○メンバー
CL A山Y秀、S原M
PL K池M美、S H志、O畑K子
PL N野K里、T橋M子

○行動予定
10/5(金)
都内、埼玉夜発 沢渡駐車場最奥の茶嵐荘下の公園仮眠

10/6(土)
茶嵐からタクシーで入山
*池直行組 A山、S原、N野、T橋
 上高地~徳沢~中畑新道~奥又の池にBC設営
 その後、4峰正面トラバース地点、ならびに奥又尾根踏み替え点まで偵察。
*K池P K池、S,O畑
 前穂北尾根5、6のコルでビバーク
    
10/7(日)
■ PL K池-SL S-O畑
 北尾根~前穂~奥又尾根~池
■ PL N野-T橋
 4峰正面松高~5,6のコル~池
■ PL A山-S原
 前穂東壁Dフェース~前穂~奥又尾根~池

10/8(月) 全員で下山

○10/7 北尾根 K池-S-O畑(記:O畑)
三四のコル8:20-(2時間待ち)-10:20頃 登攀開始-二峰12:55

渋滞を避けるために前日、五六のコルに前乗りしたものの、夜半の降雪で「きっと誰も来ないよね」と二度寝していたら朝6時、続々と登山者が涸沢から登ってきた。K池さん、少なくとも5パーティはいるよ(汗)。しかも1パーティあたり5~6人と、みな大所帯。われわれも慌ててテントを撤収し、ハーネスなどを身につけて出発。

五峰は多少、手を使うところもあるけれど、基本るんるん登り。リッジ沿いに行って、上部を奥又白側に回り込む。このあたりまでは天気もよく、屏風まで続く北尾根の稜線や奥又白池、涸沢の三段染めの眺めを楽しんだ。

ピラミダルでりりしい四峰はルートファインディングが核心との由。取付から見上げると、岩には登山者が鈴なりで、早々に奥又側にルートを取ったパーティはロープを出しているが、スマートなのは小さな岩峰が3つ連なるところまでは忠実にリッジをたどり、岩壁の基部で奥又側に回り込むものらしい。先をゆずってくれたパーティが、「奥又側からは、すぐのルンゼを詰めてリッジに戻る」と後ろから指示をくれるが、よくわからない。結局、うっすら雪の積もった浮き石だらけの道をずんずん巻いていく。

終始、先行してくれるK池さんを追いながら、「このまま四峰はピークを巻いちゃったりして」と口にしたら、「四峰のピークを巻くって、それ正面壁だよ!(=巻けないよ)」と後ろのパーティからツッコミが入る。多少大回りして、最後はガラガラのちょっといやらしいところを乗り越えて四峰のピークへ。三四のコルにはすでに順番待ちするパーティの姿が見えた。

曇天で日が射さないので、3人でツエルトにくるまり待つこと2時間。三峰はロープを結ぶが、後続も5パーティぐらいあったので、スピード重視。ひとりがリードして、フォローはふたり同時に登るスタイルとした(Sさんが親心ですべてのピッチ、中間に入ってくださった)。

1P目、K池。奥又側にある大岩の乗り込みはフォローでもヨッコラショと声が出る。

2P目、O畑。先行者の姿に引きずられてチムニーを使ったけれど、その右のルートを取ればよかった(太めの私に、このチムニーは細すぎる!)。支点は意外とないし、3パーティぐらいが同時にいるので、支点はピナクルで取った。

3P目、K池。ここは右から凹角、チムニー、フェースと3つのルートが取れるようだけど、K池さんは左端のフェースを選ぶ。

4P目、O畑。凹角を登って、歩き。

5P目、K池。歩いてちょこっと登り。

6P目、O畑。涸沢側をだらだらとトラバース。

7P目、K池。短いけれど、かっこいいリッジを登ってフィニッシュ。

三峰のピークに立った印象がなかったけれど、二峰の懸垂支点が現われたことで終わりが近いことを知る。目の前には本峰。なんだか、あっという間だった。

ガスに包まれた前穂のピークは、先行したパーティや前穂東壁を登ってきたクライマーたちのサロンのようだった(朝の降雪で吊尾根は登山自粛の通告があり、一般縦走の登山者のほうが少なかった)。視界もなく、また時間も遅くなったことから、奥又白池に合流することは断念。無線の交信がうまくいかなかったので、奥又白に戻るというクライマーにA山さんたちへの伝言を頼み、紅葉の重太郎新道たどって岳沢まで下りた。

○10/7 松高ルート N野-T橋(記:N野)
5:00出発-6:00C沢-7:40松高ルート途中から取付-11:40終了

暗いうちから出発。前日のうちに偵察しておいたトラバース点までは20分程度で到着。このころから明るくなり始める。うっすらと見える踏み跡をたどりながらいくが、ところどころ落石を起こしてしまう。
C沢のチョックストーン直下は小石と土が混じっていて、手も足も脆い。ここでA山Pと分かれ、初級者二人っきりの旅がはじまる。

