北岳バットレス 2009/7/18-20

アルパイン(夏)

L,T城M樹、SL,K島K世、S原M、N島F博、M中K哉、Y田S

■日程:
18日(土) 広河原‐白根御池小屋(アプローチ)
19日(日) 4尾根主稜(N島-M中)
20日(月) 4尾根主稜(全員)/中央稜(N島-S原)

天候不良で晴れたのは20日のみだったが、全員登攀でき、収穫は大きかった。また行きましょう!

■7/19:四尾根主稜(N島―M中(記))
04:40白根御池-06:30bガリー取り付き-07:30四尾根主稜末端-13:00登攀終了-13:20北岳山頂-15:50白根
御池小屋テン場

悪天の1日。難度は上がるだろう。まっ、敗退方法を考えながら慎重に行動すること自体にも登山の楽しみがあ
る。私にとって初めての無雪期バリエーション登山は通常の四尾根ではなく登攀1、沢登り2、雨・寒さ・時間そ
の他7ぐらいの四尾根エクストリーム登山という感じだった。

bガリーには3番手で取り付く。先行パーティの元気で明るいおっちゃんに挨拶すると「前日工作感謝しろよ!」
と感謝の言葉をむりやり言わされてしまう。待機中、パラパラと雨が降り出す。すると、先行パーティは「敗退
します!」とこれまた元気に明るく帰ってしまった。「おっちゃんたち階段だけをつくって下山したんだなぁ…」。
そう思うと、こころから感謝する気持ちになれた。

次の女性パーティを和気あいあい見送る。そして、「どうする、行く?」。とN島。
「行きますよ!女性は追いかけるものです」。とM中。鼻息も荒い。「そんな動機とは…」と、清廉の山ヤである
N島はかなしそうにうつむいて、M中から目をそむけて首を振るのであった…。でも、いつの時代でも山好きの
独身男性の下心というものは登山になくてはならないもの…。と先輩方を見ていて自分は思いますよ。

bガリーから左に緩傾斜帯を抜け、c沢をトラバースして四尾根に取り付くが、bガリーからそのまま直上して
しまうと二尾根に入ってしまう。翌日、高城米田Pが崩壊現場のような二尾根に突入し、懸垂2Pでc沢に降り
ることになる。四尾根登攀前にしては刺激的な前菜メニューだ。というかむしろメインディッシュだろう。「ひゃ
ーお!」という米田くんの狂気にも似た悲鳴が、なんか右のほうからこだましていた。

四尾根の取り付きは「4尾根↑」と赤ペンキ。わかりやすい…。でも上ではなく下のほうにも明確な踏み跡があ
る。なのであえて下部から取り付いた。通常の取り付きテラスより4ピッチ下からになる。
1P目がいちばん難しい。2mの外傾フットのレイバックちっくからスラブ、3mのワイドハンドクラック、プラ
ス雨。ズルズル滑りながら1時間ちかくの奮闘。
2P目はハイマツと大岩が絡んだフェイス。なんか…見上げると、ルートとは呼べないようなネイチャーな雰囲
気が漂っている。これは捲きだ。木登りで崖を右に捲く。
3ピッチ目は楽しいムーブの小カンテ。1ピッチ加えて取り付きテラスへ。テラスには「4」の赤ペンキ。わか
りやすい…。

あとは雨の四尾根登攀。もうびしょぬれなので失うものは何もない。ところどころ懸垂支点などを確認しながら
おおいに雨と岩と戯れる。稜線に出ると風が結構強い。さっ…寒いよこれは!あとで槍ヶ岳山荘HPの気象デー
タを見ると当日は気温は10度弱、風は15~18m/s吹いている。こりゃ寒いわけだ。高山に来ないと味わえない
稜線の風も追加メニューに加わり、今日はアルプス登山を十分に堪能できた。

■7/20:四尾根~中央稜ノーマルルート(N島-S原(記))
1:50白根御池小屋発、二俣に荷物デポ-3:50bガリー大滝登攀開始、緩傾斜帯を四尾根へ-5:20四尾根登攀開始
-8:00枯木テラスで終了、中央稜取り付きへ懸垂下降-9:20中央綾登攀開始-12:05登攀終了-12:15北岳山頂
-14:00二俣-15:40広河原

北岳バットレス3日目にしてようやく雨が上がった。bガリーに一番手で取り付いたこともあり、順番待ちにも
無縁で、快晴の眺望を楽しみながら快適な登攀を満喫できた。
一番のポイントはスピード。記録を見ると四尾根への取り付きへのルート取りに迷って時間をロスすることが多
いようだが、ここはN島の判断が正しく、いわゆる取付テラスに直接出ることができた。手前でcガリーの急な
雪渓をトラバースするため、アプローチシューズに6本爪アイゼンでここまで一気に登ったのもよかった。

四尾根はホールドも支点も比較的しっかりしており、好天の下では快適の一言。P4のリッジ登攀あたりから体が
露出する形になる。特にマッチ箱手前では大樺沢を数百m下に見ながらの登攀となり、高度感が心地良い。マッ
チ箱からは左に懸垂下降するが、その後枯木テラスまでのピッチが長くて50mロープでは足りず、半端な位置で
ピッチを切ることになった。ガイド本に「下降点から少し上がった地点でビレイ」とあるがこのことだった。

四尾根を終了してまだ8時、天候も安定している。「このまま行きますか」「行くっきゃないでしょ」というわけ
で、そのまま中央稜を継登することに。中央稜は長さは短いものの、cガリー最上部の雪渓からいきなり逆層の
ハングが立ち上がるため、かなり威圧的な姿を見せている。その上のスラブもほとんど垂直に見え、意欲をそそ
られる。

枯木テラスから数m降りた支点からcガリーに向けて懸垂下降。この支点近辺が非常に脆く、大小の浮石だらけ。
安全のために蹴落とすと、雷鳴のような音がガリーに響き渡った。下降は最初の30mが空中懸垂で、下まで降り
ると50mダブルでぎりぎりだった。

中央稜ノーマルルート本来の取り付きは雪渓の下。雪渓の面で体を支えながらフェースをトラバースし、ルート
中間に出る。ルンゼを登った後、第二ハングを越えながらの逆層スラブのトラバースが核心。ハング奥の支点に
スリングが残置してあり、これに足をかけて登るのが最も合理的に見えた。この左右にもピトンが打ってあり。
他にハングの切れ目を登るルートがあったかも知れない。

その後垂直の壁からリッジを登る。この辺りが最も身体の露出感の高いところ。ちょうど後続パーティーがマッ
チ箱~枯木テラス付近を登攀中で、その四尾根を下に見ながら登る高度感は抜群。最後に終了点へ向けてリッジ
から凹角部を登る。岩が脆く、まともな支点が乏しくなっていく。凹角に入ると急なザレ場になり、ロープを動
かすだけで落石するので緊張させられた。

整備された四尾根とワイルドな中央稜。S原は今回初めてのリードを含む本格的なアルパインだったが、天候と
パートナーに恵まれ、実力相応+αの登攀を楽しむことができた。北岳山頂で高城-米田パーティーと合流して互
いの健闘を称え合い、広河原に向けて長い長い下山の途につくのだった。

ぶなの会

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