■メンバー

L N島F博、A山Y秀

■タイム

12月4日 5:00 出発 – 16:30登攀終了 – 19:30 行者小屋

 

「UG~。。」声がもれる。言葉にはなっていない。5mのランナウトだ。足にはアイゼン。落ちたらグランドフォール! そして骨折?!

「ピン、ピン。。ピンどこ~!!」必死である。

大同心雲稜ルート1ピッチ目はランナウトからはじまる。先行者はいない。

いつもの前夜発。はじめてA久号に乗せていただくことになる。東京駅で待っていたら、いきなりアイゼン持ってきたか心配になる。パッキングを解き、歩道に荷物を広げて確認。「あった。」でもそれが嬉しいとは思えない。そもそも忘れるわけがないのに。いかないといけないと自分を諦めさせるために確認しただけなのか。

車のなかでも大人しくしている。A久さん、運転しなくてごめんなさい。

美濃戸口到着。早々に山荘2Fに。「早く寝ないと。早く寝ないと。」2Fに入るとT内号の面々が宴会中。「明日早いので。」とアイマスク、耳栓つけて早々に布団に入る。それでも持参ビールは飲みました。

朝、決行のとき。ポストに現金いれて、いびきの聞こえる2Fを静かに去る。1Fはまだ寝静まっている。布団に入れて冷えないようにしていた亀戸210円弁当をほおばる。そして最終確認。そうこうするうちにF博さんがやってくる。思わず思う。「F博さん「やめよう」って言わないかな?」・・言うわけ無い。そして出発。

F博さんはもっとがんがん早く行きたかったろうに、私にペースを合わせてくれる。

ありがたい。でも私の心の中にはドナドナのメロディーが。

赤岳鉱泉。

登攀用品以外デポ。天気は絶好調。やめる理由なんてどこにもない。お互い顔を見合わせながら「こりゃあ、やめられへんわあ。」F博さん、大阪弁全開である。

取り付き。

大同心稜への取り付きを少々迷い、取り付きへ。

大同心の全貌を望む。全くの冬壁だ。「雪が無いのでフラットソールで登れるかも」という言葉に安心していた自分がバカみたい。全体がエビの尻尾で包まれている。(日曜みたらすっかり落ちていましたが、土曜朝はすごかった。ほんま。)

ここにきて、なんだか闘志がわいてくる。

なんのために一生懸命フリーをしてきたんや。アイゼントレも結構やったやんか。練習の成果を見せるのが本番やろ。大同心雲稜なんて冬壁入門ルートなんやで。グレードもⅣ級下やで!実はチョロいんちゃうの?さっきまで後ろ向きだった気持ちが変わってくる。

以前テレビで聞いた言葉。

「勇気や元気は外注できない。」

心理学者の言葉である。

「勇気をもらいました」「元気をもらいました」というのは本当?事実は自分の気持ちのもちかたでは?と言っていた。

焚き火がだんだんと燃え上がるような、自分のなかからふつふつと沸いてくる気持ち。そんな気持ちがなくては、こんなエゲツないこと続けてられない。そしてそのベースになるのは練習しかない。オキビを蓄えるように日々練習を重ね、本格的に燃やす時、その上に枝を加えて火を大きくしていくような。そんな地味な目立たない練習に裏打ちされていなければ、夢は夢に終わる。

スタート。

浅いクラック。ピンはない。

バイルでクラックを穿り出してもガバはない。そもそも手袋である。

足にもガバはない。そもそもアイゼンである。

一度取り付くが、思ったよりヤバくて、いったん降りて気分を落ち着かせる。

意を決して登り始める。手は秘儀「ごまかし」。足は奥義「アイゼンスメア」である。2、3手の間に声が漏れる。フリークライミングの世界だ。

自分の声に自分を集中させ、自分を奮い立たせる。

一段あがる。ピンを探すが。。。無い。「ピン~。ピン~。ピンはどこや~!!」必死である。

ふと上を見るとなにか棒が垂れ下がっている。

棒全体を氷が覆っていたので、凍った草が垂れているかと思っていた。しかしよく見るとそれは棒ではなくスリングで、根本には。。ペツルだ!ペツルのピンだ!銀色のピンがエビの尻尾に隠されていてよくわからなかった。

エビの尻尾を手で払い落とす。ばんばんのピンだ。ランニングを取る。自分が急速に落ち着いてくるのがよくわかる。「ここからはアブミですよね~」日本語でF博さんに確認。落ち着いている証拠。F博さん、寒かろうに。。すみません。時間かかりました。

それからも、バイルでホールドをかきだしたり、ここぞと思うところにバイルをぶちこんだり。これはアイゼントレではできない部分。

2ピッチ目

F博さんリード。

ちょっと右にあがって左にトラバース。その上のフェースで迷っている。なんとか右にルートを見出したようであがっていく。でもヤバそう。「ピンがない。」と繰り返している。そして「落ちる、落ちる」と言ったかと思うと、次の瞬間墜落。ふわっとした感じで左頭上を落ちてくる。自分が予想していたよりも長い墜落だ。身構える。テンションかかる直前にヤクルトジャンプで荷重を逃す。10mくらいの墜落だった。

「大丈夫ですか?」「大丈夫!」

距離は長かったが、うまく落ちたのでダメージはなさそう。アイゼンがどこかに引っかからなかったのは奇跡的だ。

大同心稜に上がっていたほかのパーティーから心配そうに声がかかる。「大丈夫ですか?」「大丈夫です!」と応える。

F博さん、いったん登り返して途中でピッチを切る。そこまでフォローであがる。

あがってみると結構伸びたリングボルト2本。このお陰でとまったようだ。「どこか痛いところないですか?」「ぜんぜん大丈夫」

よかった。本当によかった。

幸いダメージがなかったので登攀継続。

F博さんがトライしたフェイス右は避け、左に回りこむ。すると頭上にペツルがあった。

その後ピッチを重ねるにしたがって、調子が出てくる。天候がよかったため朝のエビの尻尾がどんどんおちてきたことも快調に登ることのできた原因か。

最終ピッチを残し、南稜側に回りこんだ時点で16:30。最終ピッチのアブミ架け替えは次回に回そう。

 

今回大同心を登れたのは天気のお陰もありますけれども、雪山はじめをとりまとめいただいたS津さん、そしてF博さんのサポートのおかげです。

ありがとうございます。みなさん、また一緒に登りましょう!