前日の雪がのこる草つきをT1へ。北条・新村の立派な取り付きはすぐに見つかるが、松高の取り付きが見当たらない。トポ上はもうちょっと下のはず、と下りハーケン2本刺さった小さなテラスを見つけるが、そこからの出発はあまりに簡単すぎる。

直前に転進したO田さんが以前に行ったときの記録で、本来のルートよりも下から出発したらしい、とあったため、確信がもてず偵察。2mくらいの岩を乗り越すと傾斜の緩やかな草つきで、ロープを出してもランニングを取るための残置も、カムをきかせる岩もハイマツもみあたらないため、そのままノーザイルで30mほど登る。草つきの終了部まできたら、きっと取り付きに違いない。と思っていたが、なかなか残置が見当たらず出発できず。

左手のフェースを見ると、確かにハーケンがうってあり、ルート上に違いないと思うのだが、今自分のいる場所でセカンドの確保ができない。まさか、チョックストーンまで引率してもらったのに、ホントに取り付き敗退か???という思いが頭をよぎるものの、大阪ぽっぽ会の方のアドバイスもあり、よーく見まわしたら頭上数センチのところにハーケン2枚を発見。狭いテラスで準備をして何とか出発する。後続の横浜のPは、T1からこの場所に直接トラバースしてきていた。

1P(トポ上の2P目)Ⅲ級 N野 遠くから”く”の字に見えた下の部分の途中から出発。少し左上するとハーケンベタうち。左のカンテをまっすぐ登っていく。ランナウト気味でⅢ級ってもっと簡単じゃなかったっけ?と少しびびる。15mほど登るとルンゼ上になり、その後草つきへ。そろそろロープが足りなくなりそうなのでハイマツで支点を作る。

2P Ⅲ級 T橋 草付き少し直上し、岩稜につくと松高ハングに向かって右上。トポでは20mとあり、ハングは嫌!と言っていた割りにどんどん上っていくなぁ。と思っていたところで終了。

3P Ⅳ- N野 出発直後にハング。立派な残置スリングがあり、それを使えば、チビでもひょいと乗り越えられる。その後もあまり足のないハングの連続で、ひたすらA0。いくら人工のピッチだからって、これでいいのか?と思わなくもなかったがあっさり広い松高テラスへ。

4P Ⅳ- T橋 ここも出発直後がハング。前のピッチよりも足が悪く、1ピン目のスリングに、足をかけるワッカを作って進む。ここのワンポイントが厳しかったが後はハイマツを使い15mで終了。

5P Ⅳ N野 今までにない、すっきりとしたフェース。左に向かって小さなクラックが走っていて、ここを登るんだなぁと分かりやすい。この後は緩やかな草つきに出て、終了点が見当たらないまま終了。縦にクラックの走った大岩にカムで支点。最終ピッチのはずなのにすっきりしないが、登攀終了。

北尾根に出るまでも少し悪いところがあると聞いていたため慎重に向かう。踏み跡が何本もあり、迷うところだが、一番よさそうなところを選んで右へ右へ。一時間ほどで涸沢側の尾根に到着。ん?カールが見えるってことは北尾根に到着したのか?と、行き詰ったり、ロープ出さなきゃいけない状況も想定していたため、少し驚いた。やはり初級者にお天気が味方して視界がよかったためだろう。Ⅴ峰までは、景色を愛でながら快適な岩稜歩きを楽しむ。

Ⅴ,Ⅵのコルでは涸沢から上がってきたPが、すでにテントを設営していた。ここで少しガスが出てきたが、踏み跡をしっかりたどっていけばよい。これでもか!というほど登山道マークがつけられていたことにも驚いた。クライマー以外のハイカーがかなり歩いているらしい。ザレ場のトラバースが少し分かりづらい以外は問題なし。北尾根Pに、早く報告したくて奥又への道を進む。

15:00 奥又到着。誰もいない…。水汲み、登攀具の整理をしてみんなの帰りをまつ。寒いなぁ。

17:00にぽっぽの二人が無事帰還。そのころから、A沢方向から降りてくる人が見え出す。3P目がA山Pで、放心状態のお二人が無事帰還。暗くなる前でよかった。今日は話もそこそこ、宴会もそこそこで就寝。明日はゆっくり帰るだけ。

他のPが霧で視界が悪い中行動していたようですが、私たちだけ標高の低い所にいたため、おおむね晴れで視界はばっちりでした。岩のコンデションも味方してくれ、初級者ふたりっきりのデューをする事が出来ました。後押しをしてくれたA山さん、S原さん、暖かく見守ってくださったぶなの皆様、ありがとうございました。

○10/7 前穂東壁登攀 A山-S原(記:S原)
起床4:00-出発5:00-6:00C沢入口-7:30都立大ルート取付-14:00終了-15:00前穂山頂-17:30

奥又白池ライトを灯けて池を出発。トラバース開始の頃から明るくなり始める。先頭を行くN野のルーファイは確かだ。ザレのA沢、B沢を渡る。東壁DフェースはB沢の突き当たりだが、B沢下部は狭いV字谷で、落石があれば避けようがない。さらにC沢のチョックストーン下を右上に抜けたリッジ上で、四峰を目指すN野Pと別れる。

