穂高 涸沢岳北西尾根から西尾根 2023/3/11-12

アルパイン(雪山)

メンバー N島(L、記)、クロ

3月に入って以来続く高温のため、錫杖の予定を変更して谷川を狙っていたがそれも危険、さあどうする、ってとこで、クロが、涸沢岳西尾根はどうかという。わたしゃ西尾根は既訪だが、隣の北西尾根には興味があった、北西尾根から西尾根をつなげればラインとしてイケてるし、雪崩のリスクも最小化できるだろ、ってんで、急遽、計画された涸沢北西稜である。あまり記録のないルートであるため、記しておきたい。

3月11日

0620新穂高無料駐車場発→0930滝谷避難小屋→1600第一岩峰頂上幕

右俣林道の寡雪にビビる。暑い。歩き出してすぐ衣服大調整が必要になる。滝谷までは、沢という沢にデブリが出ている。

滝谷避難小屋にてハーネス、アイゼンを装着し、取りつく。登山大系の記述のとおり急登である、ところどころ雪壁に近い。あまりにずぼるので、ワカンを履く。思えば、この時点でN島の確認不足があったのだ。

なぜか、クロが遅れる。体調でも悪いかと案じて声をかけると、ワカンがやたらに滑るという。だが、立ち止まってパッと見ても、ワカンの履き方には問題がなさそうだ。おかしいね。。。と、また歩き始めて、私は、ふと気が付いた。

クロ、アイゼンワカンにしてるよね?

え、アイゼンワカン?…

なんと、クロは、アイゼンワカンをしたことがなかったのだ。私は、この斜度、この雪質、当然アイゼンワカンだろと思っており、クロに「ワカン履こう」といえば当然アイゼンワカンにするものと思い込んでいた。クロの経験量からして、アイゼンワカン未経験だとは、まったく思ってなかったのだ。だがクロは、私にワカンと言われ、真面目に、アイゼンを脱いで、ワカンを履いていたのである。

そりゃ滑るわ。てか、この斜度をワカンで登らせていたとは、恐ろしいことだ、ごめんよ、クロ。。。

と、言うわけで、その後もクロは慣れないアイゼンワカンに苦労し、したがって、N島がすたすたとラッセルし、いくつかのちょっとした岩稜と、いくつかのちょっとした雪壁を乗り越える。いずれも、慣れた者であればザイル不要。ところどころ、超絶古い残置がある。

正月の硫黄尾根で、もう1年分のラッセルをしたと思ってたのだが、その後も2月3月と、相変わらずラッセルである。わたしゃ、永遠のラッセル番長なのであろうか。

標高2200mほどまで上がると、樹林帯が途切れ、滝谷ドームの頭が見え始め、ようやく楽しい尾根登りになってくる。標高2570、第一岩峰の頂上を整地して幕(広くはないが、一張りなら余裕)。明日は、第二岩峰、第三岩峰を超えて、西尾根に合流することになる。第二岩峰には、二つの雪庇が交差するように入り込んでおり、クロとルートの打ち合わせを済ませておく。

テントの目前に滝谷が、傾きかかった日を浴びて輝く。素晴らしいパノラマ。静かな夜であった。

3月12日

第一岩峰幕場0520→0700西尾根合流、デポ→涸沢岳頂上→0930デポ地戻り→1200右俣林道→1340駐車場

二人の支度は早い。あっという間にテントを畳み、打ち合わせ通りに第二岩峰への稜線をたどり、ちょっとトラバースして第二岩峰支稜に乗り、第二岩峰頂上、そこから、雪壁を経て、三角錐の美しい第三岩峰へと辿る。雪庇に注意が必要であるが、なんということもなく、西尾根と合流する。

西尾根は登山者が多く、トレースがばっちりである、ようやくラッセルから解放され、のこのこ頂上に向かい、ゆっくりくつろぐ。あれが槍、北穂、奥穂、ジャンダルム。あちらが笠ヶ岳、抜戸岳、乗鞍と、すべてが見渡せる。

心ゆくまで堪能して、デポ地に戻る。陽も高くなったため、盛大なお着換えタイムとし、まるで夏のような恰好になる。こういうとき、女二人は大変に気楽でよろしい。身軽になって、一目散に右俣林道めがけて駆け下る。

白出沢の融雪はさらに進み、入山時の倍以上のふきのとうが、地面から顔をのぞかせていた。

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