錫杖岳 前衛壁 2011/9/23-25

アルパイン(夏)

■メンバー LA山Y秀、SLH本A嗣、O畑K子、N村H則、N村M美、N野K里
■ タイム
9/23
槍見温泉駐車場発 6:40 → 左方カンテ取り付き 10:00 → 登攀終了(6P)16:40 → 下降終了 18:00 → 下山21:00

9/24
駐車場発5:45 → 1ルンゼ着 8:00 →取り付き 10:00 → 登攀終了 14:40~15:00 →下降終了 16:40 → 下山18:10

前夜(当日?)3時半駐車場着、睡眠時間約2時間の朦朧とした頭で、出発。直前の台風の影響か、一般登山道も岩はしっとりと濡れていて、川は増水。靴を脱いでの渡渉でした。

1日目 左方カンテ
N村‐N野‐A山 (N村さんオールリード)
H本‐N村‐O畑 (H本さん-N村さんで適宜リード)

1P:草つきの岩場 Ⅲ 30m
A山さんの“N村さん行きますか~”の一言で、いきなり初本チャンリード。N村さんの度胸に脱帽です。
ルートは草付というよりも、樹の根っこ登りといった印象。残置は無く、樹でランナーを取りながら登る。

2P:フェース・クラック Ⅳ 30m

3P:フェース Ⅴ+ 40m
下部核心。リードのN村さんも、一番苦労をしていた模様。今までとは違い、高度感のある中、必死の形相でカムを決めながら登って行きました。初めてとはとても…、すげ~

4P:チムニー Ⅳ 20m
狭くて、ザックを背負っているとはさまって…

5P:フェース Ⅳ+ 40m
出発の垂壁がチビには届きません!でも、その後は快適。残置のリングボルトあり。隣の“注文の多い…”にはまっすぐに切り立った岩のクラックに足を突っ込みながら登る3人Pが。いつかあんな所もいけるようになるのか?

6P:小垂壁からフェース? Ⅳ+ 40m
ここも出だしの発車が…隣の樹をフル活用してなんとか。最後のスラブも怖い。N村さんもかなり躊躇していた模様。
登攀終了→下降でいきなりアクシデント。
1ピッチ目で、巨大なクラックの間に挟まった大きな石にロープが巻きつき、回収不可に。
はしべーが、O畑さん持参のロープマンを使い登り返し。
下降は、残置のハーケンにロープの中間を結びつけ、ロープマンを逆に使って、地面への落下を防ぎながらクライムダウン。はしべーのとっさの機転でなんとか回収できたが、6P目の終了点から、元の場所に下降するのは辞めたほうがよさそうです。50%の確立で同じことが起こりそう。

1ルンゼの取り付きに、翌日使用する道具をこっそり隠して、身軽になって、真っ暗な中下山。
本日の宿は、下山したならばトイレと水道があるところがいい!という女性陣のたっての願いで、道の駅へ。
マミ介の美味しい手料理で宴会!でも、前日の睡眠2時間、本日の行動時間15時間で、皆疲労困ぱい。
特にN村さんは、ビール1本であっという間に船をこぎ始め、テントの片隅で地蔵になっていました。

2日目 1ルンゼ
N村(奇)-H本(偶)、O畑(奇)-N村(偶)、
A山-N野(3Pのみ)

先行Pが5名。雲ひとつない快晴の中、まったりとお昼寝しながら順番まち。

1P:フェース? Ⅳ+ 40m
マミ介に続き、O畑さんも颯爽とリード。本人は、先行Pの登りを見ていたのもありますが、堅実に登っていきます。
さあ、私も!と思ったら、頭上から“最後が結構難しいので、A山さんリードで来てください”とのSLの判断が。
悔しいけど、実力ですね…。でも、4級と思っていたら、結構厳しく、最後が特に怖い。

2P:フェース~スラブ? Ⅴ 30m
出だしの凹角部分が体格の違いもあり、6人6様の登り方。個人的には一番楽しかったP。

3P:スラブ Ⅳ- 40m
ルーファイがちょっと難しいものの、登りはいたって簡単。取り付きまでの山道のほうが危険かも。
左右に移動があり、ロープの流れがあまりよくなく、

4P:ルンゼ~スラブ Ⅲ 40m

5P:ルンゼ?Ⅳ+
H本-N村Pのみ。即席のアブミで突破。昨日のオールリードで疲れ果てたN村さん以下4名はタイムアップもあり、ここで終了。N村さん、虚ろな目で“もう降りてビールにしましょうよ~”と訴えていたとか。
4本のロープを駆使して下降。大きなアクシデントは無かったが、落石が非常におきやすいルートで、自分たちも数回、先行しているPからも数回、懸垂時の落石が発生。取り付きで後片付けをしていると、上から“ラーク!”という声が聞こえてきて落ち着かない。

