黒部別山 別山谷左俣本谷 2023/10/7-8

沢登り

【日程】
2023/10/7-8
【メンバー】
Y田(L)、S津、N島、ヤマ(記)
【行程】
10/7 曇り時々晴れのち小雨
 6:55黒部ダム~9:20別山谷出合~12:25R3出合~15:20F4上~17:00Co1500C1
10/8 曇りのち小雨
 6:10C1~10:30F12上~12:40Co2239コル~15:00ハシゴ谷乗越~18:20黒部ダム

【報告】
 「御伽の国」。先人の記録において、黒部別山の名を冠する黒部別山谷はそのように形容されている。御伽の国にどんな景色が待っているのか。2年前の大タテガビン沢右俣(https://www.bunanokai.jp/archives/20036)で黒部別山の魅力を知って以来、その地に足を踏み入れることが積年の課題になっていた。
 緊張2割、ワクワク8割でいざ本番。無茶なピッチグレードこそないものの、ロケーション・スケール・登攀内容・雪渓処理を含むルーファイ、どれをとっても一級品の沢パインで、これまでの一区切り、そしてこれからの糧になる、そんな会心の山行になった。次は左俣R3か、右俣本谷か、大ヘツリのルンゼ登攀もいい。こんな夢を見れる場所に導いてくれたメンバーの皆様に心から感謝します。

<1日目>
 当初は左俣R3の計画だったが、3日目の雨予報を見て、2日で安全圏に抜けられる可能性が高い左俣本谷に転進して入山。結果的にこの判断は正解だった。6:30の始発バスで黒部ダムに入り、日電歩道を歩いて別山谷出合へ。昨年は悪天候でアプローチすら叶わず、まずはここまで来れてうれしい。憧れのままでは越えられないので、憧れを捨てて遡行モードに切り替える。
 雪渓はないと踏んでアイゼンは省いたが、右俣を分けて左俣に入ると、予想外に巨大なブリッジが残っている。R1のゴルジュなんてズタボロで最悪の状態。少雪の今年でこの状態なのだから、80mF2手前は毎年雪渓が残るのだろう。雪渓上から水流右壁に取り付くことは厳しいので、雪渓と側壁のコンタクトラインを歩いて右岸スラブ壁の高巻きポイントに取り付く。悪いトラバースは強いられず、下部核心の雪渓処理は条件に恵まれた。スラブ壁は1P:沢靴では気合のいる乗越下まで直上Ⅳ(私)、2P:乗越から直上Ⅳ+、3P:トラバースから落ち口上へクライムダウンⅣ(私)。逆層気味でプロテクションは乏しく、終了点はハーケンが多かった。3P目は懸垂で復帰している記録が多く、トラバースで抜けられたのは上手くいった。


 R2を分けて、40mF3は左岸ルンゼからリッジに乗って懸垂15mで沢床に復帰。懸垂支点の古いハーケン2本は今回唯一見つけた残置物だった。下降点がR3出合、早い時間帯に最低限のノルマクリアできてほっと一息。R3と左俣に挟まれた大スラブと、R3右岸の大ヘツリ尾根の絶壁、凄まじい光景が広がっている。これが御伽の国か。まるで夢の中のような感覚で、別山谷に来た喜びを改めて噛みしめた。


 80mF4は水線も登れそうだが、濡れたくないので今回はパスして、定石通り右岸の大スラブ基部を登る。全員クライミングシューズに履き替えて、1・2P:草付き交じりのスラブⅢ+(2P目:私)、3・4P:開放的なスラブⅢ+、5P:スラブをトラバースして落ち口上へクライムダウンⅣ+。ここも懸垂なしで上手く抜けられた。最後のトラバースは沢靴では到底無理、リードは2回のクライムダウンで支点の取り方にも工夫が必要で、2日間通じて核心ピッチだったと思う。ラストもかなり怖い。
 4人はどうしても時間がかかってしまう。登攀システムは、①トップがリード→②セカンドがユマールで二本目のロープを引き上げ→③サードが一本目のロープをユマール、④ラストを待たずにセカンド&サードが二本目のロープでリード&ビレイ→⑤次ピッチ前進中にトップのビレイでラストが一本目のロープを登る→⑥以降繰り返し、という形をとった。窮屈な終了点でロープが絡まるトラブルこそあったが、総じて上手くいったと思う。


 トイ状3段15mF5と12mF6は右岸の草付きから巻き、20mF7は快適に登れる。2段20mF8はロープを出してクライミングシューズで登る。1段目は右壁からハーケンを打ってワンポイント空荷になり、ボルダー6級くらいのハング越えⅣ(私)、2段目は左壁から沢靴では厳しいノーピン逆層スラブⅣ。
 F8上に快適ではないが整地して3.5人横になれるスペースがあり、日没も迫っているので行動終了。初日の目標はCo1650だったが、Co1500まで進めて御の字だ。焚き火できる程度の薪はあるが、小雨が降り出してタープの外に出る気力が出ず。雪山テント泊のように4人くっついて暖をとった。こんな秘境なのに電波が結構入る。


<2日目>
 冷え込んだ割に熟睡できた。朝一の3mCS滝で腰下まで浸かり、身を切る冷たさに震える。20mF9はクライミングシューズで右から垂壁を登り、外傾バンドの細かいスタンスを拾って落ち口へⅣ+(私)。一ノ倉沢のようなスラブが広がって綺麗だなと思っていたら、5mCS滝で右岸スラブの大高巻きラインに吸い込まれたS津さんがクライミングシューズ×空荷で決死のクライムダウンに成功していた。直後の10mF10も念のためロープを出すⅣ(私)。F10上のR5出合が幕営適地になっている。


 2段10mF11を快適に超えると上部核心の60mF12で、今回は右岸ルンゼから尾根に乗って灌木ゴボウ系1Pでスラブ上まで抜けて、懸垂25mと歩きで復帰。


 以降やっと普通の沢になるが、Co2000付近から雪の詰めで時間を食うという謎の状況に至る。稜線に出ると初雪の剱岳が出迎えてくれた。早すぎる積雪で三段紅葉になっておらず、春山のような不思議な景色だ。
 Co2239コルから下降点まで1時間、ピンクテープに導かれてハシゴ谷乗越まで1時間で安全圏に復帰。雨が本降りになる前に黒部ダム駅に駆け込んだ。このパーティーの10月3連休は3年連続でヘッデン下山になったが、それだけいい山に行けている証拠なのかもしれない。


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