイ点にたどりつくと、S原さんすでに寒さで震えていた。

2P目《H明トップ》 ビレイ点の穴っぽこから抜け出しトラバリしてど垂直部分にたどりつく。
見上げるとガスで先見えず、風雪の音もプラスされ、かなり威圧される。
うえーーこんなとこあがれない、と一瞬気持が怯みかけるが、フォローが何言ってんだ!!自分に激飛ばし、気持ちを切り替える。寒さで体こわばり足も手もなかなか決まらない。何度も壁から体離れ、やっとのこさH明さんの元へ。

3P目《M田トップ》 終了点まで2段を1Pで行ける場所だったが、終了点の選択が難しそうだったので、下段のみリードさせてもらうことに。
『いつもの登りができて落ち着いていけばこれは行ける。でも、怖かったらすぐ降りてこいよ。よし!がんば!!』
二人に励まされ登りはじめるも、垂直部にたどり着き見上げると4級くらい見えところは、ど垂直だった。
ヤバい無理かも、泣きそうな顔で下の二人に目で訴えてみたが、そんな田舎芝居も通じない仲になってきたので、覚悟をきめる。
『短い、すぐそこ。短い、短い』自分に暗示かけ夢中で登った。棚にたどりつき、スクリューで支点とり二人を向かい入れる。
『簡単って思ったけど、やべーこれ5級あるよ。宮っちゃんよくこれ行ったなあ。氷も悪いよ。』 とブツブツ言いながらあがってきた姿を見てやっと緊張がほどけてきた。

4P目《H明トップ》 悪い落ち口で、H明さんがまさかの足ぶらぶら。それも『あっ!あっ!』って声だしっちゃってる。怖い!。
いつも、H明さんが 『足が決まってねーよ。落ち着いてしっかりたて!!』って下から怒ってたけど、自分もこんな風に見えてたのかと思うと心臓に悪い。

終了点 : 着いた。着いた。よし安全にかえるぞ!…握手交わし少しほっとする。
全員が1P下降し、2P目の下降のためにロープをひくが、凍ってロープ動かず、動いたと思っても30秒後にはまたロープ動かず、何度も同じ作業を繰り返し、回収。かなり苦戦し、とりつきに帰りついたのは夕刻に近かった。

急いでテント場に戻り帰り仕度をするが、今回一番活躍したS原さんがへろへろになりながらテント場にたどりつき、シャリバテと寒さによる疲労によりぶっ倒れた。この先は安全林道ラッセルだけなので、とりあえず足の速いH明さんが先に下山し、二人が後追いするかたちで下山。

暗闇を下山しながら、今までのプロセスや今回短いながらも1P登れたことを想い返しながら、今日、充実した気持になれたことがじわじわと喜びにかわり、、二人の先輩と、道を照らすお月さまに感謝した。


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【S原さんコメント】
今シーズンはほぼ毎週、ゲレンデとアルパインのアイスクライミングに通いづめ、自分なりに技術と体力を積み重ねてきた。今回、須坂から長い長いアプローチの末、雪のルンゼの向こうに米子不動の氷瀑群が姿を見せたとき、これまでの努力が、すべてここを登るためにあったのだと分かった。
目の前にそそり立つ、アナコンダとコブラの下を通り、ますます深くなる雪の尾根を越えると、目的の龍神がひときわ堂々とした威容を現す。間近に見上げるとさすがに大きい。2週間前に韓国パンデの120mの氷壁を登ったばかりで、大きさからのプレッシャーはないが、よく観察すると、場所により氷の形態や氷質に違いがあることが分かる。白く濁った部分は積もった雪が凍結したクラストで、簡単にはがれて崩れる悪氷だ。今週末にやってきた記録的な寒波のため、蒼氷の部分は硬く、もろい。前週のアクシデントのおかげで体調が万全ではなく、寒さとアプローチの疲れもあって気持ちが萎えそうだ。

1P目S原。スクリューを多めに準備し、気合を入れ直して氷柱に取り付く。登り始めは多段のステップ状だが、場所によってはハング気味で、ステップ上部のクラスト氷が登攀の邪魔をする。滝の中央にある小テラスを目指して登ると、最後はクラストと細いつららの集合体。スクリューを打つこともままならず、長いランナウトの末に、ようやく目的のポイントにたどり着いた。やはり手ごわい。「龍神」の名前は大きさだけではない。頭上に見えるのは、つららでできた巨大なオーバーハング。これを越えて行くのか。スクリュービレイで後続を待つ。周囲は雪混じりの曇天で、冷たい風が吹きつける。時折、隣のアナコンダでチリ雪崩が発生するたびに、雪煙が辺りにたちこめる。

2P目S藤さん。小テラスから身を乗り出し、20m近い垂直の氷柱を着実に登っていく。どんな状況でも物怖じを見せずに前進できる強さはさすがだ。

3P目M田さん。短いながらも垂直に近い壁の凹角状を登る。やはりステップ上部の氷は悪い。モノポイントの爪先で体を支えるのに苦労しながらも、慎重にクリアする。昨年末の篠沢七丈瀑でアルパイン・アイス初リードして以来、確実な成長ぶりだ。

4P目S藤さん。最後の緩傾斜部を抜けて、右岸壁の潅木を目指す。途中で水がしたたる箇所があり、たちまちロープと衣類に凍りつく。全員が無事終了点にたどり着き、握手を交わした時には、取り付きから5時間以上経過していた。


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登攀完了後、休む間もなく懸垂下降を開始。1本目は右岸の潅木を使い、2P目のビレイ点近くまで下降。そのままビレイ点下までトラバースし、垂直の氷壁にハンギング状態で懸垂支点を作成。2本目は60mロープぎりぎりで取り付きまで。これだけの高度で氷の支点に命を預けるのは初めてだ。十分な強度があると分かってはいても、足がすくむ。

やっとの思いで地上に降り立ち、林道終点のテントを撤収して下山開始。暮れゆく長い林道を辿りながら、ようやく気持ちを整理することができた。念願だった米子不動の1本を、パーティのサポートを受けながら、ついに自力で登ることができた。そのことは素直に嬉しいのだが、米子だけでも V~VI クラスの登りたい氷瀑がまだ10本以上残っている。これからが楽しみな一方、体力は確実に落ちていく。この先に、さらに厳しいクライミングが待ち構えていることを予感して、改めて心が引き締まる思いがした。帰りの車中では、早くも次の週末の天候が気になる。山ヤはしょうがないね。