今日は残業なしで帰りましょう!とみんなでがんばって歩くも、10分届かず、二日連続ヘッデン下山になってしまいました。今日のご飯は現地調達、急げ急げとA-コープへ向かいましたが、営業時間はなんと18時まで。近所で生鮮食料品を扱う店は全くなし。温泉はいっぱいあるのに…。
皆様も、上高地~新穂高温泉方面へ行く際は、お気をつけ下さい。

私の技術不足もあり、出発前からいろいろな方に心配をかけてしまいました。ほとんどフォローとはいえ、何とか皆と一緒に登ることができました。次回はつるべで登る自信ができてからまたトライしたいです。パーティの皆様、ありがとうございました。(N野)

—–感想—–

<O畑K子>
岩場に行くとき、いつも思う。「落っこちないようにしよう」。それは自分が痛い目にあいたくないからだ。
でも今回の錫杖で、落ちちゃいけないのは、人に心配や迷惑をかけないためだ、ということに気づいた。
――いまごろ、そんなこと言ってて大丈夫なのか。はい、すみません。
初心者の割合が多かった、今回の錫杖。だれよりも足を引っ張るのは自分にちがいなかった。
それでも気心知れた会員ばかりだったので、自分はどこかずっとのん気だった。

メーリングリストで会の先輩方の心配が目に見えるようになって、やや焦り始めた。
けれど、自分は何をどう対策すべきかわからない。
信頼できるリーダーと仲間にひたすらついていくしかない、そう思った。
夜間下山こそあったものの大きな問題もなく、2日間の登攀を終了した。
登攀はフォローで行かせてもらったし、いくつかしでかしたポカも仲間の温かいサポートで解決できた。
充実した毎日だった。

しかし、時間がたってふと、あの日のリーダー陣の重責はどれほどだったのだろうと考えはじめると、なんだか胸がしんとする。パーティを物心両面からひとつにまとめて、みなで安全に下りて来る、というのはテクニックだけの問題ではないような気がした。自分にとっては、登攀技術の習得なんかよりもよほど難しそうなことだ。
しかし、今回よいお手本を間近で見せていただいた。今後の自分の山登りの糧にしなければと思う。

<N村H則>
満を持してのアルパインデビュー。
これまで三つ峠、越バで練習はしてきたのですが、NP、アブミは練習できてなかったし、各方面からの事前情報等もありNP技術が必須といわれた左方カンテ。正直不安はありました。
A山L、N野さんとの3人パーティでしたが、まさかまさか、勧められるままに気がつけば全6ピッチ(本当の最終ピッチは割愛)をリードさせていただきました。上出来すぎてごめんなさい。夕食時のビールがうまくてごめんなさい。

3ピッチ目のフェースは左側の湿ったクラックに、効いたか効いていないか分からないけどとにかくナッツをセットし(回収したN野さんによるとやっぱり効いていなかったらしい)エイヤと何とか抜けることができましたが、全ピッチを通してここが一番しんどかった。後続組も含めだいぶお待たせしてしまいましたことをこの場を借りて懺悔いたします。
ただ必死で本番で練習?できたおかげで、セットスピードが上がったとA山Lからもお褒めの言葉をいただきました。

翌日の1ルンゼはO畑さんとつるべでしたが、1ピッチの最終(50mロープでは2ピッチ目の出だし)パート以外は快適なクライミングができました(N村はセカンド)。
天気もよく振り返れば穂高の山々が美しくそびえていました。やっぱり山っていいなぁ
一緒にロープを組んでくれる仲間っていいなぁ 次は明星だ!

<H本A嗣>
今回の6人のメンバーは、お互いによく協力し助け合い、チームとして大変よかったと思います。
もちろん、強力なリーダーの存在による影響も大きいと思いますが、それ以上に、皆さんがそれぞれを信頼して、技術的又は経験的に足りない部分を、うまくカバーし合えていたように思います。
山行形態はどうであれ、私が山に求めるもののひとつが、ここにはありました。これからも、よろしくお願いします。

<N村M美>
前回の谷川に続き2度目の本チャンでした。今回はカムや灌木でランナーをとることが多かったので、いい練習になりました。自分の中で特に印象深かったのは、2日目の1ルンゼの1ピッチ目、どうしても登れないたった4~5mの岩を前にピッチを切った時。何でどういうふうに支点を作るか、今まで教えて貰ったことを総動員して、たった1つの安全な支点を作ることに集中しました。

結果、今の自分なりのベストな支点を作り、セカンドを引き上げることができましたが、こんな風に様々な状況に出くわし、そのつど臨機応変な対策を取ること、そしてその引き出しを増やして成長していくんだと思うと、自分も早く引き出しを増やしたいなと、なんだかわくわくしてきました。

ほぼ新人だらけで諸先輩方をハラハラさせてしまいましたが、リーダーのA山さんはじめ、頼もしいハシベーやみなさんのおかげで、助け合いながら気を付け合いながら、楽しく無事終えられてよかったです。
みなさん、どうもありがとうございました!次に来る時は左方カンテの奇数ピッチを、そしていずれは注文を目指そう。

 

 

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