Dフェースは中間を斜めに走るグレーのスラブ帯が遠目にも顕著。近づくにつれ、その上下のハング帯が覆い被さるように迫ってくる。チョックを右上から越えてC沢を遡上。左のインゼル(中州)に上がり、コル部を越えてB沢に15m懸垂。さらにB沢を詰めてDフェース基部まで、ひたすらザレ場との格闘。一方、C沢を詰めて堰状の壁を右から越え、三四のコルからのルンゼに出て、インゼル上を渡れば懸垂は必要ない。二人Pが後から登ってきたが、こちらも苦労していた。
ふと足下を見ると、カジタのアイスバイルが一本。何とシャフトの中央でねじ切れている。どんな災厄が持ち主を襲ったのか、考えるのも恐ろしい。

Dフェースの基部に沿って約50m左上した辺りに、ペツルの支点を発見。都立大ルートの取り付きのようだ。準備していると、頭上の稜線からK池Pのコール。ガスで姿は見えないが、狭い谷に遠くの声もよく響く。上下でエールを交わしてから登攀開始。

1P目 IV+ A1 30m A山 
ピンは右上の小凹角から真上のハングに向けて直上。一部に草のついたハングはホールドに乏しく、アブミで右側から乗り越す。後続Pは左手の北壁からAフェースに向かうようだ。時おり落石を起こすたびに、派手な音が谷間に響き渡る。

2P目 IV A1 30m+ S原 
次のハングを左上の狭い凹角から乗り越すと、ほぼ垂直の滑らかなスラブ。その中央に真っ直ぐ伸びるクラック沿いにアブミで登る。視界があれば、爽快と言えるだろう。スラブ帯の端からは、頭上のハングに沿って右から巻いていく。
ここでピッチを切るべきだったが、さらにもうひとつハングを越えようとしたところでトラブル。
リングなしボルトに通った細スリングにアブミをかけたが、劣化して今にも切れそうだ。自分のケブラー入りスリングを通して、アブミをかけ直そうとした、そのときに古スリングが切れた。約3m墜ちて逆さになったが、ハングのおかげで打撲はなく、ロープで左手指の皮を削っただけで済んだ。支えてくれたのは、念のためクラックにキメておいたカムだった。

3P目 IV+ A1 15m A山 
問題のハングをアブミで越えた後もハングが続く。

4P目 IV A1 20m S原 
ハング帯の残りを登りきり、一二峰間のリンネに出たところで終了。

ここから稜線までのザレ場がまた悪い。リンネは左右の切り立った狭いルンゼで、落石があれば命取りだ。ようやく稜線に出ると、前穂の山頂は目前。一般縦走路並みの踏み跡にほっとする。
ところが、これでひと安心と思いきや、最後の難関が待っていた。ガスの中、明神への道を探して、三本槍とおぼしきピークを過ぎたところで、目印のケルンから稜線を左に越え、A沢のルンゼに降りると、果てしないザレ場の下降が始まる。砂利主体の上部から、下るにつれて大小の浮き石になる。

ここで先行5人Pの最後尾が派手な落石を起こした。一抱え以上ある岩が狭いルンゼを転げ落ち、それに続く轟音がいつまでも止まらない。幸い負傷者は出なかったが、次に落石を起こしたら、同じ幸運は期待できない。恐ろしくて足がすくんだ。

A沢を約200m下ると、右手の中又沢に下る踏み替え点に出る。ここからさらに100m以上、狭いルンゼのザレ場を下って、ようやく昨日偵察した奥又尾根に出る。ガスも上がって急に視界が広がり、美しい紅葉の斜面を池まで下った時には、二人ともへろへろに疲れきっていた。

テン場では先に四峰正面壁から降りてきたN野、T橋と、同じくぽっぽの二人が迎えてくれた。N野Pは道迷いもせず、15時には帰着したとのこと。中年二人の疲労困憊ぶりとは対照的に、けろりとしている。大したものだ。この夏、頑張ってアルパイン山行を重ねた甲斐があったね。Good job!
今回のクライミングでは、行程の約7割、行動時間の半分以上がザレ場での登り降りだった。雪が残る時期は、雪渓処理と装備が必要だが、もう少しスムーズに行動できたかも知れない。

都立大ルートの岩は比較的堅固で、支点もそれなりにある。但し核心のハング部に限ると、ピンが少ない上に老朽化している。当初は「既にフリー化されたルートだから、できるだけフリーで」と申し合わせていたが、岩が霧で湿った上に荷物を背負っていては、到底無理な相談だった。
トポに従ってアプーチし、ルートを登って下山する。この一連の作業が、これほど難しかった山行は初めてだ。逆に言えば、奥又白池への登り降りを含めて、日本の秋のアルパインを満喫できた山行だった。同行の皆さん、お疲れさまでした。