●12日 晴れ
7:401,080m伊奈川ダム上P-13:30越百小屋-14:302,500m付近C1

仙涯嶺は、宝剣岳に並ぶ中央アルプスを代表する岩稜で南の核心部。アプローチが遠いためか厳冬期に訪れる者は少ない。今回は木曽側から越百山を越えてアプローチする計画。
権兵衛トンネルを越え、R19を南下し、須原を過ぎて伊奈川沿いに山懐に入る。田光集落を抜け伊奈川ダムまでの林道には日陰斜面に雪が残る程度。事前にこの林道の除雪状況を確認したところ、関西電力所有の伊奈川ダムからの要請で土日祝を問わず除雪はされるとの事。ダムを過ぎると駐車場があり、すぐにゲートとなる。先に続く林道を小一時間歩き、4合目登山口到着。ウォーミングアップには丁度良い距離。
この林道は今回で3度目となる。1度目は2008年の1月3連休。この時は仙涯嶺をめざしたが、初日に雨が降り停滞。越百山までとなった。2度目は2011年の夏、越百川を遡行するが大雨で途中エスケープしヤブ尾根を下降してきた。未だ、計画を全うして降りた事がない道。今回、予定通りトレースできるかは、明後日にならなければ判らない。今の景色だけ見れば雪も少なく、厳冬期ということを忘れさせる。
登山道に入ると、すぐに300mUPの急登。汗をかきながら尾根の側面をジグザグに高度を稼ぐ。尾根にのると傾斜が緩む。ここのところ雪が降ってなかったので雪は浅く、また正月のトレースが残っていて楽に進める。地面が氷化しているので早々にアイゼンを履く。坦々と高度を稼いでいると、途中で展望が開け仙涯嶺が望めた。下から見上げると天を突くような岩峰が大小5つ並び、登高意欲をかき立てる。
スカイラインは一度高度を下げ、ドッシリとした南駒ケ岳へと続く。そのあたりが今回の核心部となるはず。
2,100mからまた急登となる。このあたりから急激に雪が増え、トレースも消えラッセルとなるが、体の軽いS津さん、S見さんはサクサクと力強く登っていく。一方、男2人は体重差があるとはいえ雪にハマリまくり、あっという間に差が広がる。たまらずワカンを装着する。2,400mに小ピークがあり、それを越えると、目標の越百小屋。もう少しと思いラッセルを続けるが、雪がサラサラで踏み固まらず体力を消耗する。
13:00過ぎにはC1に予定していた越百小屋に到着。風もなく、越百山のピークが目前に迫り、極上のテン場だが、時間が早いので翌日に備え森林限界手前まで伸ばしておく。100mほど高度を上げ、樹林の中に雪を切り崩し整地。テントに入る頃には気温が下がり始め、日没と共に風が出てきた。

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●13日
6:10C1出発-7:20越百山頂-9:15仙涯嶺-10:30コル-12:10南駒ケ岳-15:302530mC2

核心の1日が始まる。仙涯嶺の通過はもちろんだが、この長い周回ルートにはエスケープ路が無い。
夏時間だとC1から南駒まで3時間半、冬はその倍以上掛かるだろう。三日目の天候が悪化する予報なので、稜線を抜けC2はなるべく高度を下げておかなければならない。今回のメンバーは昨年、下山遅れで会を騒がせた4人なのだ。
まだ風がおさまらない中、ヘッデンで出発。樹林帯を抜け尾根が細る頃に空が明るくなる。赤く染まる稜線が美しい。最後、クラスト気味の斜面を登りきり主稜線に到達すると、突如南アの大きな山並みが目に飛び込んでくる。富士山もそのピークの狭間から頭をのぞかしている。
越百山のピークは快晴だが強風。パノラマを楽しむにも体を傾けて踏ん張らないと飛ばされそう。稜線上の雪も所々飛ばされ土が露出している部分もあった。
風に煽られながらも稜線は広く、緩やかなアップダウンなので危険は感じない。ゆっくりペースだったが、イメージよりも早く9時過ぎに仙涯嶺に到達。
仙涯嶺の岩峰のアップダウンを丁寧に進み、3つ目のピークは、手前のコルからルンゼを木曽側にクライムダウンし、岩壁をトラバースするのが夏道らしい。
鎖場になっているが、今は雪で隠れており雪壁のトラバースとなる。雪は締まっていて怖くは無いけど足元は数百m切れ落ちているのでロープを短く2ピッチ伸ばす。
そこから高度を少し落し4つ目の岩峰に差し掛かる。コルから伊那側をトラバース後、立木から懸垂15m。あとは歩いて仙涯嶺、南駒間の最低鞍部に10時過ぎに降り立つ。先が見えてきたので、ここで大休止。やっと風も穏やかになってきた。南駒ケ岳への登りかえしは正面に岩稜をたずさえているが、遠目で見ると雪を繋げていけば問題はなさそう。右に左にルーファイしながらノーロープで最後まで行けた。手前の偽ピークを越え、緩やかに続く南駒ケ岳のピークまで息を切らせながら、12時過ぎに到達。
これまで見えなかった空木岳、その遥か向こうには宝剣岳、三ノ沢岳、木曽駒ケ岳へと続く稜線が望める。この上ない晴天の中、南駒のピークと展望を独占した。ひとしきり眺望を楽しむと、視線を下降路に移す。これから下降する長い北沢尾根は白い小ピークを連ね、2,591mの小ピークを境に尾根の影になり視野から消える。そこまでは真っ白で風は防げない。

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3日目の天候が荒れるので最低でも樹林帯までは高度を下げておきたい。複雑な形状のこの尾根で、風雪のルーファイは避けたい。
早々にピークを後にし、トレースの無い尾根を初見で下降開始。ナイフリッジや岩峰の小ピークがいくつかあり、ルーファイが面白い。途中、岩峰上で行き詰まり、下降ルートを捜索するが見つからず、ハイマツを掘り起こして懸垂。以降はなんとか雪壁をバックステップでかわす。
2,591mピーク以降は樹林となり、出来るだけ下げておきたいところだが、上から見る限りは結構密な樹林帯。テン場のスペースが心配なので2,530m付近でC2とした。

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●14日
6:00C2出発-9:30林道終点-10:30伊奈川ダム上P

未明から雪になるが、積雪は10cmくらい。風もなく大荒れ予報に反して平穏な出発。とはいえ暗い中、ヘッデンの照射範囲でのルーファイで、10m歩いては地図とコンパスを睨めっこしながらゆっくり下降。
樹林帯なので、もう危ないところは無いだろうと思っていたが、キノコ雪のリッジ通過が少々あった。しんしんと降雪し、徐々に雪も深くなっていく。尾根が広がり、安全を確信したところでワカンを装着。この頃にやっと明るくなってくる。
尾根を分ける2,411mピーク以降はトレースがうっすら残っていたため、以降は迷うことなく下降。登山道最下部のトラバース路付近は、やはり雪の下が氷化していてアイゼンでも緊張を強いられた。
林道には9時半に到着。その後1時間程度で雪をかぶった車に到達した。